2021/01/27

 12時ぐらいだったと思う。スマホに非通知で電話着信があった。こうなると僕は恐怖感から、何一つ満足に出来なくなってしまう。非通知は死刑宣告でも殺人予告でもないのだから、こんなに怯えるのはおかしなことだ。それは十分に理解していても、やはり恐ろしいことに変わりはない

 僕が非通知を恐れる理由は不明だ。これは「理由は分からない」というわけではなく、不明なのが恐ろしいという意味だ。非通知の電話連絡に応答しなければ、それはただの着信履歴に過ぎない。だから、その着信の目的がマルチの勧誘なのか、クラシカルにネズミ講か、それともパンツの色が聞きたいのかは永遠の謎となる。

 暗い夜道を歩いていたら、あそこの角を曲がったところに何かいる気がする。それは熊かもしれないし、虎かもしれない。実際には猫だったりするわけだが、それは確認するまで分からない。しかし、非通知の着信が取るに足りない詐欺か何かであること、これは熊じゃないし、虎でもなく、猫だという具合に確認することはできない。それはやはり謎のままだ。だから今日の非通知の電話着信は死刑宣告だったのかもしれないし、殺人予告かもしれない。

 恐怖への唯一の対処法は忘れることだ。それにはさっさと着信履歴を削除して、強い酒、蒸留酒あたりを飲むしかない。前者はすぐにやったが、後者は禁酒中なのでできない。飲まない限り、この不安は消えない。今の僕にできることは苦しむこと、アル中らしく震えることぐらいだ。

 もう少しで今日が終わる。酒を飲まずに済むかもしれない。

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