ss 台切り作戦

9月某日


日本防衛軍本部ー摩天楼内部はピリピリとした空気となっていた。

近いうちに上層部は日本防衛軍内で最強の部隊である『夜明けの光』に『台切り作戦』を発令するという噂が広がっていた。

どのような作戦かは発表されてはいないが、上層部が直接『夜明けの光』を動かすという事で注目が集まっていた。様々な憶測が飛び交い、台湾に攻め込むのではないかという噂まで流れた。

そしてついにこの日、ついに日本防衛軍は『夜明けの光』に対して『台切り作戦』決行を発表した。


朝の9時を過ぎた頃、夜明けの光所属ー第4新型空中戦闘艦ーツクヨミに乗った結人と咲夜は太平洋の上にいた。

朝8時に命令を受諾し、支度をしてやって来た。この日は学校があったが、校長経由でお休みを伝えた。

ちなみに美月と樹は普通に学校に通っている。美月は最初は自分も行きたいと言っていたが、今日の仕事の内容を伝えたところ「つまらなそう。」と言って学校に残る事を決めた。

また、茜の方も12月に行われる『第3次奪還作戦』のために開発したい物があるらしく、今日は休みとなっている。

というわけで、今日は2人だけだ。


「2人きりの空の旅も久しぶりですね、結人さん。」


「そうだね、まぁ戦闘メンバー以外はいつも通りみんないるんだけどね。」


「ふふふ、ですが邪魔者がいないのはいい事です。今日は1日お休みを貰っているのでどこかに旅行でも行きませんか?」


「いいよ、でもこの任務が終わったらね。」


「はい、すぐに片付けましょう。」


そう笑い合うと2人は窓の外をみつめた。本州から500kmほどの地点なのでUCの反応は何一つ無い。だが、目の前にある物を見れば自分たちが呼ばれたのも納得がいった。


台風ー風速17.2m/s以上の風を伴う巨大な雲の塊。

歴代最高レベルの台風で日本列島に多大な被害を与える事が危惧されたため日本政府は日本防衛軍に台風の排除もしくは縮小を依頼した。そして、それが『夜明けの光』に命令が下ったのだ。


外に出た2人は、巨大な雲を見つめる。そしてそれぞれ始まりの魔法を放つ。


「『ゼロ・ノート』。」

「『ラスト・ノート』。」


結人の髪は黒から白に、咲夜の髪は銀から赤に変わる。

変わったのは髪の髪の色だけじゃない。纏うオーラ、体内魔力量、魔力回路などの全てが最適化される。


そして・・・


「空間魔法<絶縮>」

「融合魔法<氷の息吹>」


台風を消すのは簡単だ、空気中の水分を無くせばいい。

結人の絶縮で、一瞬の内に空間が1点に集まる。そしてそれを、一気に凍らせる。


そうすることで絶縮の発動点を中心に半径1km以内の水分が消える。あとはそれを繰り返すだけ。

結人の絶縮で水を集めてその塊を1つずつ咲夜が氷に変えるという作業が続く。


やがて、空にポッカリと穴が空いた。


「疲れた〜久しぶりにこんなに頭使ったよ〜」


「お疲れ様でした、結人さん」


「咲夜もお疲れ。絶縮を1万回ぐらい使った気がするよ。もうやりたくない。」


「本当に大変でしたね。ですが、これで人々が安全に暮らせますね。」


「そうだね。よし、それじゃあ美味しいご飯でも食べに行くか。咲夜は何が食べたい?」


「私は結人さんと一緒なら何でも賛成ですよ。」


「ならラーメン食べに行こう。最近食べてなかったからさ。」


「わかりました、行きましょう。」


二人は手を繋ぐと、ツクヨミへと戻っていった。





後日、このことは世界中に報道された。その結果、世界各地から環境問題を解決してほしいという依頼が殺到した。

それを聞いて、朝日奈は頭を悩ませるのであった。

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