幸せになりましょう
@acewitha
第1話 中学卒業
「真央ちゃーん、秋山先生いらっしゃってるから降りてきなさい」
叔母の咲恵に呼ばれ私は自室から居間へと向かう。
秋山先生は弁護士さんで赤ちゃんの頃に亡くなった両親に代わり遺産の管理と遺言が守られているか時折訪ねてきてくれる。
今日はきっと中学卒業後の進路について話し合うために来てくれたのだろう。
父の弟の貴利叔父さん家族の家に居候させてもらっている私としては、卒業後は働いて自立したいと思っている。
きっと叔父さん達も賛成してくれるだろう。
身内とはいえ、本当の家族ではない私はこの家では邪魔な存在、そんな私がいなくなる事に誰も反対なんてされるはずはないしむしろ大賛成だろうなんて考えながら居間に着いた。
「秋山先生こんにちは、あの今日はお話があるのですがよろしいでしょうか?」
「あぁ真央ちゃんこんにちは、少し見ない間にまた綺麗になったね。でも顔色があまり良くないようだけど具合でも悪いのかな?」
(これから話す事を考えて少し緊張していたのかな)
大丈夫ですと答え話しをしようとすると先に先生の方から
「実は私も今日は真央ちゃんに話しがあって来たんだよ、まずは私のほうから話してもいいかな?」
そう言うと先生は返事も待たずに話し始めた。
「もう少しで中学卒業だね、今後の進路の事なんだが…遺言によりシリウス学園に通ってもらうよ。」
「えっシリウス学園ですって」
ガタッと音を立て叔母が椅子から立ち上がり、先生に詰寄る。
「そうです、あのシリウス学園です。何か問題でもありましたかな?」
「問題も何も願書も出していない真央が入れる訳ないじゃないですか?第一あそこは私立の名門高校でお金がいくらかかると思ってるんですか!!」
先生は落ち着いた声で優しく話す。
「お金の心配なら遺産もありますし、なによりあなた達が継いだ会社は将来真央ちゃんのものになるんだから、何も問題無いでしょう?」
父は生前会社を経営していて、その後を叔父夫婦が継いだのだが私には継ぐ意思はなくて、むしろその会社で清掃か社員食堂で働かせてもらいたいと思っていたのに。
「それでは、詳しい話はまた後日書類が揃ってからということで。そういえば真央ちゃんも話があると言っていたが、何かな?」
「い、いいえ大した話ではないのでまた今度で大丈夫です。」
混乱する頭の中でかろうじてそう応えるのが精一杯だった。
「真央!!どういうことなの!あんたが先生に頼んだのね!」
先生が帰るなり、ドンっと突き飛ばされながら叔母に怒鳴られる。
私は床に倒れ込みながら
「わ、私は何も…」
「じゃあ何で先生が突然来てあんな事を言い出すの!」
倒れ込んだ私を踏みつけながら叔母は怒鳴り続ける。
「ごめ、ごめんなさい…でも本当に何も言ってないんです」
叔母の怒りは中々収まらず謝り続けている中、ガチャッ
「ただいまー…ってお母さんどうしたの?」
従兄妹の美咲が帰ってきた。
途端に叔母は私に見向きもせずさっきまでの事を美咲にまくしたてた。
「えーなんで真央なんかがシリウス学園に!私の方がふさわしいわ!お母さん、先生に言って私を入学させてよ」
「遺言だからそれは難しいわね。でもそうね、美咲も一緒に入れるよう先生に手続きしてもらうわね。」
…その後、真央1人で入学は心配だからという理由で美咲の入学も決まり私の意思とは真逆の方向で話はどんどん進み中学を卒業することとなった。
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