架空小説からの引用

小野 恋待

1冊目 ひねくれた青春

「鈴、俺ら、何してんだろうね。」


そういうと光は立ち上がり、身支度を始める。


慣れた手つきで洗濯の山から今日着る分をひょいひょいとつまみ出し、いかにも大学生らしいコーデを完成させていく。


「んー。」


鈴は布団にくるまりながら、考えているのか考えていないのかわからない声で返事を返す。


靴下まで履き終わると、「今日お前も一限からだろ?」とガサゴソとパンの袋を開けながら鈴に身支度を促す。


鈴は昨晩バイトから帰ってきてから寝ていないため、疲れが抜けていない。


二人のぬくもりがかすかに残る布団の中はどこか冷たかった。


「光、蘭ちゃんは平気なの?」


布団の中でうずくまりながら光の背中に問いかける。


「あぁ、あいつ?んーまあ特にやばいとかはないかな。」


パンをかじりながら午前中は日が当たらない玄関の方に顔を向け、どこか遠くを見るような目で答えた。


ここ最近鈴の心の中には何かモヤモヤしたものが住み着き始めたのである。


もう満足したのか、光は食べかけのロールパンを鈴の口にねじ込むと一足先に出ていった。


一瞬ドキッとした後鈴は右手でパンを手に取り、スマホの画面に目をやった。


画面にはたくさんの不在着信が届いており、「高橋 勇太」と名前がある。


その名前を見るや否やじわじわと罪悪感が鈴を襲った。






架空小説より引用・・・「ひねくれた青春」


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