脳あるスパイは正体隠す ~スパイとして潜入したけどそこの全員が裏切り者だったってどういうこと?~
ふるなる
第1話 スパイ
水溜まりに自分の姿が映った。
俺は幾つもの仮面を持っていて常に何かの仮面をつけて過ごしている。俺の素顔は誰も知らないし、自分自身も知らない。
俺は死と隣り合わせの役者だ。
俺は感情を持たないピエロだ。
俺は人騙しを生業とするペテン師だ。
敵の懐に入り込んでそこに溢れ出す重大な情報を自陣に垂れ流す。正体がバレたら死ぬ。だからこそ、俺はもう一人のペルソナを作り出して演じながら任務を遂行する。
バレるのが怖いとは思わない。ただ、演じている間に本物の自分を見失い戻らなくなることに少し恐怖が芽生えてきている。
水溜まりに反射している自分の姿を見て言い放った。こいつは誰だ、と。
すぐにこいつは俺の作り出した仮面だと気づく。
彼は俺の体を動かして森の中の誰もいない薮中に身を隠した。
「コードネーム"
俺はスパイだ。
他国に侵入して自国に情報を流すスパイである。諜報活動を続けて約二年。もうこの国に慣れてしまっている。
家は活気ない町の外れにある。
何気なく、いつものように扉を開けて中へと入る。部屋の中を歩いているとふと壁にかかったカレンダーが目に映った。赤い丸の打たれた日にち。それが
ここ「
スパイとして与えられた任務は騎士団に入り込み、そこで得た情報を祖国に流すこと。
騎士団になるためには年一回行われる試験に合格しなければならないが、その試験は倍率が高く一浪二浪は当たり前。俺は過去二回不合格となっている。厳密に言えば、敢えて不合格になった。一発合格だとスパイと疑われやすくなると考えたからだ。スパイとして完璧主義な俺は時間を掛けて確実に駒を進める。
時は来た。三回目の試験は必ず受かる。そう踏んでいる。その参段は正しく一次試験、二次試験どちらとも合格をし、ついに騎士団に入ることになった。
合格して嬉しいと、仮面は独りでに変形して笑っていた。けれども、その奥の顔はきっと無表情。洗面台の鏡には仮面の笑った姿が見えるが、きっとそれは作り笑いのように思えた。
合格通知の後、再び連絡が来て、正式に騎士団に加入することが決定した。
「俺ァ、カミヤっちゅうもんだ。アンタがこれから世話になる部隊に案内したる。ついてこい」
騎士団には幾つか部隊がある。
主に戦争で主力となる第一部隊。その後ろに構える第二部隊。この二つの所属はエリートのみの選りすぐり部隊。そして、多くの者が所属する町の警護等警察業務を担当する第三部隊。
基本的にはこの三つのどれかに所属されるはずだった。だが、俺はそれの、どの所属でも無かったようだ。
無愛想な中年とお年寄りの間の男性に連れられた先は「蒼の国」の王宮に隣接する本拠地。そこは「蒼の国」出身者でも多くの者が一生立ち寄ることのない場所である。
スパイということがバレたのか。完璧に演じてきているこの俺が。そんな不安を仮面の彼は感じているようだ。本人は何も感じていないというのに。
「特級部隊。それは、国のタンク役的存在であり、まさに国の
配属されたのは第一から第三部隊のどれでもなく、特級部隊と呼ばれるもの。真に選ばれた者のみが配属される特別な部隊。
そこにいる四人の仲間。少数精鋭部隊ということが一目で分かる。選ばれた四名は相当の実力を持っているのだろう。何しろカミヤ曰くエリートなのだから。
体格の良い強面の男。ガラの悪いアメリカンキャップを被ったストリートな男。何を考えているのか分からない男。研究者の白服を身にまとう何やら怪しい男。個性豊かな面々がそこで待っていた。
「こいつが新たに特級部隊に入るスナダだ。あんちゃんも挨拶したれや」
俺はカミヤに導かれるまま「スナダです。よろしくお願いします」と頭を下げた。
その場所で時間を越すことになったので、俺は密かに魔法を使った。
『ステータス確認』
この魔法では自分や対象の相手の能力値や役職などを知ることができる。最初はどれ程の強さを持つのかを知りたかっただけだった。
だが──
裏切り者が二人もいたのだ。
一年後、さらに二人の仲間が増えたが、二人ともこの国の者ではなかった。
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