第77話 襲われた理由
俺は、なぜシャーキーがジャスティン達を襲ったのか確認するため、コーバスのいる森へテレポートした。
地図を開くと、すぐに青い点が近づいて来るのが分かる。
コーバスは、いつ来てもいいようにずっと待機しているのだろうか。だとしたら魔族のくせに真面目な奴だ。
地図を見ながらコーバスを待っていると、いつもより移動速度が遅いような気がした。
まっすぐ飛んでいないようにも見えるし、彼じゃないのかもしれないとも思った。
「よお、ゲオ。待たせちまったかな」
結局、空から降りてきたのはコーバスだった。
ただ、片腕がなく、羽がボロボロだ。どうやら、そのせいでいつものように飛べなかったと思われる。
「そ、その腕と羽、どうしたんですか?」
「まあ……ちょっとな。で、今日はどうしたんだ?」
「ジャスティンを見つけたので、その報告に」
「おお、そうか! そいつは良かった! ならベネディクテュス様にはオレから伝えておくぜ!」
「はい、お願いします。ところで、一つ聞きたいのですがいいですか?」
「ああ、何でも聞いてくれ!」
「ジャスティンが、シャーキーという上級魔族に襲われたんですが、どうしてか分かります?」
「シャ、シャーキーに!?」
コーバスが明らかに動揺を見せた。何か知っているのかもしれない。
「ええ。最初は人間を襲ったのかと思ったのですが、本人が言うにはハーフ魔族が狙いだったと。ジャスティンのことを知っていたようでした」
「そうか…………。すまねえ、ジャスティンのことをシャーキーに教えたのはオレだ……。オレが裏でコソコソ何かやってるのを嗅ぎつけやがって、アイツに脅されてな……」
「脅されて? まさかその身体、シャーキーにやられたんですか!?」
「まあな……」
シャーキーめ。同族相手でもこれほど乱暴者とは。
腕を無くすほどの怪我なんて、一歩間違えれば命を落としかねないほどだったのではないか。
「回復魔法で治さないんですか?」
「回復魔法でも簡単には再生しねえよ。それに、魔族は上位の回復魔法を使えるやつが少ないからな」
たしかに魔族に回復魔法のイメージはないな。
どちらかというと自己再生しそうに思えるが、現実は他の種族と同様に、普通の生物ってことかもしれない。
「ヒール!」
俺は回復魔法を唱えた。
「お、おい。ありがてえけど、そんな初級魔法でどうにかなんて……。なっ!?」
コーバスの腕や羽がみるみる再生していった。
俺の回復魔法なら、どうにかなるんじゃないかと思ったが、予想通りだった。
「マジかよ! なんで初級魔法の『ヒール』でここまでの回復力があるんだ? あんた確か、ここ来るのにも上級魔法の『テレポート』を使ってるし、そんな図体でかなりの魔法使いなんだな!」
「ええ、まあ、攻撃系以外ならそれなりに。それで、シャーキーにはどこまで伝えたんですか?」
「ん? ああ、アイツに伝えたのはあんた以外にハーフ魔族がいるらしいってことと、そいつがシェミンガム王国にいるって情報だけだ。魔王様の依頼であんたが捜してるってことは言ってねえ」
コーバスは再生した腕を、確かめるように動かしながら答えた。
「そうですか」
あの戦闘狂の性格を考えると、ただ戦いたかっただけで、深い意図はないかもしれない。
シャスティンの存在の重要性を理解しているとも思えない。
「結局、ジャスティンってやつは無事なんだろ? よくあのシャーキー相手に無事だったな。アイツはその後どうしたんだ?」
「――――たぶん、シャーキーが帰ることはないと思います……」
「そうか……オレの知ったこっちゃねえかな。ま、これでオレの仕事も完了だ。魔王様やベネディクテュス様みたいな大物と関わることができて、得した気分だぜ! あんたとも知り合えたしな! これも何かの縁だ。腕を治してもらった恩もあるし、何かあればいつでも言ってくれよな!」
「はい、ありがとうございます。ジャスティンの今後のこともありますし、魔族の人と繋がっておくのは、こちらとしても好都合です」
「はは、なら良かったぜ。それじゃあな、ゲオ!」
「ええ、それでは」
俺は飛び立ったコーバスに手を上げて言った。
サバサバして何だか好感が持てるやつだ。
シャーキーも魔族だが、コーバスだって魔族。
種族に関係なく、嫌なやつもいれば良いやつもいる。きっとそういうもんなのだ。
ハーフ魔族の俺が言うのも何だが、たとえ魔族といえども、種族だけで偏見を持つのは間違っている。
ちゃんと相手を見て判断するべきである。
俺はそんなことを考えながら、王都エバーディーンに戻った。
あとは、これからジャスティンがどうするかだ。
元々の依頼は保護をすることが目的だったので、このままジャスティンと別れて一人旅を続けさせたら意味がない。
かといって俺たちについてクレシャスの町に行く理由もないだろうし。
俺は、ジャスティンを見つけるのが目的で、見つけたらどうするか考えていなかった。
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