彼女は雑踏に紛れて消えていった
春野訪花
彼女は雑踏に紛れて消えていった 1話
ちょっと出かけてくる。
いつものように聞こえてきた言葉に、僕は半ば無意識に、いってらっしゃいと声を上げた。
彼女がなにか反応したかどうかは分からない。ただドアが閉まる音だけが耳に残っている。
そして彼女は軽やかな足取りで、僕の前から姿を消した。
◆
「それってフラれたってことじゃないのか?」
サラリと言われた言葉に僕はむせた。大丈夫か?と正面に座る友人が声をかけてくる。僕はブンブンと首を左右に振った後、コクコクと頷いた。
「……どっちだよ」
咳が落ち着いた後、僕は水を飲む。そして、呆れたような目を向けてくる友人、海征(かいと)に、僕は口を開く。
「大丈夫……だけど……大丈夫じゃない……」
海征は少し動きを止めて、
「ああ、フラれたってことな」
と納得したように言った。
「フラれた……なんて……ことは……」
本当かよ、と疑いに満ちた目を向けられ、僕は視線を彷徨わせる。
「目を逸らすなー」
正面に座る海征がコップを振り、氷がカラカラと音を立てた。僕は冷たいコップを握りしめる。
「いや……だって……」
「だっても何も、あのマドンナを射止めたのはお前だろ? 自信持てよ」
「だ……だって……」
口にしづらく、チラリと海征の顔を見れば、さっさと先を言えとばかりにコップを振られた。僕は肩を縮めながら、冷たいコップを縋るように包み込む。
「まだ、『行ってきます』と『お帰り』の挨拶しか……してないんだ……」
「はぁ!?」
海征の大声に、周りがざわめく。だけど、海征は気にも留めず、勢いよく立ち上がった。
「おまっ……付き合ってどれくらい経ってんだよ……!? 一ヶ月だぞ……!?」
目を見開いた海征は、数度口を開閉させた後、ああもう……!と乱雑に椅子に座った。そして、この騒ぎでも一滴も溢れなかった水を飲み込んで、
「お前……同棲までしておいてそれはないだろ……」
と、ため息と一緒に吐き出した。
「どっ、同棲ってほどじゃないよ……。一週間に一回、美桜(みお)さんが泊まりにくるだけだよ」
海征は深くため息をついた。
「お前なぁ……。もう少し、彼女と交流しろよ……」
「う……うん……」
僕はコップを握り直す。結露か手汗か分からないもので、ビショビショだ。
「付き合ってんだから、自信ないとかそんなんで適当にするなよ」
僕は何も言えずにコップに視線を落とす。
「好きじゃないのか? マドンナのこと」
僕はハッとして首を左右に振る。
「違う!」
海征は肘をつきながら、僕をジト目で睨みつけた。僕は思わず姿勢を正した。そして、海征はまた深々とため息をついて、
「で、探さないのか?」
「え……」
「彼女のこと。もう一週間以上会ってないんだろ」
「あ、うん……」
「なんだよ、反応薄いな」
「あ、いや……なんか……もっと何か言われるのかなって思ったから」
「言わねぇよ。そんなの、お前と彼女の問題だろ。お前のことより彼女が行方不明な方が問題だっつーの」
僕は大きく頷いて、食器を片すために水を飲み干した。
◆
最初に向かったのは、彼女がよく行っている、大学構内にあるカフェだ。
そんなに広いわけではないが、開放感に溢れていて、磨き上げられたような綺麗さがある。彼女にぴったりな場所だ。
彼女はいつもテラス席に座っていた。そこがお気に入りの場所で、いつも通りがかる男達の視線を奪っていた。
その席に、彼女は座っていなかった。別の女性が座っているその席だが、彼女の面影が残っているような気がした。
一緒についてきた海征が、その女性にあっ、と声をあげた。
「知穂センパイじゃないですか」
その言葉にテラス席の女性が振り返った。彼女……美桜さんが綺麗系だとすると、知穂と呼ばれた女性は可愛い系だ。
知穂センパイは口元に笑くぼを浮かべた。
「あら、海征くん。どうしたの?」
「マドンナ……あー……櫻田美桜って人を探してるんです。確か、同じ学部じゃないですか?」
「櫻田……? あっ、あの綺麗な人?」
知穂センパイはほとんど考えずに思い出したみたいだった。やっぱり、かなり有名だ、美桜さんは。
海征は、きっとその人ですと答え、僕の背中を叩くように押した。
「こいつの彼女なんですけど、一週間くらい前から会えてないんです」
「えっ……!」
知穂センパイの視線が僕に移った。まるで視線が頭のてっぺんからつま先まで刺さったように、僕は直立する。
知穂センパイはさっきよりも体をこっちに向けた。
「連絡も取れないの?」
僕は薄汚い足元のコンクリートに視線を落とす。
「連絡先……知らないんです」
隣から小さなため息が聞こえた。
知穂センパイが、ちょっと待っててと言って、席を立ち上がる音がした。そっと顔を上げると、知穂センパイはトレーを持って店内に戻っていくところだった。
知穂センパイが視界からいなくなって、海征にペチペチと腕を叩かれる。
「お前なぁ……」
「……ごめん」
謝るとまたため息をつかれた。
◆
知穂センパイが、美桜さんと仲のいい人のところに連れて行ってくれると言った。すぐに知穂センパイが連絡を取ってくれて、その人が授業の後に時間を作ってくれることになった。待ち合わせ場所は教室から近い、外のベンチになった。
そのベンチまで案内してもらい、知穂センパイは用事があるから帰ると言った。
「あ……ありがとうございます」
知穂センパイに頭を下げる。いいえーと、センパイはまた笑くぼを浮かべた。すると、海征が片手をあげた。
「じゃ、俺も行くわ」
「えっ」
「一人じゃなにもできないとか、その歳でないだろ」
僕はもにょもにょと口ごもる。てっきり、一緒に探してくれるのだと思っていた。
「お前は逆に一人で探した方がいいんだよ」
「な、なんでそう思うの……?」
海征は少し考える素振りを見せた後、
「勘」
と、しれっと答えた。
「ええ……?」
「ま、大丈夫だって」
僕の不満と不安が混ざったような声に、海征は軽く言った。そして、頑張れよーとだけ残して、センパイと一緒に去っていった。
授業が終わって、ベンチのそばの道は人で溢れていた。
そういえば、名前どころか、どんな人なのかすら聞いていなかった。大丈夫かな、と道行く人をちらりちらりと見ていると、一人の女性が近づいてきた。その人も、僕と同じようにおどおどしている。言い方は悪いが、少し地味な女性だ。その人は背中を丸めて、僕を窺うように歩み寄ってきた。
「あの……山田太朗さん……ですか?」
「は、はい……!」
緊張で凝り固まった喉が、想像以上に声を張った。僕の声は女性を驚かせなかったみたいだ。だけど、おどおどした様子は変わらずに、女性は口を開いた。
「私……菅野愛実(あいみ)と……言います」
菅野さんはそれ以上何も言わない。妙な沈黙に、どうしたらいいかわからなくなった僕はとっさに立ち上がる。
「ど、どうぞ、座ってください」
僕はベンチの下に生える芝生を見つめていたけど、菅野さんのクスクスという笑い声にそっと顔を上げた。
菅野さんは笑うとどこか可愛らしい人だった。
「一緒に座りましょう?」
「あ……えっと……はい……」
菅野さんが脇によけながら座って、僕はぺこりと頭を下げてから隣に座った。お尻がムズムズするような居心地の悪さに、僕は縮こまる。
「美桜ちゃんの言う通り、優しい人なんですね」
菅野さんが穏やかな声で言った。
「や、優しい……?」
僕は菅野さんへと視線を向ける。菅野さんは優しく微笑んでいた。
「だって、席を譲ってくれようとしたでしょう……?」
「そ、それは当たり前じゃないですか……?」
僕は首を傾げる。すると菅野さんはますます笑みを深めた。
「やっぱり優しい」
僕はますます首を傾げた。菅野さんはそんな僕にクスリと笑ってから、笑みを陰らせた。
「だから、美桜ちゃんは……」
僕に分からない、だけど重大ななにかを秘めた言葉に、僕は石を飲み込んだように胸が詰まった。
菅野さんは表情を陰らせたまま、僕をじっと見つめてくる。さっきまでのおどおどした雰囲気は、もう一切なかった。
「山田くんは、美桜ちゃんのどこが好きですか?」
「え……」
突然の質問に、僕は思わず目を見開く。だけど、菅野さんは真剣に僕を見つめていた。
僕はどこが……と思考を巡らせる。
遠くから見ていた時も、近くで見ていた時も。
「……全部、です」
ありがちな言葉になってしまった。と、声にしてからハッとする。
だけど、菅野さんは怒ったりせずに、そっかと微笑んだ。
あまりにもあっさりしているので、僕は思わず尋ねる。
「……いいんですか……? こんなありがちな答えで……」
菅野さんはふふっと笑った。
「うん」
頷いた菅野さんに、僕は思わずキョトンとする。
「えっと……それで、なにを聞きたいんですか……?」
菅野さんの言葉に、僕は言葉に詰まる。なにを聞くべきなのか、考えていなかった。菅野さんはただ言葉を待って、その辺りを眺めていた。
今日は天気がいい。
春先のほんのりとした暖かさが辺りを包み込んでいる。
優しく通り過ぎていく風に乗せるように、僕は口を開いた。
「……美桜さんがどこに行ったか知りませんか……?」
至って普通の質問だ。
菅野さんは僕に視線を戻して、微笑んだ。だけど、その笑みにさっきまでの優しい雰囲気はない。
「教えない」
「そう……ですか……」
「あ……! 山田くんを責めてるからとかじゃないんです……! 美桜ちゃんから頼まれてて……!」
「えっ……美桜さんに会ったんですか……!?」
早口でまくしたてるように言うと、菅野さんは困ったように笑った。
「美桜ちゃん、今日、学校に来てたんです」
そして、話をする中で初めて目を逸らされた。
「言ってもいいのか……本当は分からないんですけど……」
菅野さんはとても言いづらそうに声を絞り出した。
嫌な予感に、僕は体の芯が凍りついていくような気がした。
菅野さんは地面に視線を落として、本当に言いづらそうに言った。
「……美桜ちゃん……男の人を連れてたんです」
「え……」
――フラれたんじゃないの?
そんな言葉が脳裏に蘇った。
「わ、私、信じられなくて……誰?って聞いたんです。そしたら……か、彼氏だって……」
菅野さんは横目で僕を見た。
「でも、山田くん、美桜ちゃんの彼氏、なんですよね……?」
喉が凍りついてしまったように動かない。それでもやっと、
「彼氏…………です……」
とだけ答えられた。
◆
「お前には愛がない。あるけどない」
開口一番がそれだった。
彼氏だと名乗ったその人――奥田先輩は、演劇同好会に所属しているというので訪ねて来た。何かを言ってやりたいとかそういうのじゃない。ただ、じっとしてはいられなかった。
何を話すのかもろくに分からないまま、ただ、『何か話しを聞きにいく』という漠然とした目的で同好会の戸を叩いた。
数人いた中で一番大柄な男の人……奥田先輩が、僕を部屋の奥へと招き入れた。そして、開口一番がそれだ。
「ど、どういう意味ですか……?」
大きなペットボトルから紙コップにお茶を注ぎながら、奥田先輩は、
「言葉の通りだぞ、青少年」
とイマイチ分からない返事をされた。
豪快に注がれたお茶はぼちゃぼちゃと音を立てていた。だけど溢すことなく、小さな紙コップを僕に差し出してくれた。
どこか毒気を抜かれるようなその雰囲気に、僕は普通に礼を言ってお茶を受け取った。
パイプ椅子に奥田先輩も腰掛ける。椅子がギシッと音を立てた。
奥田先輩はぐいっとお茶を飲み込んだ。
さっきの言葉の意味はこれ以上聞いても何も答えてはくれなそうだった。だから、僕は意を決して口にする。
「……先輩は、美桜さんと付き合ってるんですか……?」
「ああ、付き合ってるとも」
奥田先輩は大きく頷いた。そこに一切の迷いはない。
「……いつからですか……?」
「そうだな……一週間くらい前からだな」
ちょうど、美桜さんと会わなくなってからだ。
ズシッと全身に何かがのしかかってきたように重たくなった。
「……知らないのだな」
「え……?」
重さに体を曲げたまま、奥田先輩を見上げる。
奥田先輩は腕を組んで、ふぅと息を吐き出すと、
「もう少し、美桜と話すべきだな、お前は」
と真面目な口調で言われた。
「……似たようなことを友人にも言われました」
全然話さなかったから、僕は……フラれたんだろうか……。
「ま、一度茶でも飲んで行け」
そう言って、奥田先輩に肩を叩かれた。力強いけど、痛くはない。
「……僕が彼氏なのに、どうしてそんなに優しくできるんですか……?」
「自分だったらできないのか?」
逆に問いかけられ、僕は目を瞬かせる。思わぬ問いかけ、自分でも考えなかったことに目を瞬かせたのだが、奥田先輩は続けて質問してきた。
「俺は美桜の恋人だ。……さあ、お前は俺をどうするんだ」
「どう……」
実際、それがわからないまま、ここに来たんだった。
答えられない僕に、奥田先輩は苦笑いを浮かべた。
「俺だったら美桜のところに行くけどな。浮気相手も許せないから浮気相手のところにも行く。だけど、まずは美桜から事実を聞きたい」
美桜さんに……事実を……。
「美桜が何を考え、何を思っているのか。気になるだろう?」
美桜さんが、何を考えているのか。何を思っているのか。
口の中、心の中でその言葉を転がす。
薬の錠剤のようなそれは、徐々に溶けて行くようだった。
「――それが愛ってものだ」
最後にそう締めくくった奥田先輩の言葉は、とても優しく聞こえた。
僕はお茶を飲み込む。絶妙に緩いそれは、喉を通り過ぎていった。
「ありがとうございます」
彼氏だと名乗る奥田先輩にそういうのもおかしい気はしたけど、僕は確かにそういった。
奥田先輩はニッと口の端を持ち上げるように笑った。
「そうだ、ヒントをやろう、青少年」
はやる気持ちのまま、外に出ようと動こうとした僕に奥田先輩がこう言ってきた。
「『愛とは爆発』だぞ」
◆
奥田先輩に、美桜さんはここにいるだろうと教えられてきたのは、駅前のカフェだった。
大学構内にあるカフェよりも、ナチュラルな自然なイメージのお店だ。
中は人が多すぎず少なすぎずいて、表からでは美桜さんがいるかどうか分からなかった。
店内に入ると、ドアベルが鳴った。店員さんが声をかけてきて、僕は知り合いがいるか探させてほしいと言って店内を回った。
「こっちこっち」
手を挙げて呼ばれた。その声に驚きながら呼ばれた方へ向かう。店内の奥側、そこには海征が座っていた。
「な、なんで海征がここに……?」
「まあ、とりあえず座れよ」
「え、でも……美桜さんを……」
すると海征が見たこともないような真剣な顔をした。
「その美桜さんのことで話があるんだよ」
「……」
僕は無言で席に座る。
海征が美桜さんのことを名前で呼んだからだ。海征はいつもマドンナって呼ぶのに。
座った僕に、海征は真っ先に切り出した。
「俺、美桜さんに告白しようと思うんだ」
「……えっ」
僕は一瞬頭が真っ白になった。
冗談かと思った。
だけど、海征の目は鋭く、真っ直ぐ僕を見ている。
「俺さ、実はずっと好きだったんだよ、美桜さんのこと」
「えっ……本当に……?」
海征は当たり前だろと笑った。
「好きだったけど、お前のこと応援して身を引いたんだ。なのに、全然ちゃんとしてねぇんだもん」
海征が僕を見据える。
何もかも見透かされていそうだ。胃が跳ねるような感覚がした。
ゴクリと生唾を飲み込んだ僕に、海征は冷静な目を向けてくる。
「お前、美桜さんに会ってどうするつもりだったんだ?」
「え……他に彼氏がいるのか聞こうと思って……」
「聞いてどうするんだよ」
「どう……って……」
海征の声が冷たく脳内に響く。
「もしも、美桜さんがお前のこともう嫌いだとかって言ったら、どうするんだよ」
「え……そ、それは……」
きっと僕が悪いんだ。
ちゃんと会話をしなかったから。
「俺はもし告白して、無理だと言われても諦めない」
「えっ……そ、それは……よくないよ……」
「なんでだよ。別に犯罪をしようって訳じゃない。学校でお喋りをするとか、帰りにどこかへ一緒に出かけるとかそれくらいだ」
「……」
僕は分からなかった。どうして、そこまで……。
海征が深くため息をついた。そして店員さんを呼んで、コーヒーを二つ注文する。
そして海征は机に肘をついて寄りかかった。
「お前、本当に無欲だよな」
「えっ……?」
考えたこともない言葉だった。
「ちゃんと口にしないと、手に入るもんも入らないぞ」
ぎゅっと、膝の上の拳に力が入った。
何も言わない僕に、海征がどこか呆れたように口を開く。
「……お前、美桜さんが俺のものになってもいいのかよ」
美桜さんが……誰かのものに……。
「…………」
海征が、おっと顔を明るくした。
「そうそう、そういう顔だよ」
「え……僕、今、どんな顔してた……?」
「オトコの顔」
「えっ……!」
僕は思わず頰を覆った。だけど、当然どんな顔をしていたのかは分からない。
「で、俺、もう今すぐにでも告白しに行くけど、どうすんの?」
「…………」
僕は俯く。テーブルの上の、まだほとんど飲まれていないコーヒーのカップが目に留まった。
「あれ……さっき――」
「おいおい、どうするんだよ。もう行っちゃうぞ」
海征は自分のカバンを手に取り、身支度を始めた。
「ほ、本当に告白するの……?」
「ああ、本気だ。たとえ断られても、俺は諦めないからな」
海征はサラッと答える。そこに揺らぎは感じられない。
僕が、何かを言わない限り。
――愛とは爆発。
僕が美桜さんへの思いを、しっかりと口にしない限り。
「…………美桜さんは、誰かのものじゃない。僕のものでもない」
ぎゅっと右手を左手で握りしめる。
テーブルの上にポツリと置かれた、並々と残っているコーヒーを見つめる。
「だけど……美桜さんは……僕の大切な人だ。だから……」
僕は顔を上げる。
「だから、美桜さんを傷つけたら許さないからな」
すでに立ち上がっていた海征はニヤリと笑った。
「じゃ、しっかり『マドンナ』を守れよ、彼氏さん」
ぽかんとする僕の前で、海征は残ったコーヒーを一気飲みする。そして、じゃあなと去っていった。
海征がいなくなったその場所、僕の斜め前の席から美桜さんが現れた。
いつもならまともに見られなかったその顔を思わず見つめる。
「60点かな」
美桜さんはとっても子どもっぽく、悪戯を楽しむように笑っていた。
開いた口がふさがらない僕の前に、美桜さんは座る。そして運ばれてきた二つのコーヒーのうち一つを何も入れずに口にして、
「大好きよ、太郎くん」
と無邪気に微笑んだ。
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