廃墟に咲いた白い薔薇
はくゆう
プロローグ
ーAD1100ー
人類が荒廃した大地から住処を空に移して数百年が経ったこの時代、すでに人々は新たな文明を生み出し豊かな暮らしを取り戻していた。
その暮らしを支えているのはゼノ・プリズマと呼ばれる人工エネルギーであり、様々な物の動力源として使われている。
そして人類は空に浮いた大地に曙光都市エルジオンという大都市を築き上げ、多くの人達がエルジオンへと集まっていった。
しかし数年前、合成人間という人工生命体が人類からの独立を宣言してエルジオンへ襲撃を仕掛けて来た、エルジオンの人々はなんとか彼らを退け、合成人間達は表舞台に姿を現さなくなっていったがエルジオンの人々には大きな爪痕を残す事となってしまった。
そして現在、エルジオンから少し離れた場所に位置する工業都市廃墟にて一体の合成人間が二人の人間に追われていた。
「ちっ! 見失っちまったか? こうも雨が降ってちゃあ視界が悪くてダメだ! 見たことないタイプの合成人間だったが、出来ればここで仕留めておきたかったぜ。」
「もうやめておきましょうよー先輩! これ以上進んだら流石に危ないですよー! それに合成人間なんか倒したって1gitにもなりませんよー!」
「バッカヤロー! これは金のためにやってんじゃねーっつんだよ! てめぇにゃ正義の心ってもんがねぇのか? あぁ?」
「正義の心はありますが、自分の命が1番であります!」
「……間違っちゃいねぇ、間違っちゃいねぇが、猛烈にお前を殴りたい!」
「えぇ!? 勘弁して下さいよー!(もうハンターやめよ…)」
「待ちやがれ!!」
二人はエルジオンへと走って帰って行った。あたりに人影が無くなると、瓦礫の影から先程の合成人間が姿を現した。
「正義の心ですか…とすれば私は悪となるのでしょうか。身に覚えはありませんが人間とは身勝手な生き物なのですね。」
その合成人間の体は先程の人間にやられたのか酷く損傷していた、おぼつかない足取りで廃墟を進んで行くと突然膝から崩れ落ちる。
「くっ…動力炉がやられてましたか…どうせ行く当てもありませんでしたが…無念…ですね…。」
雨が降りしきる中その合成人間は一人ゆっくりと倒れて行った。
しばらくすると、フード姿の人間が彼の近くにやって来た。横たわる合成人間をじっと見つめるとその体を担ぎ何処かへ消えて行った。
時は経ち、薄暗い研究施設の様な場所に二人の姿はあった。合成人間の身体は綺麗に修復され台座の上に横たわっている。そしてとうとう目を覚ました合成人間はゆっくり起き上がった。
「…ここはいったい…」
「起きたみたいね?」
「!? 何者です?」
「待ちなさい! 私には攻撃できない様にプログラムしてあるから、大人しくして私の質問に答えなさい。見たところそこらの合成人間とは違うみたいだけど、貴方は何者で何故あんな所に倒れていたの?」
フード姿の人間は一方的に質問を繰り返し、しばらくの間問答を続けた。
「つまり、KMS社から逃げて来た途中でハンター達に出くわし損傷して倒れてたと…なんだか少し似てるわね…。」
「何のことです?」
「別に…こっちの話よ。でも他の記憶が無いとなるとメモリーまで損傷してる可能性があるわね。まぁそっちはまた今度いじってみるわ。それじゃ貴方から何か質問はある?」
「…何故…私を助けたのですか?私は貴方にとって悪ではないのですか?」
「なに、それ? 訳わかんないから却下。助けたのはただ珍しい機体だったから気になっただけよ。」
「そうですか…」
「それだけ? まぁいいわ…あなた名前はあるの?」
「いえ、その様なものは授かってないと思いますが。」
「でしょうね、それじゃ不便だから私が決めるわよ?」
「構いません。」
「…まぁここまで意思疎通の取れる合成人間も珍しいし、長い付き合いになるかもだから、とりあえずは…よろしくね……ラヴィアン。」
本編へ続く
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