第19話 王子とりぼんの再会

 私…小園りぼんは…ライさんから貰ったリボンを見つめていた。ライさんは何故か来なくなった。1日1回は来ると言ってたのに!嘘つき!


 ああ、ライさんが来ないと死にたくなる。

 あの眩しいくらいの笑顔を見てるだけで元気が出てくるし。タイプだし。


 今更ながらあんなイケメンが私なんかと会話してくれたことが奇跡に近い。

 王女やジェシカとデートとか見合いとかしてたみたいだけどやはりどちらかと結婚するのかなぁ?王子だもんなぁ。


 結婚…私なんか出来そうにないのに、何私髪とか切って整えたんだろう。馬鹿みたい。


 すると部屋がノックされダスティンとかいう無表情の子爵様が入ってきた。この人はよく私の様子を見にくる。


「フェリシア…身体はだいぶ良くなったな。歩けそうか?温室くらいなら案内できる。もちろん車椅子を使おう」

 と用意される。私はダスティンに車椅子で押されて温室へと向かった。罠は一応解除されたようだ。


 綺麗な花が咲いていた。ようやく部屋から出れたからちょっと嬉しくなった。見たこともない綺麗な花を触ろうとしたら手を掴まれた!


「危ない!それは毒花だ。見た目は綺麗だがトゲに触れて血が出たらたちまち毒に侵される」

 と無表情で説明された。

 温室に毒花…。流石暗殺者。


 そして車椅子を押してもらい花や草や木を見ていく。軽い植物園みたいな感覚だった。自然のありがたみを感じた。


「あの薬草には滋養強用となる成分もありフェリシアの食事にも仕込まれている」

 と指差した草は見た目が斑らの変な草だった。あれが毎回食事に。


「フェリシア…か」

 自分に付けられた名前に思わず呟く。


「元の名前を教えてくれないから付けさせて貰った。昔可愛がっていた犬の名前なんだが…気に入らないなら変える」


「いやいいです。元の名前嫌いだからフェリシアでも何でも」


「そうか。なら良かった」


 するとダスティン子爵が私の前に周りひざまづいた。そして箱を取り出して開ける。中にはキラリと光る青の指輪が入っていた。


 え?


「フェリシア…我輩が一生面倒見るから婚約して欲しいのだが」

 と無表情で言われた!


「ええ!?」


「嫌か?」

 え?いやかも何も何故だ!!?いきなり!


「えっと…あの…お世話になっているのは有難いと思いますけど…」


「やはりライオネル殿下が好きなのか?」


「ええ!?…あの…そ、そのぉ…」

 とライさんの名前が出て焦る。

 ん?急にライさん来てくれなくなったのって…。ま、まさか!?

 ダスティン子爵が邪魔してるの!!?

 ようやく私はそこに辿り着いた。こいつは暗殺者だ。家にも色々な仕掛けがあるから、迂闊に部屋を出たり出来ないというかいつも鍵かかってるし。


「あの…まさかライさんに会えないのは貴方が何かしているんですか?」


「………やはりフェリシアは殿下のことが…。だが、フェリシアは今や庶民になった。我輩は子爵家当主だがフェリシアのことを好いている。あの王子とは結婚出来ないだろう。王が認めない」


「そ、それは貴方も同じなんじゃありませんか?貴族と庶民が結婚とかこの世界では難しいんでしょ?」


「確かに難しいが我輩はこのような稼業なのであまり社交場に出ないしフェリシアの結婚報告も書面上で済ませるから王に顔を見せることはない。それにフェリシアだから元聖女と気付かれにくいだろう」


「………」

 思い切り偽装結婚な匂いだ!!

 無表情だし本当に私のことを想ってくれてるのかよくわからない。

 良い人だとは思うけど、結婚とか婚約とかになると別のような。


 それにやはりライさんのことがチラつく。

 さっきから指輪を待ったまま微動だにしないし返事待ちなのだろう。どうしよう。断ったら私暗殺されるかな??


 そこで何か音が聞こえた気がする。

 何?


 バタバタと従者らしき人が来てダスティン子爵に耳打ちしていた。


「ちっ…殿下が…」


 殿下?ライさん!?ここに来たの?私に会いに?罠だらけのここに?


 途端に私は嬉しくなった。


「…………渡すものか!」

 とダスティン子爵は車椅子を押して元のあの部屋に私を押し込める気だ!


「ちょっ!やだ、ライさんに会わせて!!」


「出来ない!フェリシアは我輩のものだ!」

 とグングン車椅子を押す。このままではまたあの鍵のかかった部屋に入れられる!!

 私は車椅子の車輪に手をかけた。ズリっと痛みが走り血が出た!

 ダスティン子爵はそれに気付いて止めた。

 その隙に降りて逃げ出す!


「あっ待ちなさい!フェリシア!」


「そんな名前いらない!!」

 と逃げた。自分でも驚くほどグングンと走った。というか浮いている?

 よく見ると精霊というか妖精みたいのがくっきり視えて私を持ち上げている!

 精霊が視えないダスティン子爵には私が空中浮遊で逃げ出しているように見えているだろう。


「な…」

 と驚いた声がしたがドンドンと速度があがり、廊下の至るところから罠が飛び出してきた!

 矢が飛んできたり岩が転がったり網が落ちてきたりしたが精霊は楽しそうに避けて行く!


 いいぞ!!精霊ちゃん!!


 すると何か喧騒の音が聞こえ数人が悲鳴をあげたりしてぶっとばされていく。


 そして走ってきた人物は…


「ライさんっっ!!」


「っっ!?りぼん??」

 私が空中に浮いていたから驚いて見ている。精霊ちゃんは私を下ろしてくれた。


 ライさんはよく見るとボロボロで右脚を怪我していた。血が滲み痛そう!


「怪我を!」

 え?私?私よりライさんのが重症だよ?

 服も破れてたり。頰にも傷はある。

 なのに私の掌の僅かな傷を気にしていた。


「ライさん……私より……」

 ライさんは近寄りポケットからハンカチを出して私の掌を巻いた。


「りぼん…約束を破ってすまない。少し時間がかかった!」

 と私を抱きしめた!!

 ぎゃっ!イケメンに抱きしめられた!!


「むう…少しは良くなったな。でもまだまだだが」

 となんかサワサワ身体を撫でてるし!

 私が痩せてるからか。


「フェリシア!!」

 とダスティン子爵が追いかけてくる声がした!

 不味い!捕まったらまた監禁だ!!

 すると精霊ちゃんが私とライさんを守るように壁になり、一人の精霊ちゃんがにこりと笑うと私とライさんは白い光に包まれてなんと移動した!!


 目を開けると森の中だ。


「こ、これは??精霊の力?やはりりぼんは聖女なんだ!何故いきなり…少し回復したからか?」


「そ、そうなの?」


「いや自分のことだろう!?」

 それにしてもここ凄く空気がいい!

 エネルギーみたいなの感じる。


「ここは一体どこだ!?こんな瘴気に晒されてない綺麗な森があるとは!あ!向こうに泉がある!それに何か大きな木のようなものも!」

 とライさんが指差すと確かにある。


 泉の水はめちゃくちゃ光っている。ソッと手を入れると何と傷が癒えた!!


「ライさん!怪我が治りました!!ライさんもここに入って!!」


「何と…聖なる泉か!?それにあれは世界樹か!?神話レベルだぞ!?」

 とおそるおそる入るライさんも怪我した右脚が癒えて行く。

 私はライさんの頰についた傷も泉の水にハンカチを入れて濡らし絞った。何故か付いていた血も綺麗になっている!凄い!


 ハンカチを傷に当てて癒してあげるといきなり抱きしめられて驚いた!!


「ライさん!!?」


「りぼん!!無事で良かった!」


「ライさんこそ!!こんな怪我までして私の所に!」


「ああ!会ってハッキリしたかった!会って…。りぼんの顔を見たら…何故か嬉しくなったよ!!」

 私はそれに泣きそうになった。


「わ、私も!私も会いたかったです!!会えなかったらもう死んじゃおうかと思ってた!!」


「いや、死ぬな!困るし!」

 と突っ込まれた。それから至近距離で顔を見られ確認された。ていうか近い!カッコいい!鼻血出そう!


 ライさんはほのかに赤くなっている。


「りぼん…俺はどうやら君が好きなようだ」


「えっ!?えっ!!?ええええー!」

 と驚くとえいっとばかりにライさんは私の顔を引き寄せなんとキスした。というかされた。

 触れるだけの優しいキスに胸が張り裂けそうになりこんなの初めてでどうしたらいいかわからない。恋愛経験ゼロだし。

 しかしライさんも唇を離すと


「なるほど…口にするのは初めてだがこれでいいのか?」

 とぼやいていた!ひっ!こんな王子様の初めてのキスが私なんかで申し訳ない!!


「あ…で、でもダスティン子爵が王子と私は身分があって結婚絶対できないって…」


「えっ!いきなり結婚の話か!?いや…ダスティンに何か言われたのか?」


「はぁ…婚約してくれって」


「えぇー…先越された…」


「ついさっきですけどね。返事してませんし」

 と言うとライさんはホッとしたような顔をして微笑んだ。ぎゃあ!そのスマイルいくら課金したらいいの?ってくらい眩しい。


「なら俺と結婚してくれますか?」


「え?します!」

 秒で応えたら


「早っ!!秒でオーケーされたし!!」

 と突っ込まれた。そりゃこんなイケメン王子様に結婚してくれとか言われたら秒で応えるに決まってる!


「そ、そうか…結婚か…」


「あ、でも出来るの?」

 王家とか色々とありそう!


「普通なら許されないが聖女であるりぼんとなら本来は許されるはずだ!」


「でも私は役立たずで王様にも捨てられたし…」


「いや…ここの泉を見つけた。これは傷も癒えたしりぼんがいたから精霊も力を貸した!君は紛れもなく聖女だ!兄上にもダメとは言わせないよ!」

 と手を握られドキドキした。

 そして、ライさんと私は見つめ合いもう一度キスするとあの大きな木の下へと向かった。世界樹とか言っていたけど。

 ラノベとかでなんかよく出てくるよね。それ系の木!


「おお…世界樹だ!神話に出てくる!この世界で発見できるとは!!歴史が動くぞりぼん!!大発見だ!」


「コロンブスが新大陸発見したみたいなかんじかな?」


「なんだ?コロンブスって?」


「とにかくこの世界樹って凄いの?」


「もちろんだ。言い伝えによると世界樹の力を引き出し聖女が世界の穢れを全て払えるとされている。穢れが瘴気のことなら各地にあるあの黒い蜂の巣をどうにかここから一瞬にして消せるかもしれないっ!」

 とライさんは言った!!


「ええ?そんなことが私なんかに出来るの?本当に?」


「出来ると思う!何故なら精霊に愛されてここに連れて来られたのはりぼんだけだろう!?他の聖女はまだここに連れて来られてないということはそういうことだ!!」

 確信を持つようにライさんに言われて成る程と納得したけどどうやったらいいの?

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