第10話 謝肉祭と社交界、そして冬休みへ

休日が終わり、学期末のテストも終わり、後はどう冬休みを過ごそうかと考えている時、父親から手紙が来た。どうも、迎えに来るというよりは用事が有り、そこに弟達以外が一緒に行く予定らしい。弟達は屋敷でお留守番か……羨ましい。


しかし、手紙が届いたという事は早ければ明日、せっかちなら今日、普通の段取りなら明後日位には来るのか。まぁ、手紙には明日以降、4日以内には着くと書いてあるし、のんびり待つか。


手紙が来てから2日後の昼過ぎ、学園の寮に父親が来た。という訳で、兄と一緒に父親を迎え、王都に有る家に向かう、らしい。因みに、兄に仕えている学生は親戚らしい。いわば本家と分家の関係だ。だから一緒に行くのは分かる。しかし、エルも僕と一緒に行くとなると分からない。エルは普通、自分の伯爵家の所に行くのが普通だと思うんだが?というか、エルも僕と一緒に行くと言った時、父親の顔が困った顔になっていたが?まあ、力関係的にも伯爵家、それも国境を任されている辺境伯家だ、いち子爵家に過ぎない私の家では基本的に何も言えない。父親になにやら手紙を渡していたし、私には分からない大人の事情とか関係性とかが有るのだろう。うむ、私は私のしたいことをするために我慢したり、色々頑張ってはいるが、家を継ぐわけでもないし、気にしないでおこう。


そして、屋敷に着くと迎えの父親以外の家族と屋敷に居た人達(使用人とか警備の人)に迎えられ、そこでもエルは浮いていた。というか、腫れ物に触るように、機嫌を損なわないように慎重に扱っている感じか。不思議そうに見ていると、父親に執務室に来るように言われ、荷物を置いて向かうと、エルが来そうだったので、部屋で待っているように言っておく。で、ノックをして執務室に入ると、屋敷に居るか家族達が勢揃いしていた。


「さて、揃ったな。これからの大まかな予定を話す。まず、指示はもう出しているが、辺境伯閣下が明日、エルミス嬢の迎えという形で此方に来て、ほぼ一緒に王城に向かう」

「は?」

「え?」

「はい?」

「はぁ……」


父親の話にそれぞれ困惑して、更にその後の行動予定に若干憂鬱になっていく。大まかな流れとしては、明日、辺境伯閣下達が家に来て挨拶をする。で、軽く歓談してエルを引き取って帰る。翌日、辺境伯閣下達の所に挨拶に向かう。そして、一緒に王城に向かう。勿論、この時は辺境伯家と自分達子爵家は別々の馬車だ。王城には別々のゲートで入り、中で辺境伯閣下達と合流し、控え室に向かう。そして、貴族があらかた揃ったら広間に行き、挨拶回り兼私の顔見せや貴族達の階級や顔を覚える作業が待ってる。宴が始まれば、皆して王族に挨拶に向かう。後はだいたい自由行動。で、宴が終われば屋敷に帰り、翌日には辺境伯家を中心に列を作って自領に帰る。そしてようやく冬休みというわけだ。はっきり言って面倒くさい。


翌日、朝食を食べ終えた後、辺境伯からの先触れが来た。いや、早すぎる。しかも、おもいっきりダッシュして来ました!って感じに汗だくだった。まぁ、ちゃんと会話は出来ていたけど……汗だくなる理由は分かりやすかった。だって、一気に家の中がバタバタして入り口に集合だからね。誰が明日行きますって手紙から朝イチで来るって予想出来るよ……というか、後でエルに聞いたら突発的に行き先を変えたり、先触れとほぼ同時みたいな事も有るらしい。


そして、色々あったというより、あったはずだけど、気がついたら辺境伯閣下の馬車でエルと一緒に辺境伯領に向かっている。王城で社交はあったが、挨拶回りと顔を覚える事やらあったが、退屈だった。しかし、辺境伯閣下に捕まり、街中に連れ出されて、謝肉祭という祭りに連れ回された。しかも、いつの間にか父親に話をつけたのか、冬休みを辺境伯閣下の所で過ごす予定にされていた。


「…どうしてこうなった?」

「疲れたかね?まぁ、君が成人したら、我が領地の騎士になってもらいたい。という思惑もあるが、元々、君のご両親の領地は我が領地からの分轄領というのもある。君のような将来有望そうな者を、ただの狩人にしたくはないのだ。故に、我が家の騎士達と遠征にでも行ってもらいたいのだ」

「はあ。因みに拒否権等は…」

「ない。君のご両親とは話がついているしな。ひとまず、騎士の仕事を見て合わないと思ったら相談して欲しい」

「……分かりました」


 本当にどうしてこうなった?家に帰って、たまに抜け出しては狩りをするだけの楽しい楽しい冬休みはどこへ?騎士の遠征って、たまに家から抜け出して同行したこと有るけども、割りと暇な行軍……いや、辺境伯領は魔物の住みかである森と山が国境になってる武力重視の領だったかな?え?魔物狩りに同行って事かな?

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