第8話 家(寮)に帰るまでが訓練です

さて、拠点に戻ってからは、夕食を食べ終え、明日になれば後は帰るだけとなった。 まぁ、夕食後に小隊長役の兄は明日以降の行動について師団長以下、大隊長達の話し合いの結果を聞きに行ったが、何か変更点でも有るのだろうか?まぁ、行きとは違うルート、大隊事の役割変更位か?有るとしたら。まぁ、末端の者は、上から言われた通りにするだけで楽だがね。しかし、私達以外の同級生達はそんな事もなく、ただの楽しいピクニック感覚だろう……まぁ、山や森歩きに慣れている者限定になるだろうが。


「そういえば、よくエルは僕に着いて来れたね?」

「まぁ、夏休みの間、サイ様のお世話をしたり、よく居なくなるサイ様を捜したり、鍛練もしましたから」

「ふぅん……まぁ、いいや」


まぁ、同じ学園に入学してるのだし、元々能力的にはあったのだろう。あの学園は基本的に文武両道というやつだ。学力だけならその学校に行くし、魔法、武力に関しても専門的な所は有る。


翌日、朝食の後に拠点の片付けをして荷造りし、集合してミーティング……と言っても、小隊長の兄が昨日決まった事を私達小隊員に伝えるだけだが、まさか殿部隊に組み込まれるとは。


「と、言うわけで前方はあまり警戒しなくて良い。その代わり、我が小隊の配置からして、上空と右側面、そして後方の警戒が主な任務だ」

「兄上、警戒しながら狩りに行くのは……ダメですかね?」

「家の領内なら良いが、ここは王族領内であり、一応学園領内でもある。だから、勝手な行動は今回は慎め。まぁ、行きよりは本隊の行軍速度も今日より明日は一気に上がる。誰だって安全な部屋で休みたいからな」

「つまり……ゆっくり行ける後方が良いか、行きよりも素早く偵察しないといけない斥候が良いか……ですか。殿の方がまだ楽そうですね。何もなければ」

「そういう事だ。まぁ、学生部隊は単純にクジで斥候と殿を最初に決めて、帰りはその逆、ってのは決まってた事だけどな。まぁ、話し合いはその中で何処にどの小隊が着くのか?って話さ」


という説明を受け、荷物を持って配置付近で待機し、出発を待つが……暇である。斥候部隊はとっくに出発しているが、本隊の動きは遅く、その分、こちらの出発も遅くなる。なるほど、『最大の脅威は、有能な敵よりも無能な味方である。』というのは間違いなさそうだ。


ようやく本隊が進み、小隊が前進を始めた時には、陽が完全に登っており、夜営地点に着く頃には完全に陽が落ちてると予想出来る。まぁ、灯りは魔法や道具も有るので何とかなるだろう。しかし、本当に夜間設営するのかは分からないから、それを楽しみに大人しく従うとしよう。




夜。もう、すっかり陽が落ち、完全に夜である。しかし、自分達は夜営地点に着いたというのに、本隊も含めて休憩は軽くするが、完全に立ち止まって夜営する様子が見られない。……確か、予定では明後日からは週末だから、2日間の休日……まさか、徹夜で夜間行軍する気か?


「あの、兄上?まさか夜間行軍ですか?」

「気づいたか。まぁ、本隊の方は、騎士達や教師陣、直衛の学生が、お前の同級生達を激励しながら歩かせてるさ」

「小隊に配置されて良かったと、今、初めて思いました」

「ははは。来年は直衛だから励ます側だぞ?まぁ、疲れたら一応、本隊に行けば馬車に乗れるが、リタイア組と弄られる事は有るな。婦女子以外は」

「僕はまだまだ大丈夫ですよ。まぁ、最大なら3日間徹夜なら鍛練した事も有りますから」

「お前は何を目指してるんだ?」

「ちょっと、限界に挑戦したくなりまして」

「まだ子供なんだから夜は寝なさい」

「今、夜間行軍中ですよ?」

「……そういえば、そうだった」


と、周囲を警戒しながらも、軽い会話をしながら行軍していく。ただ、毎年の事だからか、初参加の同級生達に比べ、学生組はもちろん、騎士達や教師陣も緊張感はあまりない。

だが、そんな軽い雰囲気も次第になくなっていき、無言で周囲を警戒しながら行軍していると、次第に東の空が明るくなり、それに伴い、学生組も騎士達も元気を取り戻したように、初参加の同級生達を励ましながら進んで行く。


まぁ、そんな元気も無くなり、昼頃には門の前まで行軍する事は出来た。出来たが……本隊の同級生達や直衛の先輩方は門が見えた段階で隊列を乱し、我先にと駆け出すのが現れて一気に走り抜けた感が有るが……確か学園までが行軍距離であったはずで、門が目の前だというのに、動けなくなっている者も結構居るように思う。

当然ながら、少し休憩という仮眠を取り、門の閉まる時間までには門を超えて学園に入る予定のようだが……何人が仮眠から起きれるか……。


まぁ、結果から言うと門が閉まるギリギリだった。学園に着いて解散となり、寮に帰った時には夜である。いや、私とエル以外の同級生達はもっと早く帰れたのだが、学園側とのちょっとしたお話で遅くなった。しかも、明日は休みだというのに、学園長室で学園側とまだ、話をしないといけなくなるとは……勝手に話し合って、結果だけ伝えるだけで良いだろうに。

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