第5話 野営訓練1
……こんなはずじゃなかった。何故?どうして?訳が分からない。
ちゃんと準備をした。資料から予測した野営地点の場所を下調べやら、軽く周りの生き物の狩りをしたりもした。私達が下調べに来たという痕跡も全て消した。だというのに、何故に私は同級生達から離され、エルと一緒に騎士やら教官達と行動を共にしなければならない!おまけに、私達以外の生徒では、兄上と同じ上級生達ばかり、というか兄上はご学友と行動すべきであって、私達の側に居る必要性は無いですよね?
「で、兄上達はパーティーというか、小隊を組んで軍隊行動なのですよね?何故僕達と?」
「いや、うちの小隊にお前達が入っただけだ。お前の同級生達は……うん、パーティー単位で守られながら行動してるけど、中級冒険者や傭兵よりは動きが悪い。」
「まぁ、それはしょうがありませんよ。歩いて長時間動く事に慣れてないみたいですし。資料を見て、野営訓練に適した服装や道具を揃えてない方も居ましたから」
「まぁ、それでも……最下級生でこっちと同じように動けるのは早々居ない。と、いうよりも、斥候役の騎士達と同じ行動、早さで移動したりしたから、俺達の小隊に組まれたわけだろう?」
「むぅ……。つまり兄上達の小隊が、僕達のお守り役になった。という事ですか」
「そういう事。まぁ、教官達も驚いてこっちに色々聞きに来たよ」
「つまりは……」
「そう。お前が屋敷を抜け出しては狩りをしてたり、屋敷の警備隊やら領軍で、一緒に訓練したり、領内の見回りに参加した事が有るのも話した」
「……たかだか数回程度の話ではないですか」
「少しは自分の年齢を考えて行動しなさい。どこに5歳で軍事行動に参加する子供が居ると?」
「此処に」
「……はぁ」
兄と話ながらも、周囲を警戒し、兄の同級生達や騎士達を観察しつつ、隊列や進行速度を落とさないようにする。
そして、他愛ない話をしながら進み、本日の野営地に着いた。まぁ、野営地と言っても目的地まではまだ少し遠く、林や野原以外何もない道だが、テントや天幕を張り、焚き火の準備や夕飯の材料取りを素早く行い、夕飯の準備をする。
まぁ、本来なら斥候部隊ではなく、本隊の場所で本人、または従者とまとまってやるのだが、私は兄達の斥候小隊に入れられた。なので、行軍中にきちんと役割り分担を決め、私は狩りと偵察、エルはテント設営と焚き火の準備だ。
「……うむ。やはり、お前は私達の小隊と一緒でも全く問題なかったな!」
「……兄上、一応訓練とはいえ、軍事行動中です。あまり大声を出さないで下さい。役割りの取り決めをしなかった場合、私とエルは資料通りに自分達で勝手に行動してますよ?当然、その場合には僕が狩った獲物は僕とエルだけの物です」
「うぐ……。ま、まぁ、結果良ければ全て良しだ。取り決め通りに動いてくれ」
「……良いんですか?エルや淑女方はともかく、僕も夜の見張り番から外すなんて」
「それは当然だ。ある程度軍事行動が出来るといっても、お前はまだまだ子供の体なのだ。子供は夜は寝るのが仕事だぞ?」
「……分かりました」
これである。むしろ、夜の見張り番の時にこっそり抜け出して狩りを楽しもうとしたら、予防線を張られてしまった。おかげで、夜中に狩りに行きづらい。
まぁ、夕飯確保という名の狩りは一応出来たから良いか。人には分かりやすい罠も幾つか仕掛けたし、両手には鳥2羽、兎1羽、リス2匹、蛇1匹。猪や狼、熊、鹿等の中~大獣が見つからなかったのは手痛いが、まぁまぁの収穫だろう。もちろん、捕まえた時に穴を軽く掘って、血抜きをした後に穴を埋めてから狩りを続行し、満足はしてないが一応軍隊行動だ、獲物は獲れたのでキャンプ地に戻る途中で、同じ小隊の上級生の男2人と合流した。
「……お前、マジか?」
「?何がですか?と、いうより野草や木の実はキャンプ設営の淑女達で僕達は狩りでしたよね?」
「デカイのが居なかったんだ。と、いうか、女子達には解体してから見せよう。な?」
「何故です?騎士達は僕と同じように狩って、何が獲れたか仲間に見せて一緒に解体までしてますよ?」
「ぐ……いや、しかし」
「はっはっはっ。お前の負けだよ。大方、解体させて、お肉の一部を自分が狩った獲物にするか、本当に女子達に解体現場を見せたくなかったか。のどちらかだろうが、調理は見張りの2、3人以外は全員だ。しかも、資料では全員が狩り、解体、調理を経験するように、と毎年書いてあるだろうに」
「むぅ……。しかしだな、流石に兎や鳥は分かる。分かるが、リスや蛇はなぁ……」
「美味しいですよ?まぁ、リスの調理は基本的に、コツを掴むまでは力仕事ですから、淑女の方々には少し難しいかもしれませんけど」
「……一応、保存食持って来てるんだよな?」
「持って来てますよ?毎回狩りが上手くいくとは限らないですし。雨天行軍中は、戦闘をする場合も想定して、狩りはしないか控えないとですから」
「なるほど。君がこっちに回された理由が良く分かったよ」
それから、他の狩りに出た人達と合流し、獲れた獲物を見せあったが、どうやら私が一番狩ったらしい。事前に話し合った通り、見張り以外の全員で調理し、皆で夕飯を取って、野営訓練1日目は終わった。
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