第58話 永遠に

   会場が暗転し、音楽が流れ始める。

  ―キャー!!

  客席が浮足立つ。

  ―パンパンパン!

  ステージ上の花火が弾けた。一層歓声が大きくなる。

  ―ワー!!!

  ―キャー!!!

   ワールドツアーに重点を置く年がやってきた。アジア、ヨーロッパ、アフリ 

  カ、アメリカ、南アメリカと、1年をかけて世界中を回るツアーを行うSTE。

   しかし、音楽が始まっているのに、なかなかSTEがステージに姿を現さない。

フェロー:「なんで出て来ないの?」

フェロー:「どうしたの?」

  ―ザワザワザワ


   一方、舞台の裏では。

植木:「そろそろ時間だ。」

  ―キャー!!!

  歓声が聞こえて来た。

流星:「よし、行くぞ!」

メンバー:「おう!」

  STEのメンバー7人は楽屋を出て、階段を下り、また下り、地下通路へ出た。音

  楽が始まる。

篤:「あ、やべえ、もう始まっちまったぞ。」

大樹:「間に合うのか?」

涼:「走るしかない!」

  7人は走り出した。

瑠偉:「速く速く!」

流星:「待ってくれー!」

光輝:「頑張れー、あははは。」

  7人は懸命に、しかし楽しそうに走った。


   前奏が流れ、もう歌が始まる、という時、ひと際パン!と大きな花火が弾け

  た。そして、歌と同時にSTEのメンバーが、前のステージではなく、客席の中央

  からせり上がって来たステージに乗って姿を現した。

フェロー:「キャー!!!」

  ― 目の前にある事が 全て正しいとは限らない

    まだ見ぬ何かが 突然目の前に現れるかもしれない

    信じよう 未来を 信じよう 自分を

    可能性を 

    もう 打つ手がないと思っても

    明日 何があるか分からない

    もう一日 頑張ってみよう

    もう一日 待ってみよう

    予想外な何かが

    明日 やってくるかもしれないから ―


   前面のステージに照明を当て、花火を上げ、それでいて中央の地下からSTEが

  出て来るという演出。

   思考を凝らした演出を、それぞれのステージごとに繰り広げた。今回のツアー

  は「意外性」を重視した。冒頭に歌った「unexpected(アンエクスペクティッ

  ド 予想外)」という歌の世界観を現したのだ。


 流星:「みんな、今日は楽しかった?」

フェロー:「キャー!」

碧央:「僕たちからのメッセージ、受け取ってくれたかな?」

フェロー:「ワー!!」

光輝:「もし、何かに行き詰って、どうしようもないと思った時、このコンサートの

  事を思い出してください。」

瑠偉:「何があっても、生きる事を諦めないで。」


   彼らはこれからも地球を、そしてその上に生きる人々を、ずっと守っていく。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る