第18話 勲章
日本にとどまらず、欧米でもSTEの影響力は大きくなった。マイボトル、つま
り水筒文化は欧米にはほとんどなかったものの、STEのロゴ入りマイボトルが発
売され、コンサート会場でも販売したところ、世界中で売れた。
国連でのスピーチも依頼され、平和を訴え、紛争地域に救いの手を差し伸べて
欲しいと訴えた。STEのコンサートの規模が大きくなったので、チャリティーコ
ンサートに切り替えた。つまり、売り上げの大半を寄付に回すのだ。
さすがにスタッフを増やし、事務所ももう少し大きいところに移した。レッス
ン場は地下ではなく、11階になった。そして、都内在住ではなかったメンバー
から順次、その建物に住むようになった。家にファンが殺到する事態を避けるた
め、最終的には全員が事務所のある建物に住むようになったのだった。
そうして、数年が過ぎた。国内外でいくつもの賞をもらった。外国で勲章まで
もらった。それを受け、日本の総理大臣も息巻いた。
総理大臣:「Save The Earthは素晴らしい!また全米1位を取ったそうじゃないか。
彼らのお陰で二酸化炭素排出量も減っているし、あの子たちは、我が国の宝だな
ぁ。そうだ、彼らを人間国宝に認定したらどうだろうか?」
閣議でそう、総理大臣からの提案があった。
文部科学大臣:「確かにSave The Earthは素晴らしいですが・・・人間国宝はもっと
年を取ってからでないと。」
総理大臣:「なぜだ。あんなに世界中で賞をもらっていて、日本で何も与えないとい
うのは、良くないだろう。」
文部科学大臣:「ですが・・・彼らはまだ若い。若いうちに人間国宝などにして、後
になって、その・・・事件を起こしたりとか、麻薬問題や不倫のような事になっ
たりするとまずいので・・・。人間国宝は、一度認定したら生涯取り消すことが
できませんので。」
副総理大臣:「ああ、だからもうすぐ死にそうな年寄りしか、人間国宝にはなれない
のか。」
総理大臣:「なら、文化勲章を与えるというのはどうかね。」
文部科学大臣:「それにつきましても、70歳以上と決まっておりまして。」
副総理大臣:「確かに、文化勲章をもらうのも、年寄りばかりだな。」
副総理大臣は、完全に自分の年を棚に上げて、ものを言っている。
総理大臣:「だが、お隣韓国では、世界的に活躍しているアイドルグループに文化勲
章を与えたと聞いたぞ。」
総務大臣:「STEのメンバーには、それぞれの出身地が、知事賞を授けたと聞きまし
たが。」
総理大臣:「出身地別だと、個人に授けたのだろう?グループ全体としては何も授け
ていないではないか。オリンピックで金メダルを取った選手には、どうしている
んだっけ?」
総務大臣:「メダリストには、報奨金を出しています。」
総理大臣:「カネか。彼らは受け取らんだろうね。ボランティアばかりしているそう
だから。」
結局、国からは何も出なかった。だが、日本のクリーンエネルギー率が上がり、
ゴミは減り、二酸化炭素排出量も減り、ボランティア活動をする若者が増えた。
STEは、確実に日本を変えて行った。
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