バイカーコン3(街の勢力図)

 ハーレーダビッドソンXL1200R、KTM390デューク、スズキVストローム二五〇、ヤマハXSR900。残念ながら一二五クラスのスクーターはいないが、これが今街中でみる普段使いバイク勢力図かも知れない。いやXSRはレアな方かな? ヤマハならMT系列の方が多いか。どちらも職業柄見慣れているので一般の感覚が既にわからない。

 これがツーリングになるとKTMや小型二種スクーターに替わってBMWやZ900RS(最近はCAFEの方)が増えてくるイメージ。


 ハーレーにヤマハ、二人も大型バイクがいてゆず季ちゃんの事前ミーティングは必要なかったと思う。私たちの父親世代ならまだしも、今時排気量マウントなんて存在しないだろう。外車も国産も価格差もほとんどなく、車ほど見栄を張らなくてもいいのがバイクの良いところじゃないかな。


 ひとまず、カワサキ乗りがいなくて良かった。自分はカワサキ乗りだけど、カワサキ乗り特有の同メーカーだとグイグイくる感じは正直苦手だ。同族嫌悪と言われればその通りと答えるよ。


 ああ、そうそう。肝心の人間の方だけど、私たちは大学で知り合っているから年代が近いけど、相手グループは年式もバラバラで如何にもSNSって感じだ。ただ、ツーリングなどには良く行っているみたいで、お互い気さくに話している。


 お酒も程よく入り、場は大いに盛り上がった。なんせオートバイと言う共通言語があるので話題には事欠かない。

 それにバイトではあるけど一応私だって接客業。孝子に至っては昼はデパガで夜は水商売、まさにプロ中のプロ。これで盛り上がらない訳はない。


 そして蓋を開けてみた結果、一番人気はやはりゆず季ちゃんだった。男性陣の態度を見ているとわかる。孝子はどうも美人過ぎて近寄り難い様子。デパガに就職してからと言うもの美人っぷりに拍車がかかってるというかなんというか、下品な色気だけでなく純粋に綺麗になった。


 ハーレーの彼はゆず季ちゃん狙い、KTMの彼もおそらくゆず季ちゃん狙い。

 わかりにくいのがVストの彼。ゆず季ちゃん狙いっぽいが、アニメ好きらしくユキと意気投合して痛車の話で盛り上がっている。

 XSRの彼、30代も後半に差し掛かっている最年長なので、20代の私が『彼』呼ばわりするのは失礼だけど。彼は特に誰かを狙っていると言った印象はなく、場の空気を楽しんでいる様子。女性陣だと孝子がそんな感じだ。


 さて私は?

①見た目も小綺麗でお洒落なハーレー君。

②オンだかオフだかはっきりして欲しい、KTM君かVストっち。

③やっぱり大人の魅力、がっついていないのがまたいい、XSRさん。


 なんて。三択問題だったらいいのにね。答えは③かな? 本当は学生の時に行った北海道で知り合った熟練バイカー福原おじさんにもう一度会いたいってのが大正解なんだけど。

 会って、自分の中の気持ちを確かめたい。この気持ちは恋なのか憧れなのか。


 宴もたけなわになり(因みにここは品川)満場一致で二次会に突入。もう少ししっかりとお酒を飲める所に行こうってことになり、小洒落たバーに移動した。席の関係で五人は半円状のソファー席、三人はカウンターへと分かれた。XSRさんを私と孝子で挟んで座る。孝子が両手に華と言って茶化す。

 飲み過ぎないうちにXSRの林さんとは連絡先を交換した。


 ……で、ある程度予想はついていたんだけど、私と孝子に挟まれて同じペースで飲んでいた林さんは一時間後に酔い潰れた。

 ソファー席ではいつも通りユキが寝落ちしてて、円満解散となった。


 お店をバタバタと退散することになり、連絡先こそ交換しなかったが、一応全員に私の勤務先だけは伝えておいた。あわよくば今後の営業にも繋がってくれるだろう。


 帰りの電車内。

「ゆず季ちゃん、誘ってくれてありがとう。なかなか楽しめたよ」

「こちらこそ助かりました。がっつり収穫もありましたし」とゆず季ちゃん。三人と連絡先を交換したそうだ。

「ユキはどうだった?」私の肩にもたれ掛かって寝ているユキを一瞥して聞く。

「ユキ姉さんもVストの人と連絡先交換してましたよー。あと次二人で会う約束してたっぽいし」

「以外とやるなユキ。だけど大丈夫かな?」

「え? 何がです?」

「……リバウンド」

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