ニンジャの頃
――大学一年の頃。
思春期の頃は苦手だったバイク乗りってやつにまさか自分がなるとは思っていなかった。
大学の駐輪場にニンジャ二五〇を停める。
うちの大学はオートバイ通学をする人が多いと思う。そりゃあ数で言うならば圧倒的にスクーターのもんだけどさ。こうして駐輪場を利用する度に、へーこんなバイクあるんだっていう新鮮な喜びがあるよ。
私のニンジャとはちょっと違い、全体的に尖ってる箇所はないけど、同じようにフルカウルのバイク。少し前、隣に停めてあった時に近くで見たらタイヤの端っこ辺りがボロボロで青く変色してた。タイヤなんて端まで使ったことないし、こんなになる程使える気がしない。
ネイキッドのでかいバイクも良く見かける。横のカウルに1100って書いてあるから大型バイクだ。父親が乗っていたバイクと比べると、とにかくエンジンの主張が凄い。エンジンカバーとか擦らないのかなこれ?
そして自分のバイクを改めて見る。
父はカワサキ党だが、私も結局そうなりそうな予感がする。
購入時から割れているサイドカウルを腕を組んで眺める。
うーむむ。まあ、まだ立ちゴケやら何やらやらかすだろうしなぁ。いつかお金が出来て、腕も上達したら交換したいね。
その為にはバイトも探さないと。
と、そんな事を考えているといつのまにか、私の隣に同じ大学の男子が同じ様に腕組みした姿勢で立っていた。
「うぉっ!」
「あ、すまん。これ、割れ止めしとかないとさらに割れてくべ」と言い残して歩き去っていく。
「ちょっと、割れ止めって?」
「あぁ」と言って引き返して私のバイクの
カウルのヒビの割れ始めの部分にドリルや、無ければプラスドライバーなんかでこじって穴を開けて置くと、とりあえずはバイクの振動でヒビが広がっていくのを防げるらしい。つまりやっておかないと最後まで割れてしまうことがあるかもってことだ。
他にもホチキスのようなもので止める方法や、プラスチックを溶接みたいにくっつける方法など、いくつか教えてくれた後、例のでかいネイキッドに乗り、左手を上げて帰って行った。
一見無愛想だが、バイクの事になると饒舌。
これが後々、私が入部する事になるバイクサークルの部長(この時はまだ一年生なので部員)、久地宗則との出会いだった
―K20―
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