ガールズ ァンド バイクス

笹岡悠起

Rabbit & Turtle Side KYO

 就職活動に失敗した私。

 近所のバイク用品店でアルバイトをしながら、本当にやりたい仕事ってなんだろうと夢を探す日々。


 春先、学生時代に顔を出していたバイクサークルの後輩から平日開催のプチツーリングのお誘いを受けた。

 土日は稼ぎどきの接客バイトだが平日ならばモーマンタイ! 私は二つ返事でOKの連絡をする。


 私以外のOB枠参加は、やはり平日休みのデバガ、走り屋気質の同期、岡瀬孝子。

 そしてもう一人。厳密に言えば部外者なんだけど、孝子の幼馴染、沢田ゆず季。こちらもやはり走り屋。

 

 現役の参加者は、部長のトマト。コレはもちろんあだ名で本名は龍ヶ崎飛鳥。龍ヶ崎の名産がトマトだからと中学時代につけられたとか。バイクは広く浅く楽しみたい男。

 元々はトマトの同期だけど、一年生を二回経験している学校大好き男、水木国光。名前が水戸黄門みたいだから、ご隠居と呼ばれている。モタードでドリドリ走る系の走り屋。孝子とお揃いの袖切りトレーナーを着ている。

 二年生、この中では最年少の辛島陽。硬派でオールディーズなバイク乗り。今日は仕事で来れなかった私の同期、毛利洋子の彼氏。


 総勢六名。ツーリングってよりは少し多めな人数で走りに来た感じ。

 ん? つまりそれがツーリングなのか?

 しかし男女3×3って、峠(合)コンかよ……。


 因みに、今年はまだバイクサークルに新入生は入ってきていないらしい。

 本来なら早くてゴールデンウィーク、遅くて梅雨明けの頃に新歓ツーリングってところだけど、トマトがゆず季ちゃんに急かされて渋々走りメインのツーリングを開催させられた運び。

 理由はどうあれ、卒業後もこうして声をかけてもらえてありがたい限りだ。


 最近は孝子がいなくても暇なときにサークルに顔を出しているという社会人ゆず季ちゃん。実は本当は男漁りが目的なんじゃないのかと思う。トマトが目を付けられやしないかとか心配だ。


 そんなことを憂う私は別にトマトと付き合っている訳ではない。ただ一度か二度くらいそういう身体を重ねた事があっただけだ。ゆず季ちゃんと姉妹ってのもなんだかね。


 まぁそんな私の(恋?)話は今日はいいよね。なんせ今回の主役は孝子とゆず季ちゃん。

 幼馴染の二人の真の目的は、我がバイクサークル伝統の勝負方法『抜かずについていけたらドロー、引き離されたら負け』って言うバイク追いかけっこで白黒つけること。


 と言ってもゆず季ちゃんは孝子に勝てた試しが無いので、ゆず季ちゃんの一方的なリベンジマッチ。


 大学の駐輪場を出発して小一時間程走り本日の目的地のしとどの窟に着いた私たちは、いつも通り流したり一服したりしながら過ごした。

 孝子とゆず季ちゃんとご隠居以外は駄弁り時間の方が長い。


 孝子達走り屋チームが二〜三本椿ラインを往復して休憩を終えた頃、平日を狙ったにも関わらず思いの外バイクが増えてきたので、伊豆スカイラインに移動することにした。


 さて、二人の勝負だけど。

 しとどの窟で見ていた分には、二人とも互角の勝負。安全マージンを取っているのでテールトゥノーズとまでは行かないが、どちらが先行していても特に引き離している感じはなかった。

 伊豆スカに移動した後、二人は連れ立って流している感じで、特にゆず季ちゃんはライディングが柔らかくなったような、迫力は無くなったけど速度は変わらない、そんな余裕の感じられるライディングに変わっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る