神様のハナシ
三冬 はぜ
第1話 神様のハナシ①
はじめまして、突然ではございますが「公園の神様」なんです。わたし。
まぁ、皆さん公園の神様ときいてもピンとこないでしょう。
「トイレの神様の親戚ですか?」「プライド高いホームレスの別称ですか?」
こんなことを思った貴方! 失礼ですよ。
変な誤解を受けたくないので、少しだけ私の仕事についてご紹介させていただきます。
私の仕事はいたってシンプルです。ここ「夕やけ公園」を見守ることです。
ただ誤解しないで下さいよ、「公園の守り神」みたいに大層なもんじゃありませんから。ただ人間たちを観察しているだけです。
それにしても公園には実にいろんな人がいましてね、滑り台を逆走しようとしている短パン少年とか、夜にベンチで抱き合う男女とか、もう色々です。退屈する日なんて1日もないんです。
あぁそういえばこの前も面白い人間がいたんですよ、今日はその話をするとしましょう。
この人間は恥ずかしがり屋なんでしょうね、先程から砂場で遊ぶ独りの少年のことをじっと眺めています。公園近くの木に隠れているのも、話しかけるタイミングを見計らってのことでしょうから。
でも話しかけなくては始まりませんよ。
おっ、ついに話しかけるんですね。
あぁ失敗、タイミングは重要ですよね。
それから3回、挑戦したようですがどれも失敗に終わったようです。恥ずかしがり屋の人間は人見知りでもあるようです。
う~ん、ちょっと長くなりそうなので私は少し寝ますね。おやすみなさい。
1時間ほど眠ったでしょうか、目が覚めるともう日が沈みかけていて、夕やけ公園らしい綺麗な夕日が公園を照らしています。
なにか変化はあったかな。
おっ、どうやら私は良いところで目が覚めたみたいです。
今、急展開を迎えているのに砂場の少年は未だに砂遊びに夢中で、歩いてくる大人の足音に気づいていないようです。
その足音はどんどん近づいて、
あれ? いきなり腕を掴むんですか? 強引な気もしますが、もう少し見ていましょう。
あっという間に、砂場の少年はすでに公園の出口まで引きずられています。なにやら泣いているようですが、いったい何に泣いているのでしょう。私には分かりません。
そして公園には誰もいなくなりました。
あの少年はどうなったのでしょうか、
私は遠ざかる2人の声に耳をすませます。
「優太、いい加減おうちに帰るわよ」 「まだ遊びたいよママ」
親子2人はどんどん遠ざかります。
未だ木に隠れた人間に気づきもしないで。
今日も夕やけ公園は静かで平和です。
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