第33話 改めて…作戦会議!


「君の計画を、俺にも手伝わせてくれ。君の道を、俺にも使わせてほしい。」

「でも…。」



気持ちは嬉しい。本当は今すぐにでも「ありがとうございます」と言ってしまいたい。でもすぐに返事が出来るほど簡単な話ではないという事は、バカなことばかり考えている私にもわかる。



「もしルミエラスで内戦が起きたとしたら…。」



するとまだ渋っている私の言葉を、また王様が止めた。今日はことごとく驚かされる日だなと思った。



「君は俺に、何という?」



もしルミエラスで内戦が起きたとして、ルミエラスがリオレッドと同じ状況になったとして。私は彼になんとアドバイスをするんだろう。自分で想像してみたけど、答えが浮かんでこなかった。



「君は俺にアドバイスをすると思うんだ。恩を売れと。」



するとそんな私を見て、王様が代わりに答えを言ってくれた。確かに自分なら言いかねないなと思った。



「その恩はいつか返ってきますよという君を想像できる。違うかい?」

「確かに、そうかもしれません。」



否定が出来なかった。

確かにその時になってみないとわからないけど、私ならそう言ってしまうかもしれないと思ったら笑ってしまった。すると王様も同じように、楽しそうな顔をして笑っていた。


「君は多分リオレッドのことだから自分のわがままだって思っていると思うが、それは違うよ。」



確かに私は今回、自分でも分かるくらい自分を見失っている。

大事な人を国において、一人で突っ走ってしまうくらいには、見失っている。



「未来のことを考えれば、リオレッドやマージニア様を支持した方がテムライムのためになると俺が考えたんだ。君の国だからじゃない。客観的な視点で、王として考えた答えだ。」



でも例えば今回のことがルミエラスで起こったとしても、私は今と同じことをするのかもしれない。もう少し冷静に動けてはいるんだろうけど、結果的にそういうアドバイスを、王様にしていたのかもしれない。



そう言われてみると、すごくしっくり来ている自分がいた。



「そのために、リアの知恵をかりるんだ。いつもと、同じことなんだよ。」



いつもと、同じこと。


それは取り乱していると、私が見失いがちなことだ。前はエバンさんに言われて、思い出した。今回は王様にそう言ってもらえて、やっと心の底から冷静になっていく感じがした。



「ありがとう、ございます。」



観念した私は、やっとお礼の言葉を口にした。すると王様はにっこり笑って、なぜか「やった」と言った。



「口で君に初めて勝った気がするよ。」



今のって勝ち負けがあったことなのか?って思った。でも王様が少年みたいな顔で笑うから、「完敗です」と言っておいた。



「よし。それでは改めて計画を練り直そうか。」

「はい。」



私たちは改めて、広げていた地図に目を通した。そしてさっきみんなに説明したことを、王様にも説明しなおすことにした。



「まず計画通り、私達はこのルートで"密輸"をします。あと、正規ルートでの"密輸"に関しては、国としてサポートいただけますでしょうか。」

「ああ。任せてくれ。」



テムライムの港からレルディアの港までの密輸に関して、なんとかなると意気込んでいた私だけど、もし王様に言わずに税関で引っかかれば終わりだと思っていた。でも王様にもそれを"容認"してもらう事でますます物資を届けやすくなるなと思うと、すごく嬉しくなった。



「難民の受け入れですが…。表明した後のあちらの動き次第ですね。」




難民の受け入れに関しては、王が受け入れを表明した後あのクソがどう動くのかで慎重に見極める必要がある。マージニア様を支持すると言ったテムライムに恩を売りたくないというのか、いらないから持って行けくらいのことを言うかで、その人たちをどういうルートで"運ぶ"のか、後々決めようと考えた。



「そうだな。それはこちらの意思を表明した後、また改めて相談することにしよう。」



私の言わんとすることを理解したらしい王様は、うなずきながら言った。こんなに話がスムーズに進むのであれば、最初から相談しておけばよかったかなとすら思った。



「表明をすることを、大臣たちにも伝えなければならない。明日にでも会議を開こうと思っているが、リアはいかない方がいいと思う。」



すると王様は、少し言いづらそうに言った。



「君が行けば、きっと"母国のために"と言う輩が出てくるだろう。さっき言った通り、これはあくまでもテムライムの未来のためなんだってことを理解してもらうためにも、今回は…。」

「わかりました。私もそう思います。」



王様が言いづらそうにする必要なんて何もない。

多分私が行けばオルドリッジあたりが反抗してくることくらい目に見えているし、そもそも私は大臣でも何でもない。だから食い気味でそういうと、王様はにっこり笑って「ありがとう」と言った。



「任せてくれ。何も心配することはない。」



そしてとても力強いセリフを言ってくれた。どこかでずっと心配している私にとって、これ以上ないほど安心できるセリフだった。



「はい。信じています。」



だから私も力強く答えた。テムライムの未来はとても明るいなって思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る