第29話 ただいま、私の愛する人たち


「マーーーーーマーーーー!!!!!!」



それから1日走り続けて、やっと家が見えてきた。

すると庭で遊んでいた子どもたちは遠目から私を見つけたらしく、大きな声で私を呼びながら全力で走ってきた。



「ただいまーーーーー!!」


私は大声で叫んで、大きく手を振った。

そしてエバンさんにウマから降ろしてもらって、両手を広げて子どもたちを迎えた。



「ママッッ!!!」

「みんなっ、ごめんね…っ!」



寂しい想いをさせて、本当にごめん。本当に、ごめんね。

力をこめて抱きしめて、会えなかった分を取り戻そうとした。するとカイが「痛いよ」と言って、私から離れた。



「ママ!後ろ向いて!」



そして元気よく言った。私は元気よく「うん」と言ってうなずいて、その場で後ろを振り返った。



「やっぱ見えないよね。」

「うん、見えない。」

「ないーーーー!」



みんな私の背中を触りながら、どうして見えないんだって話していた。その姿がとても微笑ましくて、私もエバンさんも笑ってしまった。



「パパには見えるの?」



すると笑っているエバンさんに、カイが聞いた。エバンさんはにっこりと笑って、「ああ」と言った。



「見えるよ。大きくてキレイな羽がね。」

「えーーー!ずるい!」



みんなエバンさんをうらやましそうな目で見た。

でもエバンさんは少し困った顔をして、「でもね」と言った。



「パパはこの羽を取っちゃいたいんだよね。ママが心配で。」

「ダーーーメーーー!」



困った顔のまま言うエバンさんに、カイが言った。

カイに続くようにして、ケンもルナも「ダメ~!」と言ってエバンさんに舌を見せた。



「カイに見えるまで頑張るって、ママ言ったもん。ねー?」

「うん。そうね。」



必死でそう伝えてくれるカイが可愛くて、私はカイを撫でた。すると少しお兄さんになったカイは恥ずかしそうな顔をしながら、「くすぐったいよ」と言った。



「リア。」



するとその時、後ろからラルフさんとレイラさんがやってきた。私は急いで立ち上がって、礼の姿勢を取った。



「ただいま、帰りました。」



そして丁寧に言った。

2人がいなきゃ、私は何もできなかった。本当はこんな嫁、とっくの昔に捨てられていて当然だ。



「おかえり。約束を守ってくれてありがとう。」

「待ってたわ。」



それなのに二人は、今日も暖かく出迎えてくれる。

"待っていた"と言ってくれる。


本当に全部奇跡みたいなことだって思って、しばらく礼の姿勢を崩せなかった。



「とりあえず家に入ろう。」

「うん。シャワーしたい。」



この1週間、水浴びみたいなことしか出来ていない私は、今すぐにでもあの感動的なシャワーに当たりたかった。素直にそう言うとエバンさんはちょっと困った顔で、「もう」と言った。



「とりあえず今日は休んで、明日…」

「いいえ。」



エバンさんは私の体を気遣って、報告は明日にと言おうとしたと思う。でも私は彼が何か言い終わる前に、それを否定した。



「シャワーを浴びたらすぐ、報告させてください。」



本当はシャワーなんて浴びずに報告したいくらいだ。

でもちょっとはさっぱりした方が、頭の整理も出来ているかもしれないって思ったし、その方がエバンさんは少しは安心するのではないかって思った。



「でも…。」



すると案の定、エバンさんはとても心配そうな顔で言った。

私はその言葉も、首を振って否定した。



「疲れてるけど、大丈夫。1分でも早く、伝えたいの。」



1分でも早く、私が見てきたことを伝えたい。そして1分でも早く、動き始めたい。


こんな頭でいたら疲れていても寝れるはずがないと思って、私はまっすぐエバンさんを見て言った。するとエバンさんはまたため息をついた後、「わかったから」と言った。



「それでは準備ができたら部屋まで来てくれ。」



空気を呼んでくれたラルフさんが言ってくれた。私は大きくうなずいて、「はい」とはっきり返事をした。



無事に帰ってこれたことは本当に良かった。

リオレッドの現状を知ることが出来たから、色んな人に迷惑をかけても行ってよかった。


でも、問題は山積みだ。


良かったで終われればいいけど、そういうわけにいかないから苦しい。私はどうやって二人に報告をしようか考えながら、子どもたちと手をつないで家に入った。

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