第27話 ごめんなさい
私の目もしっかりエバンさんの顔までとらえ始めると、あちらも私を見てゆっくり立ち上がった。
怖い、怖すぎる。
見たこともないくらい怖い雰囲気をまとっているエバンさんは、まるで別人みたいに見えた。私は恐怖で思わずクラドさんの後ろに隠れながら、一生到着しないでほしいと願った。
「リアっっ!!!!!!!」
船が海岸に着くころ、エバンさんは大声で叫んだ。私は体をビクッと揺らしながら、クラドさんの腕をつかんで小さな声で「助けて」と言った。
「はい。」
クラドさんは私がつかんでいる自分の腕を前に出した。すると私の体は自然と、クラドさんの前に出た。
「ちょっと!」
裏切られたと思って、クラドさんをにらんだ。すると彼はいたずらそうに笑って、「もう俺は必要ないだろ」と言った。
「リアっ!!!」
エバンさんはまた私の呼んで、手を無理やり引いて船から降ろした。私は彼の目が見られなくて、ジッと下をうつむいた。
「あの…っ。」
何とか言い訳をしようとした。
さっきまで何度も頭の中でシュミレーションをしたはずなのに、いざ彼を目の前にすると言葉が全く出てこなかった。
「君は…っ!」
すると先に言葉を発したのはエバンさんだった。彼は聞いたこともない鋭い声で言った後、懐をがさがさと漁った。
「なんなんだ!?この手紙は!!」
そしてくしゃくしゃになった紙を私の前に差し出した。恐る恐る顔を上げると、それは私が書いた手紙に見えた。
「黙って飛び出して、いなくなって…!その上もし何かあったら捨ててくれ?!?」
「ご、ごめ…んなさい…。」
あまりの剣幕に、思わず足を一歩後ろに引いてしまった。
すると彼は今度は私の両肩を持って、「それに!」と叫んだ。
「父さんには報告して、僕に何も言わないなんて!!あんまりだ!!!勝手すぎる!!」
「はい…。」
その通りです。
「僕がどれだけ心配したか分かってるのか?!?最後に僕が見たのは、君が弱ってる姿だったんだよ?!?」
確かにそうだ。
私はもう消えたくなるくらいに病んでたから、エバンさんが最後に見たのは私のそういう姿だった。
「ご、ご…っ。」
とりあえず謝ろうと思った。謝るしか出来ることがないから、ちゃんと目を見て心から謝ろうと思った。目を合わそうとやっとそこでエバンさんを見上げると、彼は怒っているのか泣いているのか分からない顔で、こちらを見ていた。
「リア…、僕はもう…っ!!!」
そしてその顔のまま、そう言った。
僕はもう…。リアが嫌い?
そう言われてもおかしくないくらいのことを、私はしてしまった。
謝ってももう手遅れか。私は自分の目で今のリオレッドの状況を確かめなきゃいけないという自分の欲望を満たすために、エバンさんを失うのか。
嫌だ、絶対に嫌だ。でももう、仕方ない…。
「エバンさん、私…。」
もう出て行くとまでいおうと思った。すると言葉を発しようとしたその瞬間、エバンさんは勢いよく私を抱きしめた。
「会えないのかと、思った。」
そして折れそうになるくらい力強く抱きしめて、消えそうな声で言った。
こんな想いにさせてしまった後悔と、無事に帰ってこれたことへの安ど感からか、涙があふれ出した。
「無事に帰ってきてくれて、よかった…っ。」
「ごめんなさい、本当に。ごめんね。ごめんなさい…っ。」
そこからは何度も何度も謝った。
エバンさんは絶対に「いいよ」とは言わなかったから許してくれてはないみたいだけど、それでも何度も「会いたかった」と言って泣いてくれた。
私たちはみんなに見られていることも忘れて、しばらくそのまま泣き続けた。後ろの方で「ひゅ~っ」とレイヤさんが言っている声が聞こえたけど、それもあまり気にならないくらい、胸がいっぱいに満たされていた。
「次があるとは絶対に思いたくないけど、次は絶対に相談して。絶対に。」
「はい…。」
よく考えてみれば、私はエバンさんに、私がジルにぃにされたことと同じことをしていたと気が付いた。そりゃ怒られても仕方ないし、許されなくても仕方ないと思って、素直に反省をした。
「じゃないと僕は軍を動かすからね。」
「えっと…っ。みなさんも、ごめんなさい。」
多分彼の言う事は本気だ。
それにエバンさんと一緒に団員の人も来てくれているんだから、この人たちにも迷惑をかけた。私が小さく頭を下げると、彼らは慌てて「やめてくださいっ」と言った。
「ケガは?ないんだよね?ご飯食べてる?寝られてたの?それに…」
「エバンさん。」
ストッパーが外れたかのように、エバンさんは私の全身を見ながら心配をし始めた。いつのも調子に戻ってくれたことが少し嬉しくて、私はいつも通り彼の名前をよんだ。
「お家、帰りたい。」
さっきまで帰りたくないと言っていたのに、彼に会った瞬間、早く帰って子どもたちを抱きしめたくなった。するとエバンさんは私の言葉を聞いて、「そうだね」と言ってやっと笑ってくれた。
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