第36話 他国のお城にレッツゴー!


「じゃ、参りましょう。」

「はい。」


そして次の朝。

私たちはロッタさんが手配してくれた馬車リゼルに乗り込んで、王城へと向かった。



「はぁ。大丈夫かな。」

「大丈夫だよ。お互いにとっていい提案をするのだから。」



パパは全く緊張もしていない様子でそう言って、にっこり笑った。どうしてこうも肝が据わっているのかと、娘でありながら不思議に思う。



「リア。」

「ん?」


誰に何と言われようと緊張してしまっている私を、パパは優しく呼んだ。それに反応してパパの方をみると、やっぱりパパは緊張なんてしてない様子で、でもすこし悲しそうな顔をしていた。



「思ったより長くなってしまって…。ごめんな。」

「パパが謝ることじゃないよ。それに私が余計なこといって長引かせたんだから。」

「余計なことなんて何もないよ。リアはパパじゃ見つけられなかったことを見つけてくれたんだから。」



私たちってほんとラブラブだと思う。

いつか来るのかもと思ったはずなのに私には一向に反抗期も来なかったし、なんならどんどんパパのことが好きになっている気がする。

あと数十年早く転生していたら、私は本当にパパと結婚していたのかもしれない。



「私、パパと結婚したかったな。」

「ハハハッ。嬉しいけどパパはママが大好きだからそれはダメだよ。」

「ごちそうさまで~す。」



でもそもそもパパとママがいなければ私が二人の娘に生まれることもなかったんだから、そんな未来はなかったのか。



「まただ…。」


王城が近づくにつれて高まっていく緊張に合わせて、また意味の分からないことを考えてしまっていた。

今まで考えるだけ考えてパパやじぃじに大事なところを任せてきたけど、今回はそういうわけにはいかない。別のことを考えている場合じゃないよって自分に言い聞かせて、どんどん大きく見えてきた王城を眺めながら、もう一度気合を入れなおした。





「うわぁ、大きい。」


リオレッドのお城だって十分大きいんだけど、テムライム城の扉はそれよりも大きく見えた。その上華やかな加工もされていて美しいことに感動していると、馬車リゼルが到着するのに合わせてその扉がゆっくりと開いた。



「自動ドアじゃないんだから…。」

「リア?どうした?」

「ううん。キレイなお城だなって思って。」



リオレッドのお城はグレーの石みたいなもので作られていて、どちらかというとシンプルな造りだ。でもテムライムは全体的にカラフルに作られていて、その違いが面白くて感動しているっていうのは本当の話だ。


もしこの世にSNSなんてものが存在するんだとしたら、ここは"映えスポット"になるに違いない。ここの写真をとってSNSにあげてる人なんていないんだから、インフルエンサーになれること間違いなしだな。



「それでは、もうすぐ到着いたします。」

「かしこまりました。」



おいおい、リアさんよ。

余計なこと考えるなって言ったじゃ~ん。



自分で自分にツッコミを入れているうちに、馬車リゼルは城の入り口のすぐ下まで到着した。私たちは言われるがままに馬車リゼルをおりて、ロッタさんや役人の人たちの後をついてその門をくぐった。



「お待ちしておりました。」



するとお城の中では、あの宰相さんが待っていてくれた。私たちは次々に挨拶をして、パパが「お時間いただきありがとうございます」と一言付け足してくれた。



「いえ。王も王妃も楽しみにしておられました。では、こちらへ。」



宰相さんがそう言うと、案内役の人が中へと通してくれた。外もカラフルだったけど、テムライム城は中の作りも華やかでとてもカラフルだった。そう言えばすごく明かるい国民が多いのも、もしかすると国民性なのかもな。



「こちらで王がお待ちです。」

「はい。ありがとうございます。」



宰相さんはそう言った後、「失礼します!」と大きな声を出した。

その声でやっと「余計なこと考えんじゃない!」と気合を入れなおした私は、しっかりとお嬢様モードを作ったはずだった。でも次の瞬間にはやっぱりドアがすごく鮮やかでキレイだなと、また別のことを考え始めていた。

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