第38話 いや、高級ディナー期待はずれすぎますけど…
何が出てくるんだとしばらくドキドキしながら待っていると、これまたドラマとか映画でしか見たことのない、銀の蓋みたいなものがしてある料理が目の前に置かれた。
毎日ママとかメイサの美味しい料理が食べられているから文句はないんだけど、今日はもしかしたらミディアムレアとかのステーキが食べられるかもと、期待で胸を膨らませた。
使用人の人が私の前にも料理を置いてくれて、その人が銀の蓋を開けてくれた。するとそこには見たこともない蛍光色みたいな色をした野菜のようなもので作られた、サラダが乗っていた。
――――くっっそまずそう…っ!!!!
期待に胸を膨らませていたはずの私の食欲は、一瞬にしてどこかに消え去った。でもパパやママは目を輝かせてそれを見ていて、カルカロフ家の皆さんも満足げな顔をしてフォークを取った。
「リア、好き嫌いすんなよ!」
「う、うん…。」
いや、もともと好き嫌いなんてないんだけどさ。
これはさすがに色が…どう見てもまずいじゃん…
「どうぞ。」
ためらう私とは反対に、ゾルドおじさんの言葉を聞いた後みんなおいしそうにサラダを食べ始めた。しばらく食べたくなさ過ぎて固まってみたけど、そのうちゾルドおじさんが私をジッと見ている気配を感じ始めて、私は仕方なく、フォークで黄緑に光っているレタスみたいなものをさした。
交通整備員の人が来てるベストみたいな色…。
みれば見るほどまずそうで、食欲の減退がすごかった。でもこれ以上手を止めているとおじさんにツッコまれそうだと思った私は、思い切ってそれを口に入れてみた。
「美味しい…。」
いや、味はすごくおいしい。
ただの野菜のはずなのに野菜自体の味も甘味があってみずみずしくて、かかっている柑橘系みたいな味のする爽やかなドレッシングも、非常に美味だ。
でもさ、人の印象の8割って見た目で決まるって、よく言うじゃん?
多分食べ物に関してもそれはおなじことで、美味しくてたまらないはずなのに、なんとなく食がすすまない。
「リア、美味しい?」
ためらいながらも少しずつ食べ進めていると、ジルにぃはにっこり笑って聞いた。私は無理にでも笑顔を作って「うん!」と元気に答えた。
すこしずつ食べ進めていると、他の人は私より先にぺろりとサラダを食べ終えていた。隣に座っているメイサのところには次の料理が運ばれてきて、私はそれを慎重に覗いてみた。
「なに…それ?」
そのお皿に乗っていたのは、これまた見たことのない蛍光のピンク色をした魚のソテーだった。私も熱帯魚とかそういうのは見たことがあるから色のある魚にはそこまで違和感がないはずなんだけど、その魚はソテーなのに色があった。
全然そそらない。
「ゴードンが輸入を始めたテムライムの魚だ。」
「さっそく取り入れていただいて…ありがとうございます。」
「こちらこそありがとうございます。すごくおいしいので、弟がよくリクエストしてるんです。」
おい、パッパ。
なんてもの輸入してくれてんだよ。
私は苦笑いをしながら、やっとでサラダを食べ終わった。それを見て使用人が同じようにピンク色の魚を目の前に置いて、「どうぞ」と言った。
ああ、もう最悪だ。
さっきから私が食べる様子をおじさんはずっと見てる。視線を感じているからちゃんと食べないといけないし、元気に一杯食べるキャラをずっと演じているから、残したりしたらママもパパも心配する…。
「う、うわぁ。美味しい…。」
やっぱり味はすごくおいしい。
前世で言う白身魚のあっさりとした味に、塩コショウみたいなものでキレのある味付けがされている。臭みも全く感じないし、とにかく美味しい。
でもやっぱり、食欲は全くわかない…。
「最近ノールの方で暴動がおこったとお伺いしましたが…。」
「うん。ゴードンたちが整備してくれたとはいえ、まだあちらには物も人も少ない。そのせいで王都への反発もひどくてな。」
食事をしながらパパとゾルドおじさんは難しい話をしていた。ジルにぃもたまにその話に入りながら食事を楽しんでいて、私はそれをいいことに、目をつぶって一生懸命ご飯をかきこんだ。
「お前、食いしん坊だな!」
すると私の様子を見て、アルが笑って言った。
このクソガキの目には私が食いしん坊にうつったのか。
だとしたら結果オーライだって思ってアルに始めて感謝した。するとその時私の元に使用人さんが次の料理を運んできてくれた。その皿に乗っていたのは、ネズミ位のサイズで顔が爬虫類みたいになっている生物の、丸焼きだった。
「うそでしょ…。」
「おいリア!その
おい、クソガキ。
名前も含めてなんて生物取ってきてくれてんだ。っざけんなよ。
さっきまでの感謝を、私はその一言で撤回した。
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