第15話 運送業者を立ち上げさせます!
「ここがパパのお仕事するところ?」
「そうだよ。大きいだろ。」
ワッフルのお礼を言ってお店を去ってすぐ、パパの会社とやらに到着した。
そこは会社っていうより倉庫みたいな大きさの場所で、レンガみたいなもので出来ていた。横浜の倉庫が、少し懐かしくなった。
「ゴードン様、わたくし先に買い物に行ってきてもよろしいでしょうか。」
「ああ、もちろん。」
「ありがとうございます。行ってまいります。」
目的地に私たちが到着したのを見届けて、メイサは一人で買い物に行ってしまった。初めていく場所に行くんだから本当はメイサにいてほしかったけど、わがままばかり言ってられない。私はパパの手をギュっと握り直して、手を引かれるがまま倉庫の中に足を踏み入れた。
「みんな、お疲れさん。」
「ゴードンさん!お疲れ様です。」
パパが倉庫に入ると、中にいた人たちがみんな挨拶をした。倉庫の中にはたくさんのカゴに入った荷物といくつかの机があって、奥の方には10頭程度の
これだけ文明が発達していないのならどれほど質素な場所なんだろうと思ったけど、想像したよりそこはちゃんと倉庫だった。中にいる人たちは地図を見ながらせわしなく動いていて、その光景はまさに前世で言う"運送会社"の光景だった。
――――いやでもパパの仕事って、商人じゃん。
パパは物を買って売って運ぶとこまで全部やってるんだから、そりゃ忙しいに決まっている。運送が少しは簡単になったとはいえ、これではまだまだ忙しいのが解消されそうにない。
最初はむしろ、効率がいいのではないかと考えた。
現代で仕事をしていた時は、船会社・通関業者・運送業者・商社、そして小売りと多岐にわたる業者の種類があって、一つ商品を輸入すると言ってもたくさんの業者を経る必要があった。
それを一社で出来るんだとしたら、運搬のスピードも速くなるし、価格も下がるのではないか。
確かにそれはそうだ。手をかける業者はどれだけでも少ない方がいい。
その考えに変わりはないんだけど、でもこの状態ではどう考えても、効率がよくなる方法が見えなかった。
っていうことは…。
運送会社を、作るしかないな。
パパがいい商品を仕入れることに集中するためには、運送業者を立ち上げるしかないと思った。せめて運送に関しては別の人が手掛ける事で、きっと負担はもっと少なくなるはずだし、システムも円滑に進むようになるに違いない。
「リア、どうした?」
「ううん、なんでもない!大きくてびっくりしてたの!」
考え込んでいる私を心配して、パパが私の顔を覗き込んだ。色々と考えなくてはいけないことは確かだけど、子供らしい振る舞いも忘れずにしなくては。
そう思いなおした私はパパに挨拶をしてくれる人たちに「初めまして」とあいさつをしながら、ファンサービスをし続けた。
「ゴードン、ちょっといいかな。」
パパが一通り私をみんなに紹介した後、パパと同じくらいの年のおじさんが話しかけてきた。この人はイーサンさん。パパの昔からの仕事仲間で、何度か家に遊びに来たこともある。
「パパ、リアここに座ってるから、お仕事してもいいよ!」
子供にしては気を使え過ぎるかなと思ったけど、パパはにっこり笑って「ありがとう」と言った。そしてすぐイーサンさんの席の方に向かって、地図の確認をし始めた。
「そうだな、このルートの方が安全だ。」
「あと、こっちなんだけど…。」
会話を盗み聞ぎしていると、イーサンさんはここで運送の計画を中心にしているような印象だった。そして私はその会話を聞いて決めた。
――――この人を、運送業者の社長にしよう。
観察していると、この人もパパと同じようにすごく人望があるみたいだった。それにパパとは共同経営者みたいな立場で、人に指示を出している。
適任はこの人だ。
会社を見てみたことで、私の次の目標が明確に定まった。
私、パパとイーサンのおじさんに運送業者を立ち上げさせます!
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