四歳 陸路の運送を整備

第12話  いよいよ馬車を作らせます!


そんなこんなで私、4歳になりました!


あれからパパは言った通り王都の人たちにウマスズメが危険な生き物じゃないって伝えに行ってくれて、最初はあまり受け入れられなかったみたいだけど、1年くらいしてやっと、新しい移動方法として受け入れられ始めたらしい。



そしてパパは私の狙い通り、ウマスズメを運搬にも使い始めた。最初はポチファミリーだけだったウマスズメはどんどん増えていって、今では家で飼っているなんて家もチラホラある。



「おっはよ~!ポチ!」



という私も、あれからポチを家で飼っている。パパはすぐにポチたちの家を作ってくれて、最初はただの小屋だった家も、どんどん私の知ってる馬小屋みたいに改良されていった。



「きっと昔の人たちも、こうやって色々と文明を発達させていったのよね。」



それはまるで、人類の文明が進化していく様子を見るようだった。私は色々と知っているからアシストをしているけど、大昔の人はなにもわからないところからそこまで進化させたと思ったら、本当に頭があがらない。



「アリア、またここにいたのか。」

「パパァ~!ポチとお話ししてたよ~!」



ウマスズメたちが活躍してくれるおかげもあって、パパは前より家によく帰ってこれるようになった。それでもまだまだ忙しいのには変わりないから、私は日々、またパパの負担を減らせるようにならないかを考えていた。





「ママ~!パパどこ行ったぁ?」

「今お仕事してるから邪魔しちゃだめよ!」

「はぁい。」



あの日からいい子認定を外されている私は、ママによく怒られるようになってしまった。でもまったく懲りる事もなく私はママのいう事を無視して、パパの書斎のドアをそっと開けた。



「パ~パッ。」

「アリア。おいで。」



パパは私が仕事を邪魔にし言っても、いつでも膝にのせてくれる。その暖かい膝の上でウトウトするのが最高に好きで、私はいつも甘えてそこに乗ってしまう。




「今日はどんなお仕事~?」

「今日はね、大きな荷物を運ぶために、色々と考えてるんだよ。」



パパは会社でウマスズメを運搬の仲間として使い始めたけど、大きな荷物は前みたいに、丸太を転がして運んだり何人もの人の手で運んだりしているみたいだった。


――――チャンスだ、と思った。



ウマスズメを仲間にするところまで気が付かせることは出来たけど、この1年を通して荷台の概念を伝えることが出来なかった。ここまで虎視眈々と機会を狙ってきた私は「ふぅん」と言いつつも、どうやって荷台をひらめかせるのか、頭を働かせた。



このチャンスを逃してはいけない。

そうは分かっていても、「これ作って!」なんて絵を描いてしまったら、4歳児にしては天才過ぎる。



アラサーが4歳として暮らすのって、意外とこういう苦労があるなとため息をつきながら、私は外を見つめた。



目線の先には、水車が見えた。

この国は色々な文明はまだまだ未発達だけど、水に関する文明の発達は、目覚ましかった。っていうのも、ずっとパパの仕事を邪魔して地図を見ているうちに気が付いたけど、この国にはすごく川が多い。

そしてなおかつ島国だから、隣国から移動するには、船を使うしかない。だからこそ水に関する文明は発展してきたんだろうけど、その反対に陸路の未発達さと言ったら、ため息をつきたくなるくらいだった。



あんな風に回って水を回す原理は思いついたのにな…。


回る…。回る?!?!



「ねぇ、パパ。」

「ん?」

「丸太をぐるぐる回して、大きいのは運ぶんだよね?」

「そうだよ。」



そうだ、水車だ。

水車が回っている様子は、どこかタイヤが回っているのに似ている。もしかしてアレを使えば、荷台のことも気が付かせられるかもしれない。



そう気づいた私は「見て」と言ってパパの仕事を中断させて、外を指さした。



「丸太もあれみたいに、ずっと回ればいいのにね!」

「そうだね。水車みたいに…」



パパは私を一瞬はテキトーにあしらおうとしたけど、その途中で何かに気が付いたみたいだった。



ああ、パパ。あなたはなんて、私の思い通りになってくれるの?



「アリア!それだ!お前はほんとに…いい子だっ!」

「きゃあっ!パパやめて!」


パパはそう言って、私の頭をぐちゃぐちゃにした。すると次の瞬間には真っ白な紙に、絵を描き始めた。



「水車みたいにずっと回ればいいんだ…。」



パパは絵が本当に上手だった。何かをブツブツ言いながらついには本当に私の知っている馬車みたいなものをかきあげて、「これだ!」と大きい声を出した。



「よし、これをさっそくケルシュに作らせよう!」



ケルシュとは近所に住んでいるおじさんのことで、物作りがすごく得意だ。最初はポチに乗る時たてがみをつかんで乗っていたんだけど、だんだん何か"持つもの"があった方がいいと気が付いてから、そのケルシュさんが手綱みたいなものを改良に改良を重ねて作り上げてくれた。



パパは思いっきり私をギュっと抱きしめた後、嬉しそうな顔をしてケルシュさんの元に向かった。



あ~。またこれで文明が一歩進むな~と、パパの背中を見てそう思った。

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