第10話 お友達に、なれるんだよ
「
「なんでこんなところに…?!」
隣の家のおじさんは持っていた猟銃を構えながら大声で言った。大きなポチママの背中に隠れているせいか私の姿は見えていないみたいで、おじさんはこちらに向かって、今にも銃を放すぞって姿勢をしていた。
「おじさ~ん!!!」
ポチよりもっと早く風を切って走るポチママの上で精一杯手を振って、私は"ここにいる"アピールをした。しばらくするともう一人のおじさんが「背中に何かのってる!」と大声で叫んだ。
「ママ~!」
向こうの方では、ママが心配そうな顔でキョロキョロとしていた。私は右手は必死でポチママにしがみついたまま左手で大きく手を振って、ママに「ただいま~!!」と叫んだ。
「リアッッ!!!!」
ママの叫ぶ声を聞いて、おじさんたちが猟銃を下した。撃たれるんではないかと思っていた私は内心ホッとして、今度は両手でしっかりポチママにしがみついた。
「ママ、ただい…」
「アリアッ!」
ポチママが頭でうまく私を下ろしてくれたと同時に、たくさん泣いているママに抱きしめられた。
――――ああ、またママを悲しませてしまった。
パパにはいい子で待ってるなんて言ったのに、全然いい子になれなかったと今度は本当に反省しながら、「ごめんなさい」と小さい声で言った。
「危ないって言ったじゃない!!!!」
「危なく、ないよ?」
ママが怒った顔で言ったから、私は素直に答えた。
ポチママや他の
「こんなところにまで降りてきて…っ!」
「危険だ!!!」
怖がっているのは、こちらの方みたいだった。
私が下りたのを確認したおじさんたちは、また猟銃をポチママたちに向けて、怖い顔をした。
「やめてっっ!!!」
それを見て、私はおじさんとポチママの間に両手を広げて立ちふさがった。おじさんたちは口々に、「アリアちゃん!どきなさい!」と大きな声をあげた。
「アリア!」
そんな私を、ママはその場所からどかそうとした。でも私は3歳が出来る力を振り絞って、その場に居続けた。
「大丈夫なの!怖くないの!やめて!!」
おじさんたちはそれでも、猟銃をどけなかった。ママはついに私を抱き上げようとしたから、私は思いっきりそれに抵抗して、ポチママの方に向かった。
「怖がらないで!違うの!」
私はポチママの顔に抱き着いて、必死にアピールをした。するとポチママはそんな私の様子をみて、ペロッと私の顔をなめた。
「うわっ!」
「アリアちゃん!」
それを見て、大人たちはすごく動揺していた。でも私はポチママにされるがままにして、そのうちにだんだんくすぐったくなってきて、思わず笑ってしまった。
「ねぇやめて、くすぐったいって。」
「クゥ~ン」
そんな光景をみて、大人たちがざわざわし始めた。私はそれにもかまうことなく、ポチたちとじゃれ続けた。
「ア、アリア…。」
ママは恐る恐る、こちらに近づいてきた。私はそんなママににっこりと笑って、「あのね」と言った。
「あのね、ママ。みんな私のお友達なんだよ。」
「おとも、だち…?」
「そう、初めて出来たんだ~!」
私は出来るだけ無邪気に言ってみせた。すると徐々に、おじさんたちが猟銃を下ろし始めた。
「私たち、お友達に、なれるんだよ。」
私がそう言ってポチたちを撫でても、大人たちは一歩もそこから動かなかった。
確かに生まれてきてから数十年にわたってしみついた固定観念って、なかなか簡単には崩せないよな。
次はどう戦おうと固まっていると、遠くの方から「アリア~~~~!」と私を呼ぶ、たくましい声が聞こえた。
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