終わらない面倒事
トウヤはポーラに報告を済ませる。
「仮にも
それにあの人に合流するつもりとか恐怖でしかないんだけど」
声だけの念話だが表情豊かな顔が思い浮かぶ。
「けど
転生してまた目の前に現れるまで猶予が出来ただけでも良しとしよう。
それに連れて行かれそうだった
戦闘、そして報告に気を取られ、姿が消えていた。
「おそらく死んだと同時に転移させたのね。そういう人よ」
「ああ、悪い。転生したあの人を探さないといけなくなった」
「ま、まあ全員無事と目的がわかっただけでも大した成果よ」
「じゃあ、うちらは他のメンバーに合流か?」
トウヤが次に移ろうとしたが、スプニールがそれを止めた。
「いいえ、
「……ああ!あの雷女!」
トウヤも理解した。
いつも一緒にいるほど仲良しな
黙って見ているわけがないので、戦闘があり奥で倒れている可能性が高い。
「と、とりあえず、こっちは
すまないが報告だけで合流はまだ先になりそうだ」
「わ、わかった。気を付けてね」
面倒なことがポーラにも解かったので、労いの言葉だけで念話が切れた。
「はぁ……めんどくさ」
トウヤは大きく溜息を吐いてしまった。
「普通なら貴族に対する仕事と言えば喜びそうなんだけど?」
「面倒事しか持ってこない人でどう喜べと?」
トウヤの反応に無表情なスプニールに代わり、リヤナが答えた。
「私は持ってきてないでしょ~?」
後ろから抱きつきながら頬を指してくる。
「そうねーリヤナとクルルは持ってこないねー」
棒読みだがリヤナは満足したようだった。
「それよりも……」
トウヤはリヤナを引きはがすと蹲っているミイナに声をかけた。
「ミイナ、辛いと思ったら抜けていいからね」
元とはいえ、酷い扱いだったとはいえ、主は主。
ミイナにとっては複雑な心境だ。
「人形でも思い悩むのね」
「おい」
スプニールの物言いに少しムッとしたトウヤが睨む。
一触即発な雰囲気が漂ったが、ここで言い争いをしても意味が無い。
「人間らしくしないで人形のままでいた方が幸せだったんじゃないかしら?」
「それは――」
「いえ、そうですね」
煽ったように聞こえたが、当のミイナは踏ん切りがついたようだ。
「わたしは人形。今の主の意のままに動くつもりです。
……まあ、生みの親であるマスターに敵対するのは気が引けますが、
全身全霊でお仕えしますので、お好きに使ってください」
なんかスッキリしないが当の本人は満足したらしい。
「ま、生みの親どうこうって言ったら私も似たようなものだけどね」
珍しくリヤナがミイナの肩を持つ。
そういえばリヤナも養子なので生みの親ではない。
そのあたりは共感出来たのだろう。
そして……
「俺も……あの人が親なのか?」
トウヤがポツリと呟く。それはこの場の空気を重くするのには十分だった。
ミズキと母親が同じと証明されればキョウの話が真実の可能性が高い。
そうなるとトウヤは
厄介な国の人間でありと、なかなか面倒な立場になる。
それら全てを無視するほどトウヤは太々しくなかった。
「もしそうだったら……私の婿になる?」
「……は!?」
リヤナは急に変な提案をしてきた。
「私の婿なら、お義父様の子供も同然。お義父様は
その力で面倒事を潰してくれるし、実力があれば良い立場に取り立ててくれるわよ?」
権力者であるリヤナの義父は大抵の不祥事はもみ消してくれるらしい。
そうなれば犯罪者の子供であることや地球人であることなど無視される。
悩む必要が無いのは有り難いが、だからと言って婿になるのはどうなんだろうか?
「な、なんか違うっぽいからやめておくよ」
トウヤは無難に断った。
だが
「なによ~私に不満でもあるの~?」
「不満というか、そんなんで人生の伴侶を選ぶなよ」
「じ、人生の伴侶って……そんな重く受け止めなくても……」
リヤナは予想外な答えにややたじろぐが、スプニールが肩に手を置き支えた。
「地球では一人の人間に生涯を誓うらしいわ。私達と感覚がだいぶ違うわよ」
「あ、あぁ……そうなんですね。もったいない……」
もったいないとは?と思ったがこれ以上深掘りする話ではない。
「さあ、休憩はもういいでしょ?早く奥で寝てるだろうお姫様を救出しないと」
スプニールの指摘で思い出した。
まだ一人、確認しなければならない人物がいることを。
「あ、ああ。大怪我してると厄介だし、早めに確認しておこう」
トウヤ、スプニール、リヤナと奥へ進んでいく。
そしてその様子を見ていた一人が、いい悪戯を思いついたようにニヤリと笑う。
「クルルさ~ん、これはラブですか~?」
「ち、違うんじゃないかな?」
「んんんんん!難しい!」
こういう話に興味津々なミイナはやや興奮気味で聞くので困ったものだ。
「さあ、私達も……!?」
後を追おうともう一人に声をかけたら、すごい顔をしていた。
まるで渋く苦い物を口にしたのに、表情を変えないよう強張らせてる感じだ。
「……人たらしって、最悪ね」
「あは……はははは……」
クルルはとても返事に困った。
案の定、奥に一人倒れていた。
連れ去られたロゼアといつも一緒にいるアコニスだ。
「
スプニールが肩を叩きながら反応を伺う。
「う……ん…………!?」
アコニスは気が付くと飛び上がり、周りを確認した。
「あのババアなら消しましたよ。と言っても転生するので研究所送りですが」
スプニールの言葉に敵はいないと解かると、今度は人を探した。
「
「役立たず!
大事な時に寝てた
とトウヤは口にせず思った。
「転移先がババアの研究所なので、おそらく
「だったら早く行って助け出しなさい!」
「行けと言われても場所も入り口もわからないのにどう行けと?」
「それを見つけ出しなさい!そんなこともわ――」
パンッ!
アコニスとスプニールの言い合いに、トウヤが水を差した。
思わぬ行動に驚くと同時に時が凍り付いたように止まった。
「ちょっと、あんた黙っててくれる?」
頬を叩かれたアコニスは茫然とした顔でへたり込んだ。
「これだけ騒ぐんだから怪我とかも無いでしょ。それよりもうちらは他への救援。
連絡を取り合って敵を殲滅していくことが最優先――」
「ちょっと……待ちなさいよ……」
震える声でアコニスが止める。
「……何?」
「下人の……下人の分際で手を上げるなんで許さない!!」
アコニスの魔力の放出と同時に黒い雷が弾ける。
トウヤは大きく溜息を吐いた。
「今……そんなくだらねぇこと言ってる暇がねぇんだよ!!」
トウヤは声を荒げながら魔力を放出した。
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