第13話友達だから
ドールエムーリズという魔術はラクナ達も知っていた。
ラクナの妹が攫われた際にジョイミールが最後に妹に使おうとしたものであった。
そして、その時はまだその魔法がどんなものか分からなかったが、嫌な予感がしたラクナがアレクアやエリーエと共に何とか連携してその魔法を妹に掛ける前に阻止することが出来た。
そして、その後リブアイにデンター組織に着いてアレクア達と共に報告をしに行ってその際にリブアイにドールエムーリズの事を聞いた。
そして、その恐ろしい魔法の効果を聞いていたのであった。
ゴウミにその呪術魔法が掛けられていると知った3人は数分間口を開くことが出来なかった。
しかし、ラクナは我に返ってすぐに
「あの! それならすぐに解いてあげた方が! リブアイさん言ってましたよね! 刻印を解呪魔法で消せばドールエムーリズの呪術から解放されるって!」
と必死になってリブアイに言った。
リブアイは申し訳なさそうに
「すまない、ナンジー医師も全身を検査して調べたが刻印を見つけることが出来なかった」
と事実を3人に述べた。
それを聞いてアレクアは
「ならその呪術魔法が掛かっているとは言えないのでは! そうでないと刻印が見つからない理由が分からないですよ!」
とそのことをリブアイに話すとリブアイは
「ドールエムーリズの呪術についてはゴウミ自身が掛けられたと自己申告された」
『!?』
とその言葉に3人は呆気に取られる。
エリーエはそのことが信じられないのか
「でも勘違いって可能性も!」
と言ったところでアレクアは思い出したように
「自傷……行為……していたって話が……もしかして」
と震えながらアレクアはリブアイの方に目線を向ける。
リブアイは
「やはり話は聞いていたか……さすがは騎士の跡取り息子なだけある……恐らく自分で自己申告したことによってその呪いの効果が出てしまったんだろう……痛みで気持ちよくなるという虚言を吐いていた、おそらくそのような嘘を言わせることによって真実味を消させる為なのか分からないがその後自分の手を万年筆で刺していた……もしかしたら体の見える部分ではなく内部に刻印があるのかもしれない……その可能性が高い……」
それを聞いてエリーエは涙を流しながら
「酷い……酷すぎる……痛みを気持ちよがる人間なんて……いるわけないじゃない! そんな事を言わせるなんて! そんなの全回復魔術師に対する冒涜よ!」
と怒りを抑えられないでいた。
ラクナもゴウミがそんな事を言わされているのを聞いて
「僕の妹も……そんな酷い目に合されるところだったのか……そんなにも恐ろしい呪術魔法だったなんて……」
と身近な家族を壊される寸前であったことを知り、恐怖した。
アレクアは恐怖を感じながらも
「しかし! 今は落ち着いてます! 確かにドールエムーリズの呪術のせいでデンター組織にいたことに対して疑念を持っていないみたいですが……精神が落ち着いたからこそ学園にも通えているんですよね!」
と必死になって質問をするとリブアイは
「ああ、ドールエムーリズの呪術についての話さえしなければゴウミ自身が自傷行為や虚言を吐くことは無くなった、だからこそ君達には……ゴウミの友人になろうとしてくれている君達にもその呪術についてゴウミの前では話さないようにして欲しくてな……君達は間接的にデンター組織と関わったと言っても過言ではない、ジョイミールが下っ端だったとしてもな……」
と事情を話す。
レチアはその話しを終始聞いていて。
「それを私の前で話したのは他の教員にも話を通す為ですか?」
と恐る恐る確認を取った。
リブアイはレチアに目線を向けると
「ああ、貴方はゴウミの担任とも親しいし見たいですし話して頂けると幸いです」
「……自分で話せばよいのでは……」
とレチアはリブアイに当然の反応を見せる。
レチアは気まずそうに
「どうも……あの人は苦手で……」
とそっぽを向いて話す。
レチアは
「はあ……」
と溜息を吐いて呆れながらリブアイに
「まあいいですけど……」
と仕方なさそうに了承する。
アレクアは苦笑いをしながら
「確かにサクラ先生はリブアイさんに怪我をしてないかとか色々言ってますね……」
とからかうように言った。
照れながらもリブアイは
「とにかく3人にはゴウミの事を見ていて欲しいんだ……色々と戸惑う事をして困らせることをすると思うがあいつも悪い奴ではない……寧ろ頑張りすぎるところがある……執事見習いも休憩を取らずに仕事をしようとするところがあるから誰か止めれる人に見て欲しい……」
とお願いするように3人を見た。
エリーエは微笑みながらリブアイに
「分かりました、私も回復魔術師の端くれです……彼自身が無理をしようとしてましたらちゃんと止めますので、心配しないでください」
と言って、ラクナとアレクアも続いて
「色々と大変な環境で苦しんだみたいだから……ここでは楽しい思い出を作って欲しい……僕は純粋にそう思います」
「そうだな……せっかく来た新しい編入生だ! 嫌な思いをしてここから卒業何て! 嫌だよな!」
と3人は互いに見合って
『だって! 友達だから!』
と笑顔で言った。
リブアイは安心したような表情になり
「ありがとう、3人共、よろしくお願いする……レチア先生も……このことはサクラ先生にも伝えてくださいね」
「はい、分かりました……まあどうせ見ているのはサクラ先生ですので迎えに来たならどうせ会わざる負えないですけど」
と微笑みながら言った。
リブアイはぶるっと震えながら
「そういえばそうだった……」
と少し肩を落としながら
「では私は保健室へゴウミを迎えに行く……今日はもう帰らせようと思ってね」
「分かりました、後の事はお願いします」
「ゴウミ君によろしくお願いします」
「みんな心配してるって言って上げてください」
と3人はリブアイに言伝を頼んだ。
そして、リブアイは保健室へと向かった。
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保健室に辿り着いたリブアイは
「ふうう……はあ……」
と深呼吸をして
「失礼します!」
と言って保健室を開けた。
そこにはサクラはおらず、ゴウミ1人がベッドから出ようとしていた。
それを見てリブアイは
「ゴウミ! お前立って大丈夫なのか! 魔法が直撃したんだろ!」
と驚きながらゴウミの身を心配した。
ゴウミはキョトンとしながら
「え? もう少しで授業なので出ようかと……」
「その状態で授業を受けるつもりか! お前は! 何を考えている! 今日は帰るんだ!」
と感情的になって叱りつけた。
ゴウミは呆気に取られて
「え! 帰るんですか! まだまだ授業はこれからなのに!」
と意外な言葉に驚いていた。
リブアイは後ろを気にしながら
「全くお前は! 良いから今日は帰るぞ! 質問も意見も今は認めん!」
と言って手を引っ張った。
ゴウミは息を荒げながら
「ハアハア、アヘエエ……乱暴なああ~」
と顔を赤くしながら引っ張られていると
「さっきから騒がしいですねえ……どうしたんですか? ゴウミ……君……」
とサクラが保健室に入ってきた。
サクラはキョトンとしてリブアイを見て
「リブアイちゃん! 久しぶりじゃないですか! もう! 何でいつも会ってくれないんですか! いつも騎士の仕事を頑張ってるみたいですけど怪我とかはしてないですか!」
とリブアイに笑顔で接近しながら体のあちこちを見て怪我をしていないかを見て回る。
リブアイは慌てながら
「サクラ先生! 大丈夫ですから! 怪我はしてませんし!」
と言って止めるように静止するが
「ああ! ここ擦り傷出来てるじゃないですか! どこが怪我がないんですか! 今治しますからね!」
と言いながらその擦り傷に回復魔法を使った。
ゴウミは微笑ましそうに
「仲が良いですね……それでは僕は授業があるので……」
「ダメだ!」
「ダメです!」
と言って授業を受けようとするゴウミを2人は止めた。
ゴウミは腕を2人に掴れて
「うう……ダメかあ……」
「ダメだ!」
「ダメです!」
と言って2人はゴウミを止めた。
そして、リブアイは
「では私はゴウミがこれ以上無理をしないようにこのまま帰りますね!」
「リっリブアイちゃん! まだ擦り傷が!」
「ではこれで!」
と言ってサクラの手を振り切ってそのままゴウミを連れて帰った。
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その後、ゴウミは城に帰ってハル姫に
「大丈夫ですか! 自分の攻撃魔法が直撃したと聞きましたが!」
と血相を変えて心配していた。
ゴウミは笑顔のままハル姫に
「はい、大丈夫ですよ? 怪我もないとサクラ先生お墨付きですので」
と安心させるように伝える。
(むしろ気持ち良かったから次の授業が楽しみだ)
とその時の事を思い出して高揚していた。
ハル姫はその赤い顔を見て
「顔が赤いですよ? もしかしたら疲れているかもしれませんので今日は部屋でゆっくり休んだ方が良いですよ?」
と気を遣うとゴウミは慌てて
「いえ! 大丈夫ですよ! 問題ありません!」
と言って執事見習いの仕事を行おうと目論むがリブアイに
「ダメだぞ、こういう人の好意はちゃんと受け取った方が良いぞ、お前は攻撃魔法が直撃してるんだから無理をしようとするな」
とリブアイはゴウミを制止した。
ハル姫も心配そうに
「そうですよ、自分の体を優先に考えてください」
と言って注意をした。
ゴウミもさすがにここまで言われると
「分かりました……はい」
と落ち込みながら聞かざる負えなかった。
ゴウミは命令には弱かったのであった。
「ではリブアイ、ゴウミを部屋へ連れて行ってください」
「分かりました、ゴウミの部屋の前で1人騎士を待機させます」
と言ってゴウミは逃げる術を失った。
そして、そのままリブアイはゴウミを部屋に送り届ける。
ゴウミは自分の部屋に戻っていると1人の女性が歩いてきた。
ゴウミも城で勤めているがまだ会ったことのない女性であった。
その女性は軽装の装備で綺麗な赤い髪の短いポニーテールで瞳が赤い女性であった。
リブアイはその女性に
「おお、来てたのか! アイシャット!」
と話し掛けた。
アイシャットと呼ばれた女性は
「リブアイ! 報告に来たよ! っと! その子が例の子?」
とゴウミの顔を覗き込むように見ながら
「初めまして、私の名前はアイシャット・ヴァトリア! 冒険者よ! よろしくね!」
と元気よくゴウミに挨拶をした。
ゴウミは頭を軽く下げて
「初めまして、ゴウミと申します、以前は……」
と言い終わる前に
「ゴウミ! 部屋に戻るぞ!」
とリブアイは割り込んで止めた。
ゴウミはキョトンとしながら
「え? でも」
「でもじゃない! ほら行くぞ!」
とゴウミの話を聞かずに部屋へと引っ張って行った。
リブアイはゴウミを引っ張りながら
「お前なあ……魔法の直撃したことを忘れてるんじゃないだろうな? 無理をするなって言ってるだろ? あっあとお前縄を持ってるって本当か?」
「!!」
とその言葉を聞いてゴウミは慌ててカバンを隠してしまった。
さすがにリブアイに見つかり
「寄越せ」
と言ってカバンを奪い取った。
そして、カバンの中身を漁って探した。
「あれ?」
しかし、縄が入っていなかった。
ゴウミは少し怪訝そうな表情で
「もういいですか? ないでしょ? 返してくださいよカバン」
リブアイに手を差し出してカバンを返して貰おうとする。
リブアイも申し訳なさそうにするがふと思い出した。
「なあ……門番が言っていたがお前自分を縛った方が落ち着くって言っていたと聞いたが?」
とゴウミをジロリと見た。
ゴウミはビクッと顔を赤くした。
そして、リブアイはゴウミを見ながら
「部屋に戻ったら服を脱いで着替えを手伝ってやろう、なーに気にするな、怪我人なんだから」
と言ってそのまま腕を掴んで部屋に連れて行った。
ゴウミは
「ああれえええ! お止めになってええ!!」
と言いながら部屋へと連れて行かれた。
そして、部屋から
「いやあああああ!! ケダモノオオオオ!!」
「誰がケダモノだ! それに何だその縄は! 何だ! その縛り方は!」
「亀甲縛りです」
「うるさい! とにかく解くぞ!!」
「止めてええええええええ!!」
という声だけが部屋から聞こえてきて近くにいたベリダは
「リブアイ様……いったい何を……」
と青ざめながら涙を流して 震えていた。
「そんな……私のリブアイ様が……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
そして、泣きながらその場を去った。
そして、リブアイは縄を奪ってしまった。
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その後、リブアイはアイシャットの報告を聞く為に円卓で話を聞くことになった。
「それで、デンター組織の動きは?」
アイシャットはリブアイに
「リブアイさん、貴方達騎士が潰した支部でジョイミールがいただろ?」
「ああ、確か夏にラクナの妹もそいつに攫われそうになった時にいた奴だ、その後ア
イシャットに追って貰い、支部を見つけた事でゴウミを助け出せたが……それがどうしたんだ?」
「昔からいつも抜けてるんだから、アイお姉ちゃんが教えてあげるよ……支部が潰されたらそれなりの対応をするでしょ?」
「うっ! 同い年なのに……」
とリブアイは恥ずかしそうにしながら頭を抱える。
アイシャットは、リブアイの友人である。
街で父親とはぐれた時に知り合い、一緒に父親を捜してくれた事を気に仲が良くなり、町に遊びに行くときは一緒に遊んでいたのであった。
アイシャットは父親が冒険者で自分も将来は冒険者になるという夢があり、リブアイも父親が騎士で自分も将来騎士になるという夢があるという共通点が2人の友情を結んだのであった。
そして、アイシャットはリブアイより器用であり機転も利く、その為よく様々な事を依頼をアイシャットに依頼することもある。
そして、ハル姫やリブアイに頼まれてデンター組織を密かに探ったりもしているのである。
アイシャットは神妙な表情で
「ジョイミールに妹がいてそいつがこのジャーティス国の周りをうろついているんだよ……」
と資料を見せながら報告する。
リブアイはその報告を聞いて真剣な表情で
「捕えることは出来るか?」
と聞くとアイシャットは首を振りながら
「難しいわね……彼女は姉と違って戦闘向きではない研究者だけど……正直ガードが堅いしとても密かに捕らえる事は出来ないわ……はあ」
と溜息を吐いて話す。
そして、国の地図を取り出して
「国の周りでよく見かけるのは入り口付近と地下水道の辺りを見回っているよ、おそらく国への侵入を考えているのかもしれないわ」
と地図に指を差してリブアイに報告する。
リブアイは唸りながらも
「分かった……取り敢えずこの辺りの警備を固めよう……もちろん他の場所も衛兵達に抜かりなく見張らせるが……だがその妹がどうしてワザと見つかる位置に……」
「確かにそうね……だけど無視は出来ないと思って一応報告するよ、それに……これはまだ確信が持てないんだけど」
「どうした? 言ってくれ」
「もしかしたらジャーティス国にスパイが潜んでいるかもしれないの」
「スパイか……」
とその話を聞いてリブアイは顔を歪めた。
リブアイはアイシャットに
「確かに、国に侵入するのであれば手引きが必要だ……しかし誰が……私もそこは当たって調べてみるが……簡単に見つかるとは思えないしな」
と悩み込んでしまう。
アイシャットは
「コラ! 確かに国に入られるのは危険だけど1人だけで考えないように! リブアイって本当に自分だけでどうにかしないとって考えるよねえ」
と頭を抱えながら呆れ返る。
リブアイは顔を赤くしながら
「すっすまない! そうだな……このことをハル姫やオイエア殿と一緒に対策を練った方が良いな」
と顔を赤くしながら反省した。
アイシャットは
「そうよ、私はただの報告に来ただけなんだから……作戦とかは貴方達に任せるわ、何か対策が練れたら私にも話してくれればいいから……じゃ! 私は」
「ああ、そういえばあの子の様子はどうだ? それも聞きたいんだが?」
とリブアイはアイシャットを止めて聞いた。
アイシャットは笑いながら
「そうね、だいぶ生活に慣れたわ、まだ国の中で過ごさせるのは早いと思うわ」
と少し悲しそうに言った。
「やはりまだ人を恐れているか……」
「そうね、私に対して警戒心を解いてくれたのは嬉しいけど……まあ焦っても意味ないし! 気長に待ちましょう!」
「そうだな……ゴウミの事も……もう少し気長に考えた方が良いのかな……」
とリブアイがボソッと言った言葉を聞きアイシャットは
「あらあら! リブアイちゃんたら執事見習い君にご執心!」
とからかう様にくすっと笑う。
リブアイは照れながらも
「そんなんじゃない! ただ私はアイツの呪術の事が気になって……」
とアイシャットに言い返す。
アイシャットは笑いながら
「はいはい、そういえばベイリーを国外追放したって噂は本当?」
「ああ、あいつはゴウミを嵌めて責任を全部あいつに押し付けてなあ……信用を失っても仕方ないと思ってるよ……ハア」
と呆れながらリブアイは溜息を吐いた。
アイシャットはその話を聞いてリブアイに
「一応その人の動向も探った方が良いんじゃない? 何かに加担する可能性だってあるでしょ?」
と冒険者として助言をした。
リブアイは
「え……それはどういう……」
とキョトンとしてしまう。
それを見てアイシャットは呆れながら
「全く、貴方はどうしてそういう部分の危機感が薄いの? 追い詰められた人間の恐ろしさをどうしてこうも知らないのかなあ……」
と頭を抱えていた。
リブアイは唖然としながら
「え……どういう……」
と戸惑っているとアイシャットは
「つまりわね……そのベイリーさんがもしかしたら国に入る方法を密告しているかもしれないってこと」
と仕方なさそうに教える。
それを聞いてリブアイは
「な! そんなバカな!」
「そんなバカな事があり得るってこと……とにかくその男がもしかしたらデンター組織に入って復讐の機会を狙っている可能性だってあるでしょ? ならその男が中にいる誰かと繋がっている可能性だってあるんじゃないの? ベイリーさんの身辺とかちゃんと調べた?」
「……まだです」
「ならすぐに姫やオイエアさんに相談してやった方が良いよ? じゃ、取り敢えずはここまでで」
と言って部屋を出ようとするとリブアイは
「ありがとう! 本当にいつも!」
と改めてお礼を言った。
それを聞いてアイシャットは笑いながら
「良いわよ別に、アイお姉ちゃんがまだまだ面倒見てあげる! 泣き虫のリブちゃん!」
と悪戯っぽく言った。
それを聞いてリブアイは頬を膨らませて
「もう! 止めてよ!」
と拗ねるように言った。
アイシャットは
「はいはい、じゃ! また色々と探ってくるからね!」
と言いながら部屋を出てリブアイは
「……もうちょっと一緒にいたいなあ……」
「呼んだ?」
「!!! いや! その!」
と手を振りながらリブアイは顔を真っ赤にした。
アイシャットは
「もう仕方ないわね! 一緒に居てあげようか!」
「えっと……大丈夫です……」
と完全に照れておりアイシャットも
「はいはい、分かりました……じゃ! 本当に行くね! 別にもう会えないんじゃな
いんだから」
と言ってそのまま帰った。
リブアイは頬を赤めながらも
「さっさて! 仕事仕事!」
と言って部屋を出るとベリダが真っ青になって突っ立っていた。
「リブアイ様……ゴウミと何をしてたんですか……」
と明らかに目が病んでいた。
「うわ! 何だお前! どうした! 体調が悪いのか!」
と心配そうにベリダに問いかけると
「そんなことはどうでも良いんです! どうなんですか! ゴウミ君とどんな関係を!」
「関係? 何の話だ? 確かにゴウミの部屋に入ったがあいつが自分を縄で縛っていたからそれを解いて寝かせただけだが……それがどうした?」
と聞くとベリダは間近に接近して
「本当ですか?」
と目を見開きながらリブアイに聞いた。
リブアイは戸惑いながらも
「ほっ本当だ! 嘘なんて言ってないぞ?」
とさすがにビビりながら言うとベリダは
「なーんだ! 良かった!」
と元気を取り戻してそのまま
「では仕事に戻ります!」
と言って廊下をそのまま歩き出す。
リブアイは不思議そうに
「一体何だったんだ? 今のは?」
と思いながらも
「まあいいか」
と考えてそのまま自分の仕事に戻った。
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ゴウミはワクワクしていた。
「いじめの種はバラ撒いた……これが明日には花開くはずだ……さすれば僕は明日からいじめられっ子だ……そうなれば僕の学園生活は楽園と化する」
と1人でブツブツ呟いていた。
股を弄りながら
「あああ……今考えるだけで何かが来るぜ! 僕の何かが火を噴きそうだ……体が高揚する、頬が熱い! 燃え滾る何かが僕を明日襲うんだ……あああ……ああああああああ!! アヘエエエエエエエエエ!!」
とついつい叫んでしまう。
すると外から
『何事だ!』
『一体何の声だ!』
『侵入者か!』
と驚きながら警戒態勢に入る声が聞こえる。
ゴウミはさすがに悪いと思い外に
ガチャ
と出ると外には衛兵やリブアイ達がいた。
ゴウミは申し訳なさそうにしながら
「ごめんなさい……僕が寝言を叫んでしまっただけです……お仕置きなら受けます」
と言って高揚する顔を伏せるように頭を下げた。
それを聞いてリブアイは
「そうか……分かった……大丈夫だ……何かあったらまた言えよ」
と言って皆に
「皆、今聞いた通りだ、職務に戻る様に!」
『ハ!』
と言って皆一斉に自分の仕事に戻って行った。
リブアイは
「今日は私が見張ろう……安心して眠れ」
と言って優しい表情で言った。
ゴウミは苦笑いで
「あ……はい……分かりました」
と言ってしょんぼりしながら部屋に戻った。
ゴウミは部屋の中で
「……やっぱり駄目かあ……ああ……もうちょっと叱りつけられると思ったが……」
とそのまま部屋に戻って
「今日は……寝よう」
と言って仕方なく眠りに着いた。
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