春夏冬日録
君塚小次郎
疲弊不満
私はどこか、いや情けない話ではあるが、自分を小説家であるという自負があった。
実際は違う。
ただ、一つの物事を小難しく、老人のような口調で語っているだけであって、非常用的な語彙はなにも知らない。
私は自分を多趣味の人間であるという自負があった。
第二次性徴をちょうど迎える時期に出会った趣味、齧った趣味、魅了された学問、いつかやりたいと思えた憧憬の数々。
ずっと胸の内にしまって抱え続けていた。
実際は違う。
ただの飽き性なのだ。
好きなものを好きになったその瞬間を忘れまいと考え続けていただけで、本質はなにも掴めていない。
動画を作りたかった。
作れる環境がある今、お前はなにをしているのか。
小説を書きたかった。
作品一つ完成させられないお前は小説家とは呼べない。
作曲をしたかった。本も買ったし楽器も買った。
蓄えた知識も消え失せようとしている。時間と金がないと言い訳をしている。
私はなにもない。ようやく気がついた。
白状しよう。私は学生だ。
私立文系、大したことない大学に合格最低点で入り、予想通り落ちぶれた最悪の学生だ。
新たな出逢いは素晴らしかったし、嬉しかった。
最近ようやく、自分の人生が幸福であると思えるようになった。
私の趣味はもうボロボロだ。なら、せめて実生活をちゃんと送ろう。
そういう心持ちも全くないわけではなかった。
だがまあ、ダメだったのだ。
課題は1分遅れて、レポートを先延ばしにして最低評価、テストの日を忘れて単位をつけられることもなかった。
取得単位は20中10、まだマシだと思ったがどうやら異常らしい。GPAは0.95、こちらもどうやら異常らしい。
今までの運が良すぎたのだ。
小学生で宿題をやらなくても咎められることはあまりない。
中学生、誰もが粋がる時期だが私も例外ではなく、ただ怠惰で、出来の悪い学生として生きてきた。
高校も合格最低点レベルだった。遅刻常習。クラス順位で上から数えた方が早いなんてことは一度もなかった。
が、卒業できた。
もう尽きたのだ。私にはなにもない。
必死に埋めた後期の履修登録は抽選落ちが多発してイカれたスケジュールと化した。
頑張らないといけない。
それなのに、今日だって1限2限3限を飛ばした。
朝起きられなかったのはなにが理由なんだろう。
3限に間に合わなかったのは教科書が見当たらなかったからだ。
定期券を忘れたのは完全に不注意だった。
モバイルICカードに金を入れるのは私のクレジットカードだ。
よく働く母を殺すのが私ではないよう、やれることはやっている。つもりだ。
他に手はなかったが、大学も奨学金だ。
うちにもっとお金があればと思った。
しかし母親も同様に、私の頭がもっとよければと思っているだろう。
私が働いた分家に還元できたらきっと楽になるだろう。
気を遣って夕飯を作ったり、朝起きて弁当を作れば最高の息子を演じられるだろう。
そんなものは想像ばかりで身体がまったく動かない。
小さな幸福は毎日当然ある。
中くらいの不幸が上手く心を突いてくるのだ。
私は頑張っている。頑張っていた。もっと頑張らないといけなかった。
そうしないと私の人生は真っ暗になってしまう。しかしもう遅いようで、今私は未来がなにも見えていない。
もう殺してくれ。
私はこれ以上頑張れる気がしない。
私は鬱だろうか?いや違う。
涙が出ないし、腹は減る。
生理現象も当然現れる。
今もこうやって文字に起こしている。
私は病気だろうか?薬で治るなら治してくれ。しかし病気でなかったら、ただの怠惰であるという烙印を押された場合、私は、私はいよいよ本当に死を選ぶかもしれない。
寝坊も遅刻も失せ物も全て私のせいだったら。
コミュニケーションが劇的に苦手で、すぐ相手のことを考えない発言をして、感情を行動に起こしたのが私のせいだったら。
私の責任だとしたら。
もうなんか疲れた。でも今だって誰かに助けを求めている。
だからネットにこんな稚拙な文章を投稿できるのだろう。
殺してほしいが同じくらいまだ生きたいのだ。やり残したことがあるから。
誰か私を助けてくれ。
春夏冬日録 君塚小次郎 @cakecake258
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