第3話 イヌニバス

※前説:この時に設定されたお題は「犬の雑草」




数万年後の未来。人間と共同生活を経験しすぎた犬は進化し、人間のように話し、人間のように歩けるようになった。街は人と犬で溢れかえり、ペットショップから犬は消えた。

22021年、原宿は竹下通り。今日も奇抜なファッションをした犬が、尻尾を振りながら、高いヒールと硬い革靴を鳴らして歩くのだ。


いやそれは「犬の雑踏」。



うちの近所にはかなり広めのドッグランがある。私は犬を飼っていないが、犬が好きなので妹と良く犬を愛でに行く。

「わぁ、お犬がいっぱい!」

不思議なことに、妹がドッグランに行くと、ドッグランを駆け回っていた犬の多くがこちらに踵を返し寄ってきて、吠えるのだ。まるで妹が犬の長で、歓迎でもされているように。

妹はいつも無邪気にこう言う。

「わんわん聖歌隊だね」


いやそれは「犬の合唱」。



俺は飼い犬の飯田ポチ。飯田家の柴犬だ。俺は今退けぬ戦いを強いられている。一番可愛がってくれる次女の桃花が、近所の野良犬どもに追いかけられたのだ。全くもって許せない。俺のご主人に怖い思いをさせるなんて!ぶっ殺してやる。

一対四だ。不利である事は百も承知。しかし!漢一匹、飼い主の無念も晴らせずで何が飼い犬か。俺はやるぜ。そこで見てな、ご主人。

五匹は一斉に牙を剥き、襲いかかった今、一匹の漢の死闘が幕を上げたのだ!

「ポチぃぃぃぃぃ!!!」


いやそれは「犬の乱闘」。

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