009 3つ目の手紙

 3つ目の手紙を開く手が微かに震えていた。私が今触れているのはエステラの心の傷。苦痛と恐怖と悲しみと怒りと絶望――そんな感情の渦にのまれて、たった独りでもがき苦しみながら求める魂の叫び。


 茶色い血で汚れた紙に書かれた字は幼児が書いたように大きくいびつで、直線も曲線も関係なくがたがたと震えている。ペンすらもまともに持てない状態だったことがわかった。


 母さん


 ここに書くことしてください まず死ねる薬をストゥルーンに渡して 私に届けて ストゥルーンが教えてくれた 誰かが私を魔女だて密告したて 密告したのわ権力ある人だて 爪剝がされたり高いところから吊るされたり毎日ひどいことされる だから死にたくなる 希望があるならあきらめたくない 家に帰りたいし母さん会いたい けどいつでも死ねるように薬持ってたい もし私か有罪になったら 母さんすぐに逃げて 母さんも危ないかもしれない すごく遠くに逃げて もっと手紙書きたいけどもうかけないかもしれない 手が動かないから 最後の最後まて希望は捨てないよ 駄目だと思うまで耐える 頑張る 母さんお元気で 毎日母さんを想ってる


 愛をこめて       エステラ

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