第15話 ニホンジンを知ってる男
今、俺は背筋が凍り付き、血の気が引いていくのを身をもって感じている。
その理由分かりきっている。インハルド様が言った、「キミってさニホンジンだよね」が原因だ。
……しかし、どうやってわかったんだ?『ユウマ』って言う日本人にありがちな名前のせいか……他に理由が思い付かないな。
それにボロは出していないはずだ。
でもだったらなぜ、『ユウマ』が日本人に多い名前だとわかったんだ……?
「もし俺が、そのニホンジンとやらだったらなにかあるのかな
「いや、特にこれといって無いよ。昔の知り合いに同じ訛りでニホンジンと名乗る方が居たものでね。つい、聞いてしまったよ。本当ただ仲良くなりたいだけかな」
「そっか。それじゃあこれからよろしくお願いいたします。インハルド様」
「こちらこそよろしく。それとインハルドでいいよ」
表裏の無いと信じたい言葉に乗っかり、出された手を見つめ握手を交わした。
この世界にはニホンジンが結構いるようだ。それも今に始まったことでは無さそうだしインハンドと仲良くなって損は無さそうだ。
「信用して貰えたようで嬉しいよ。それじゃあ最初の議題はプランダール伯爵暗殺計画」
ーーーーーー
日が沈み、インハルド様が来られてから約7時間。
ユウマ様とお話があると良い応接間に既に6時間以上が経っている。
何をそんなに話しているのか、なにか失礼をしては居ないだろうかと心配になり自室を落ち着きなく熊のように歩き回ってしまう。
「ジャスミン、居るかしら」
「はい。暇を持て余したジャスミンちゃんはここにいらっしゃいますよ。なにか仕事ですか?ダージリン様」
部屋のテラスにある小洒落た席で紅茶を楽しんでいたジャスミンが元気よく返事を返し、部屋に入ってきた。
メイド達は個々の部屋が与えられているが、ジャスミンはサキュバスの為暴走しないようメイド長であるダージリンと一緒のツインの部屋に住んでいる。
「インハルド様に御夕食の準備が整った事を伝えてきてもらえるかしら」
「あれ?まだいらっしゃったのですね」
「ええ。ずっとユウマ様と話してて」
「なにか共通の話題でも見つけたのですかね?」
「共通話題って拐われたアリス様位しか……」
2人は顔を見合せ頷く。
「まさか……さすがにそんなに酷いことになるはずはない……よね?相手の立場とか理解していきなり襲ったりとかはないはずよね」
「は、はい。そうだといいです……ね。……私ちょっと急いで確認してきます!」
「お願いするわ!何かあったら直ぐに連絡頂戴」
部屋を飛び出して行ったジャスミンは応接間に向かって走る。
「これは血痕!?」
ーーーーーーーー
その頃応接間では邪悪な笑みを浮かべスキルを使うユウマと腹を抑えもがき苦しみ倒れ込むインハルドの姿。
頭部が接してる床には血溜まりが既にできていた。
「も、もう辞めてぐれ……。腹が痛い。頭もぼーっとする。ちぎれそうになる。こ、呼吸も……く、苦しい」
「だ、大丈夫ですか!インハルド様!今助けます!《アストラルリーフ》」
ノックも無く、何者かが部屋には突入してきたは出会い頭に魔法を俺にぶっぱなしてきた。
トゲトゲとした葉っぱが渦を巻き高速で飛び出し俺に直撃した。
「いててて。いきなり何するんだよ」
「ユウマ様こそ何をしてらっしゃっるのですか!インハルド様がこんなにも苦しそうに……あれ」
ケロッと立ち上がるインハルドの目には微かに水が溜まっていたが幸せな表情をし笑っている。
インハルドの側にはジャスミンの姿がある。
「もう大丈夫なんですか?」
ちょっと気まずそうだが満更でもなさそうにハハっと笑ったインハンドはこの状況少し誤魔化しながら説明した。
「本当に申し訳ありません!……またやらかしてしまった。ダージリン様に怒られるぅ」
ことの顛末を聞いたジャスミンは回復魔法を俺に使いずっとこの調子謝り続けで弱って行ってしまってる。
「しょうがないじゃないですか……。血溜まりができてたら普通に……ねぇ……!」
ーーーーーー
ジャスミンは現在、インハルドはたまたま仕事続きで5徹状態でイスから立ち上がった際机に躓き顔面から倒れ鼻血が止まらなくなった。そう聞かされている。
しかし実際は違う。
「そうだ。この作戦をするならスキルとか合った方が絶対いいと思うんだけど、ユウマくんは何か持ってたりするかな?」
俺は冒険者カードを取りだし名前を少し隠すように見せた。
「アバター、グレーターアップ、ウォーターアップetc……」
「なんも特出したものは無いよ。普通のスキルだけさ」
「確かにそうだね……こ、これは!」
「なにか気になるのあったのか?」
好奇心旺盛な少年の様な反応をしたインハルドが見る冒険者カードに顔を近づける。
「これだよこれ。能力自体はランダムマジックの上位互換に辺り、その使い勝手の悪さ故に誰一人覚えることの無いと言われる中級魔法ランダムクローズマジック」
「そんなに珍しいのか?」
「知らないで覚えたんじゃないのかい?この魔法の下位互換のランダムマジックは消費量は一律で自分が使える魔法を使うことが出来て、その上位互換と呼ばれるこのランダムクローズマジックは魔力の代わりに来ている服を代償として使えるんだ」
「服を代償に?それって女魔法使いが使ったら……!」
「あぁそうだ!想像の通りだ。まさに絶景になるだろう。僕もなんどメイド達にお願いしたことやら」
鼻の下を伸ばし見た目に合わないすけべなことを言っているインハルド様。
これは趣味が合いそうだ。
「その代償の服は何枚使うんだ?ほら、下着や肌着、ローブとか色々あるだろ?」
「そこも完全にランダムだ。だけど代償枚数が多いほど魔法に込められる魔力が変わってくると言われてるよ」
「おいちょっと待ってくれ。俺がこれを覚えているという事は昨日、ダージリンさんは俺の目の前でこの魔法を使っていたと言うのか!?なんということだ!」
「なんだって!居るのか!この屋敷に!ランダムクローズマジックを使う人が!」
「ああ。さっきここに連れてきてくれたメイド長のダージリンさんって方が多分使える」
「あのいい感じの巨乳でサラサラとした紫色の髪で、如何にもメイドっぽい少しクール感あるあの子が!」
「そうだ!」
「もう我慢出来ない!僕は先に行くぞユウマくん!」
美青年が何をとち狂った事を言っているのだとツッコミたくなるが、全くもって嫌いじゃない。
むしろそのノリ大好きだ。
「よし、行くぞ」
応接間を抜け出し、俺とインハルドはバレないようこっそりとけど全速力で廊下を渡り、部屋を開けて回った。
「普通にメイド長の部屋って書いてあったね……」
息は切らしてないが少し疲れた声で言うインハルド。
「お、おう。そうだな」
「では開けるぞ!
「任せたぜ!」
俺はポンとインハンドの肩を叩いた。
この世界に来て2人目の友人と言える人間だ。次会うときはこの楽園での思い出を肴に酒でも飲みたいな。
賢者タイム顔負けの事を考えているとポタッと一滴の水が落ちた。
それは燃え上がりそうな赤く染まりきった血だった。
「……すまないユウマくん1回出直そう」
「こんなことで鼻血出すとか幾つだよ。ガキじゃあるまいし……で、治まりそうか?」
「あははは。ごめんね。普段はここまで早く出ないのに……」
「早さとかはいいから治まるか?治まったら第2回戦行きたいが」
「うーん。治まらないかな多分だけど、悪いけど、1回横になるね」
実際はこんな感じで男子高校生的なノリをやったら興奮しすぎたインハンドが倒れたってだけだった。
あんな嘘でジャスミンを騙せると思ってなかったが誰かさんが言った嘘は1%の事実で何とかあるものだな。
ーーーーーー
「忘れておりました!御夕食の準備が整いましたので急ぎめにお願いいたします」
青ざめていたジャスミンがハッと我に返り、慌てた様子で言った。
「ありがとう。鼻血が止まったら行くよ」
「鼻血を出しながらだと、美青年もあんまカッコつかないな」
「ちなみにダージリンさんはそこにいらっしゃるのかな?」
「はい。私とダージリン様ルフナ様はお付きにならさせて貰います」
「さっきのセリフは取り消すよ」
?を浮かべたジャスミン。
「今すぐ行く!」
力強くインハルドは言い放った。
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