転生鬼譚

栄杜 拍

序章

序章

「ああ、はらへった。」


あの時は、本当にどうかしていた。

真っ当な思考ではなかった。

正に魔が差さした。


「みず・・・」


確かに、平坦な人生に嫌気が差していたことは認めよう。

満たされない日々に渇いていたことも、刺激に飢えていたことも認めよう。

その結果がこれとは随分じゃあなかろうか。


「にくくいてぇ。」


確かに人間はあまり好きではなかったさ。

好きか嫌いかと問われれば嫌いだ

ねたみ、そねみ、恨み、辛み。

俺も含めて人類皆、きょうだい


「おちゃ・・・すぽどりぃ・・・こーひぃ、・・・さけぇ」


それは言い過ぎか。

俺はさ、太く短く生きたかったんだよ。

どーんと打ち上がってばーんと散りたかったんだ。

人間の汚いところなんか見続けなくて済むように。


「めし・・めぇし・・・」


合わなかったんだよなぁ、時代が。

詰まっちまったら養分吸われて糞になるまで出られない。

皆に優しい世界(笑)。

文句は言わないさ。俺だって都合良く優しさに浸かってたからな。

え?言ってるじゃないかって?皮肉だよ。皮肉。


戦国時代が良かったのかな。憧れに近いものがある。

その時代ときはそのときなりに理不尽があったんだろうけど。

一旗揚げるにはやはり乱世よ。


大なり小なり変化が欲しかったんだよな。

だからこそ魔が差したんだ。


「はらへったぁ。」






あれは、休日の夜。

ベッドに入り、お気に入りのまとめブログをスマホで流し読みしつつ、目を閉じれば始まる変わらぬ日常あしたを憂えていた時だった。


『人間辞めてみませんか?』


そんなバナー広告が目に入った。


普段なら滅多なことでは気にも留めないない俺だが、妙に気になるし目が離せない。

雑多な予想の中から、人外もののソシャゲではなかろうかと予測をした。


ここのブログはサブカル系のリンク先がほとんどであるし、ブラクラ踏まされた等の管理人叩きは見たことがない。

勿論、今までなかったからと警戒しない理由にはならないが、こことの付き合いもそこそこ長いので悪意はなかろうと結論づけた。

自分でその手の検索をしている自覚があることも後押しした。


一時いっときの逡巡。

時間のこと、仕事のこと、休みのこと、金のこと。

ゲームに限らず、一度始めると飽きが来るまで没頭することは自覚している。


思い返せばやはり違和感はあった。


確かに俺は人外のキャラクターが好きだ。

MMORPG等では選べるのであればヒューマン以外の種族を好んで使う。

エロゲであればやはり人外キャラに食指が伸びる。かと言って普通の人種を攻略しないかと問われれば否だ。

話が逸れた。


なぜあれ程までにあのバナーが気になったのであろうか。

立ち絵も説明もないあの一文が。


結果、俺は好奇心?に負けた。

バナーに触れた。


そして人間を辞めた。



















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