第257話~一方その頃地球では~
「……」
「……」
「……」
「……」
どんよりとした雰囲気の中、所々に包帯を巻いたりしたS級探索者達が顔を向かい合わせる。
「……ネットの方はどうだね?」
「ボロックソに書かれてるわね~。またS級を死なせるなんて、日本は探索者の能力はあっても戦闘技術が低いから死ぬんだとか、色々言われてるわ~」
「ネットの声は今はあまり聞かないでおきましょう。妹の件もあって俺嫌いなんですよ。輝久さん、未だ眠る初芝さんを除いて最後まで意識があったのはあなたですよね? 何があったんです?」
「分からない。強いなんてもんじゃなかった。何も出来なかったよ。……近づくことも、距離を取ることも、本当に何もね」
「空君は……どうなったと思います?」
ネットやマスコミは帰還できていない篠崎空を死亡扱いとした。戻ってきたここにいる全員も気絶した状態で状況を確認しにした探索者組合近畿支部長のA級発現者、
つまり、ここにいる誰も篠崎空がどうなったかは分かっていない。死亡確認もされていないのだ。唯一の希望は未だ眠る初芝琴香からの証言だが……。
「……空君は生きてますよ」
「琴香さん……今の発言、本当かね?」
慌てた様子でこの会議室に入り込んだ琴香に対して輝久が問いかける。
「空君は、特級迷宮に放り込まれました。あの人型モンスターに……でも、生きてるはずです、絶対」
「特級迷宮に? 何故……いや、そうか分かったよ、教えてくれてありがとう。この件に関しては箝口令を敷いておく」
理由は分からないが、何かしら理由があってそうなったのだろう。輝久はそう考えて思考を巡らせる。空の家族は未だ眠りについている妹の水葉のみ。
遺族に対しての説明は必要ない。救う手立ては想像がつかない。つまりこちら側の人間から篠崎空を救うことは不可能に近いと結論づける。
「ならば我々がする事は、空君がいつ戻ってきても良いような体制を整えておくこと。そして──」
「やぁ」
「「「「「っ!?」」」」」
輝久さんがまとめようとした所で急に現れた人物に全員が臨戦態勢を取る。
「北垣さん……使徒! 空君を、返せっ!」
琴香が1番に動く。使徒は大して焦る様子もなくその振り上げられた拳を受け止め、再度話しかけようとした。
「初芝さん、少々不味いことになってね。慌てて私が来たんだ。だからまずは話を聞いて欲しい」
「……だったら、空君をこの場所に呼び戻してよっ!」
「それは出来ないんだ。王が許さない。それと詳しく話せる状況じゃ無さそうだね。簡潔に言おう……他の王達が動き出した」
ピクリと反応を見せた琴香が大人しくなる。周りの人達もそれを見て怪訝な顔は浮かべつつも、その会話に着目していた。
自分達では理解することも出来ない。しかし1番事情に通じている琴香の反応。その続きを期待するのは間違っていない。
「エフィーちゃ……エフィタルシュタインと同じ王達が、ですか?」
「そうだよ。いずれ巨大なゲートが開くんだ。いや、もう開いたかもしれないけど。……予想以上に動きが早い。国が消える可能性もあるし、だから初芝さんが代わりに守ってくれないかい? 頑張って持ちこたえて見せるんだ」
「私に? ……あなたの方が、何倍も強いのに?」
「私たちは中立だからね。いや、中立と名乗っていたら今の動きは違うことになってしまうな。公平……うん、こっちの方が合ってる」
「意味が分かりません! 守れ? 王達から? なら空君を奪った理由は? あなた達の言動も全部が分からないです!」
「別に理解しなくていいさ。救いたいなら守れ。それが王の言葉なのだから……確かに伝えた」
「待っ──」
次の瞬間には、彼らの前から使徒は姿を消していた。
***
「つまり、先程現れた使徒と同じか、それ以上の敵が攻めてくると言う訳だね……」
「にわかには信じ難いが……そうなんだろうな」
琴香自身は攻めてくる7人の王がどの程度の実力を保持しているか理解していない。それに攻めてくる王は6人だと言うことも把握していなかった。
それでも空が戻ってくることに賭けて、彼らに最大級の警戒を促せるような発言を取ったのだ。輝久と傑の2人が唸りながらも肯定の意思を見せる。
「具体的な対策は……無いな」
「えぇ、ありません。ただもしもの時は、死ぬ覚悟が出来やすい……それだけです」
この事実を知ったからと言って、彼らが強くなるためのトレーニングをした所で意味は無い。再発現などが起こる可能性も無いに等しい。
「本部長!」
「大本、一体どうした?」
大本……A級スピード系探索者にして探索者組合近畿支部支部長の男が会議室に飛び込んでくる。血相を変えたその様子に輝久も戸惑いを見せつつ問いかけた。
「アメリカで、超巨大ゲートが出現しました!」
滅びへのカウントダウンが始まった。
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難産です。頑張ります
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