第210話~告白~

 S級迷宮とS級探索者の情報が世に放たれた。ツ〇ッターやらのSNSで瞬く間にトレンド入りを果たす。


 海外でも結構大きく取り上げられたな。特に平塚さんが昔助けに回った国では、今度は我々が助けに行くべきだとの声が上がってもいる。


 ただ現実的にS級のいない国が大半なので、国としては承認できないだろうと言うのが日本の見解だ。あ、トレンドに#日本終了が入ってる。まだ終わってねぇよ笑。


 なになに……うわっ、S級とは言え未成年に戦いを強要するのは良くないだって。今更だし、別に強要されてないんだけど……。


 お、日本の優秀なクリエイターだけでも逃げてくれ、なんて海外の呟きが翻訳されて流れてきた。


 日本のトレンドの1位は#S級、2位は#迷宮、3位は#探索者だ。下の方には……ネタ臭が強い奴が多いな。#人生サ終まで残り2日、#最後の晩餐、#2期&3期決定……3つ目は普通に違うアニメ作品の奴だ。



「うわ~、空君のあることないことが色々書かれてますね」


「そうですね……え?」



 俺の隣で同じようにスマホを触っていた琴香さんの言葉を肯定してからあることに気づく。



「なんで俺の部屋に居るんですか?」


「来ちゃいました。てへっ」


「可愛いけど鍵かけてたはずなので恐怖の方が勝ってます」


「合鍵でこっそり入っちゃいました!」


「理解したから怖くないわけじゃないんだけど。なんで持ってるんですかぁ……?」


「えへへへ」



 チャラっと音を立て、笑顔で鍵を見せてくる琴香さんに問いかけると笑って誤魔化された。一体どうやって手に入れたんだよ……。



「空君、迷宮攻略を行う明後日まで……正確に言うと今日はもうは夜なので、残りは一日ちょっとだけです」


「……えぇ」


「……えいっ」



 何を思ったのか、急に琴香さんが俺の腕を取ってきた。自然と大きな胸が腕に押し当てられる。



「ちょ、いきなり何するんですか?」


「……空君にとって今の私はどの位置にいます? 友達ですか? 恋人ですか? 都合の良い女ですか?」



 琴香さんの言葉には正直言って虚をつかれた……。待たせすぎた、という事だろうな。恋愛が分からない、なんて子供っぽい言葉を琴香さんは受け止め、ずっと待ってくれていた。


 俺はそれをずっと引き伸ばしにしていた。言い訳はある。最初は上記の理由も含まれていたし、何より俺自身の状況が落ち着いてから結論を出そうと思っていた。


 と言ってもその考えは俺の中では古い。既に結論は特級迷宮に潜っていた1ヶ月の間に出ているからな。ただ、琴香さんにはそれを伝えていない。


 最初に考えていた平穏な生活を取り戻してから、と言う事が終わってなかったからな。エルフ達やらのゴタゴタを終わらせてから告げるつもりだった。


 でもここでS級迷宮と言う障害が現れた。琴香さんがこんな行動を起こした理由にはS級迷宮による焦りも含まれているだろう。今ここで、彼女は決めるつもりだな……。


 真剣な眼差しだ。それでいて不安から瞳も揺れている。腕に押し付けられた胸から鼓動が伝わってきた。明らかに速い。彼女も緊張している事は確実……。



「琴香さん……俺は特級迷宮でドラゴンに襲われた時、死を覚悟しました」


「……はい」



 前を向いて俺は語り出す。腕を掴む琴香さんの力が少し緩んだ。俺のちっぽけな、答えを出す覚悟を感じ取ったのだろうか? それとも急に質問をはぐらかされて混乱したからだろうか?



「……まずとっさに思った事は、後悔ですね。俺はまだ謝らなくちゃいけない人がいたんです」



 ずっと俺が記憶から封じ込め、4年もの間、お墓参りもできなかった穂乃果の事だ。



「次に、妹の水葉の安否です。まだ目覚めていない水葉を1人にさせてしまうのが怖くて……」


「当然、ですね……」



 琴香さんが相槌を打ってくる。あぁ、今の琴香さんはどんな顔をしているだろうか? さっき見た真剣な表情が怖くて見れないや……。でも、ちゃんとこれだけは目を見て伝えたい……!



「そして最後、本当に死ぬと思った時にこんな言葉が口から漏れたんです。『好きな人と約束した。だからこんな所で死ねない』……貴方と直前に交わした約束です」


「っ……!」



 どんな顔をしているのかを見るのが怖くて、ゆっくりと顔を琴香さんの方へ向けながらその言葉を告げた。最後の言葉で琴香さんの瞳が大きく開かれる。その驚いた顔も可愛い……。


 それと俺は今、どんな顔をしているだろうか? 笑顔で言えていれば良いんだろうけど……顔を真っ赤にして、引きつった笑みになっちゃってるんだろうなぁ。でも、ちゃんと言わなきゃ。



「あの時に自然と零れた言葉だったんですが、どうやら俺は琴香さんの事をとても好きになっていたようです……だから、俺と正式に付き合って下さい」


「~~っ!?」



 自分でも中々気づかなかった想いを今、琴香さんに伝えた。好きになった人は過去にもいたけど、こうして想いを伝えられたのは初めてじゃないかな?


 琴香さんの口が小さくポカンと空いた。何かを言おうとしているのか綺麗なピンク色の唇が震える。



「……えっ、と……ほ、本当、ですか? 私で……歳が2つも上で、頭も悪くて、デートは遅刻もするし……何より私、重たいですよ? とってもとってもですよっ? それでも私なんかで、良いんですか……?」



 琴香さんは俺の腕から手を離し、漏れ出る嗚咽を抑えようとしていた。そしてポロポロと頬を流れる涙を一切気にせず、少しだけ鼻声の琴香さんが問いかけてくる。



「俺は琴香さんが良いです。あとそれは俺のセリフですよ? ずっと琴香さんを待たせて、根暗で、決断力もなくて……大した告白も出来ない俺なんかで良いんですか?」


「そ、空君が良いですっ! 空君しかありえませんっ! ……ぁ、っと、すみません……」



 思わず立ち上がってしまった琴香さんが恥ずかしげに縮こまる。俺も琴香さんが可愛すぎて思わず両手を取ってしまった。



「ひゃわぁっ!?」


「ふふっ、すごい声でましたね……良かった、ちゃんと手、繋げます」


「? ……あぁ。空君、私を抱きしめることには抵抗無いのに手を繋ぐのは恥ずかしがっていたんでしたね」



 お互いが指を絡み合わせるように両手を繋ぎ合う。お互いの指の動きが止まると、お互いの上目遣いの視線が交差する。自然と笑みがこぼれた。

 


「……私、生まれてから今が一番幸せです」


「これからもっと幸せにしますよ。告白は唐突だったので正直普通すぎましたけど、プロポーズはもっと豪華にしますから期待しといてくださいね?」


「~~っ! そ、空君の女たらし! スケコマシ! いつもチキる癖にこんな時だけずるいです! 反則ですっ!」



 何故だろうか? 罵倒された。だがそう言いながらも琴香さんは手を離してくれない。あ、でも目は逸らされた。指を解こうとする。あ、目を向けられた。



「……そう言えば空君、私を待たせて悪いと思ってますか? 思ってるなら私の言うこと1つぐらい聞いてくれませんか?」



 そう問いかけてくる琴香さんが名残惜しそうに指を解く。さすがに繋ぎっぱなしはしんどかったらしい。それよりも待たせて悪いと思ってるか、だと?



「当然です。何なりとご命令を」


「今日一日、空君を自由にさせてください」


「一つだけ言うことを聞くお願いをこれでもかと利用しましたね」



 しかも今日1日だけ、と言う条件があるから俺の心象を悪くさせない線引きも完璧だ。



「兵士が忠誠を誓うのにも対価が必要なように、好きな人を好きで居続けるには好きな人と過ごす時間が必要なんです……ダメですか?」


「いいえ全く。でもそんな好きって何度も呼ぶのは止めてください……恥ずかしいので」


「大好きです空君!」



 そう言って琴香さんが飛び込んできた。慌てて受け止めるも、そのままベットに倒れ込む。決して琴香さんが重たかったとかそういう訳では無いからな。


 ……はいそこ、琴香さんが重いと体重が重いをかけたギャグとか思っただろ。違うからな! もし声に出してたら殺されてたからな。



「えへへへっ。幸せ~」



 琴香さんが微笑みながら俺の胸に顔を擦り付ける。耳まで真っ赤な顔が恥ずかしくて隠したいのだろう。何この可愛い生き物? この人の告白をずっと保留にしていたクソ男はどこのどいつだ?



「ひゃっ……」



 ……はい、俺です。ごめんなさい。という訳でこの可愛い生き物をギュッと抱きしめた。……張り詰めた空気だろうとなんだろうと無に帰す事ができる破壊力だね、これは。


 強ばった体の力は抜けるし、思考能力も低下する。琴香さんの事しか考えられない。この状態がずっと続けば良いのに……そんな考えへと導かれる。


 何分間そうしていたんだろうか? 黙ってお互いの熱を感じ取りながら、呼吸音と微かな布擦れの音だけが部屋に響き渡る。



「空君……良いですよね?」



 琴香さんは俺の上に乗っかっているはずなのに、何故そうなるのか分からない上目遣いで尋ねてくる。朝起きたてで、ちゃんと意識が覚醒していない時のような目をしていた。


 琴香さんがなんの問いをしているのか、ここまで来て分からない奴は小学生以下の子供だけだろう。だからこそ当然、俺の答えはこうだ。



「ふふ、ダメです」


「……えぇぇぇぇぇぇっっっ!?!?!?」



 呆気に取られた琴香さんが、遅れて大声を上げる。



「だってもう夜の12時を過ぎちゃってますから。琴香さんのお願いはもう聞きません」



 物凄い速度で起き上がった琴香さんが時計を確認する。確かに時計の針は12時5分を指していることを確認したのだろう。ベッドの上で崩れ落ちた。



「あぁぁぁぁぁ私のバカァァァァ!!!」



 やる時にはやるタイプの琴香さんだが、爪が甘かったようだ。自分が眠るまで、なんてお願いにすれば良かったのに……でも、お陰で助かったよ。



「琴香さん、こっち向いてください……今は、俺のことだけ見て下さい」


「え?」



 うなだれる琴香さんは予想以上にショックだったのか、俺の言葉が届いてないようだった。なので少しだけ強引に、顎くいで無理やり俺の方に顔を向けさせる。



「空く──!?」



 琴香さんの言葉を俺は自らの唇で黙らせた。まずは優しく触れる程度に。驚きで開かれた琴香さんの綺麗な瞳と目が合う。


 うん、やっぱ唇って思った以上に柔らかいな。過去にした時はされた側だったから実はあまり覚えてなかったんだけど……それより鼻とか歯とか当たらなくて良かった。これで当たってたらクソダサかったな。


 琴香さんも何か言おうとしていた。だが結局言葉にはならなかった。やがて落ち着いたのか現状を受け入れる余裕が出来たのか、または諦めからかは分からないがそのまま再び沈黙が訪れる。



「…………ぷはっ……はぁ、はぁ」



 最後の方には琴香さんの方から俺の頬に手を回して止めさせてくれなかったが、ついにその時が終わる。とっさの鼻呼吸だけでは苦しかったのか、高揚感があったからかは分からないが呼吸が荒くなっていた。



「あ、あの──」


「琴香さんのターンは終わり。ここから俺の番です。初めてのキスは琴香さんからでしたけど、恋人になってからの初キスぐらい俺からさせてくださいよ」



 その言葉で、琴香さんが若干及び腰になったような気がした。いや~、琴香さんに良いですか? なんて確認をされた時は焦ったけど、主導権を取り返せて良かったよ。



「思えば今まで散々言ってくれましたね? ヘタレだのチキンだの、意気地無しとかガキっぽいとか……」


「い、言った覚えがない言葉も少々……」



 まだ俺の宣言を聞いて固まったまま、何とか一言受け答えをしただけの琴香さんを優しく押し倒す。琴香さんはほとんど抵抗もなくベットに倒れ込んだ。



「さっきのキスとこれからする事は琴香さんにお願いされたからでは無く、俺自身の意思です……もちろん、構いませんよね?」



 片手で体重を支えながら、もう片方の手を彼女の頬に伸ばす。顔を琴香さんに近づけていき、耳元でそう呟いた。



「……は、い」



 いつもの押しの強い琴香さんはそこには居なかった。そこに居たのはただの初々しい女の子だ。再び彼女の唇を奪うことから始まる。先程よりも激しく卑猥な音が部屋に小さく、けれどとても大きく響いたように聞こえた。





 キスをしながらお互いの体を起こし、座って向き合った。ピチャピチャと舌と唾液の絡まる音が耳に届き続ける。



「んっ……ふぁっ♡」



 手が自然と胸に伸びた。冬なので厚いパジャマ越しだったが、思ったより固いな。ただなされるがままの琴香さんに変わって、ゆっくりとボタンを外していく。


 パジャマ越しでも強烈な印象を放っていた胸の谷間が姿を現した。していたのはスポブラだ。でも薄いピンク色で可愛い。形を崩さないためだから、当然パットは付けていない。それで両手でも覆い包むことか出来ないサイズかよ。



「い、1番可愛いの、選んだと思うんですけどどう……です? 変じゃないですか?」


「全然可愛い。すっごく……エロい」


「~~っ。な、なら良かったです。……続き、は?」



 顔を手で隠しながらの問いかけに本心で答える。正直ブラは一香さんが適当に干してた奴の方が色気はあったはずだが……今は琴香さんの圧勝だ。


 それを聞いてニヤける口元を隠そうとした琴香さんと目が合う。少しだけ見つめあったが、琴香さんからの催告の言葉で再開しだした。


 ピンク色のブラを捲り上げると、絹のような純白の双丘が顕になる。その山頂にはブラよりも綺麗なピンク色のつぼみがツンと存在を主張させていた。



「ふひゃぁっ……ぁぁ……んっ♡」



 軽く口に含んでみる。不思議と甘く感じた。舌で転がしたりちょっとタピオカのように吸ってみると、琴香さんの喘ぎ声が耳に入る。それが俺の心の嗜虐心と性欲を加速させた。



「や、ぁっ……空、君……♡」



 もう片方の胸に手を伸ばし、できるだけ大きく広げて掴む。初めは優しく揉みしだく。片手だけじゃ半分も収まりきらないほどの大きさだ。


 段々と強く、激しくする。揉むペースも上げていく。時々、ピンク色の蕾を指でクリクリと弄ってあげる度に今まで聞いたことも無い琴香さんのエッチな声が漏れる。


 琴香さんの声と俺の息が荒くなるのに比例していた。不意に頭に手が回され、抱きしめるように胸に包まれる。



「……あはっ♡可愛いです♡」



 鼻が胸に埋まって呼吸が出来ない。こんな死に方なら最高だな。そんな考えが頭を過ぎるほど……おっと、さすがにその死に方は恥だな。


 名残惜しいが、俺は顔と手を彼女の胸から離した。唾液で少しピンク色の蕾が光を反射させるのが、これまた男心をくすぐる。





 ……さて、落ち着け俺。ここからしくじるのは絶対にダメだぞ。この後は優しく丁寧にあぁして、こうして……。うん、即席脳内シミュレーションは完璧だ。



「……あ、あの、空君」


「なんです?」



 琴香さんは頬を赤く染め、とろんとした目を潤ませていた。だが俺から視線を逸らし、そして可愛い声を出す。しかし覚悟を決めたのか、俺の首あたりに両手を回して顔を近づけてきた。



「その……いっぱいいっぱい、愛してください……ね♡?」



 恥じらいを持ちながらも耳元で呟かれた琴香さんの甘く妖艶な囁きに、俺の理性は完全に崩壊した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 6000文字越えは草……ふぅ。

 さすが空! 読者にできないことを平然とやってのける! そこにシビれる! 憧れるゥ!

 来いよ運営! 規制なんか捨ててかかってこい!

 byチキンの作者より


 ※警告来たら改稿します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る