第121話~話し合い~
部屋に入ると、ヘレスが入ってきた扉を閉める。その場に集まっていたのは俺、サリオンさん、ヘレス、クルゴンさん、エフィーの5人だ。
『おはよう、待っておったぞソラ』
「おはようございます」
『それでサリオンよ、儂を呼び出すほどの出来事とはなんだ?』
クルゴンさんが急足で話を進める。と言うかこの人、事情も何も聞いてないんだ。朝起きたら集まりに来いって言われただけの可能性が高い……族長なのにね……。
『簡単に説明するとじゃな、精霊様とその契約者のソラが、ララノアのお住まいを見られ怒りを買っておられる』
『は? ……そう、か……』
クルゴンさんは一瞬だけ目を丸くしたが、平静さを保とうと言う意思の見える返事をする。
「サリオンよ、早く事情を説明するのじゃ。昨日は主人が怒っておった故、我はあまり強く言わなかったが……我自身も怒ってある事、承知してあるのじゃろう……?」
エフィーが胸ポケットから出てきて圧を掛ける。エルフの3人が軽く礼をしたのち、サリオンさんが口を開いた。
『精霊様にソラ、お二人もララノアのお姿を見たじゃろう? 本来のエルフとは違う肌の色に髪色を』
ララノアちゃんの姿を思い出す。確かに見た目は完全にダークエルフだったな。いや、種族的にはエルフなんだろうが、地球の創作物でいちばん当てはまるのがダークエルフだったわけだが。
『あのようなものは、普通のエルフからは生まれん。……じゃが、ララノアは違った。……彼女は生まれながらにして、闇の大精霊様の器なのじゃ……』
闇の
『闇の大精霊様の力は強大。それ故に、器となった者の魔力や髪の色などにも変化を与えてしまう。そしてその力を、ララノアはまだ制御できない……』
……そうか。ララノアちゃんを監禁してたのは、ララノアちゃんが暴走して周りのエルフを傷つけるのを防ぐために……。
『少しだけ昔話をしましょう。……今はララノアに宿る闇の大精霊様ですが、元は別のエルフがそれを担当しておりました……ヘレスとララノアの母親です。あの子の母親は、ララノアを産んだ際に亡くなりました』
あぁ……闇の大精霊の器が、自分の娘に引き継がれたのか。闇の大精霊の力が強くて出産という力が弱まる時期に母親が耐えきれず、そのままララノアちゃんに……。
『本来、精霊様の契約者となる事は誇る事。しかしララノアの母親は亡くなり、生まれたばかりで力のないララノアが闇の大精霊様の器となるには早すぎたのじゃ。そして見た目も変わり……裏で里のエルフ達からは、忌み嫌われるようになったのじゃ』
「……は? 忌み嫌われる?」
……つまり、母親殺しの罪を着せられ、見た目が違うからと差別され続けたと……。あぁ、そっか。だからヘレスは先ほど俺に尋ねてきたのだ。
肌の色とかは大丈夫なのか? と。ララノアちゃんはそのせいで里のみんなからいじめられ、不衛生な場所で監禁されたりもした。
だがララノアちゃんは、自分を大切にしてくれていたお姉ちゃんのヘレスを守るために、自分が何か酷いことをされる事も厭わず、俺にお願いしてきたのだ。……なんて、強い子なんだろうか……。
「あなた達は、ララノアちゃんのその境遇を放置していた、と……?」
『その通りだ』
その問いかけにはサリオンさんではなく、クルゴンさんが答えた。しかも、即答で……。
「っ! ララノアちゃんがあんな扱いを受けて、族長や戦士長のあんたらは、何とも思わないのか!?」
先ほどの問いかけが、まるで予め示し合わせたような言葉だった事、その内容があまりに残酷だった故に、俺は声を荒げて尋ねた。だが……。
『良い訳があるか! 私の愛した妻との愛の結晶だぞ! 娘、なんだぞ……! 良い訳が……良い訳があるはずがない! ……だが、私はエルフの里を治め、統治する者としての判断を下すしか無かったのだ!』
ダンッ、と床をコブシで叩き、今までの印象からは想像もできない声に、思わず俺も怯んでしまう。だが、考えればそうだ。ララノアちゃんにはヘレスがきちんと付いていた。
昼間にララノアちゃんを外に出せば酷い目に遭うかもしれない。だから大変な訓練を終え、夜に自分の妹と会う時間を捻り出していたんだろう。
あの暗闇では掃除もまともに出来てなかったのも頷ける。あの日、夜に連れ出していたのも遊んであげていたとか、そんな感じだろうか……?
『ソラよ、納得してくれとはいわん。じゃが理解はして欲しい。クルゴンは里全体の安寧を考えて……ヘレスも、自分に出来る事をやっておるのじゃ……』
サリオンさんにそうまとめられて、俺は少しの間、何も言えなかった。だって……俺はあくまで部外者だから。
俺がここに来るまでに、色々な葛藤やらもあっただろう。それをポッと出の俺が何かを言って良いのか……? 今更ながらそう考えてしまった。
「……そうだ。サリオンさん、ララノアの命は大丈夫なんですか?」
『っ……!』
その反応を見て確信した。ララノアもいずれ闇の大精霊の力に耐えられなくなるのではと思ったが、当たりだったようだ。
「……エフィー、闇の大精霊の力を抑えたりする事はできるか?」
「……無理じゃ……。全盛期なら無理矢理にでもできたが、今は……」
「そうか……」
エフィーでも無理だったか。昔のエフィーなら無理矢理できたって発言から、つまりはそれ以外の方法を知らない可能性も高い。今回は期待できそうにないだろう。
『……一つだけだが、ある』
突如、クルゴンさんが小さく呟いた。
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作者氏、下がり続けるフォロー数とランキングに恐怖を覚え、ゲリラ投稿を決行&今日中に次話投稿も決意。
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