第114話~事案~
「はぁ……何やってんだ、俺は……」
皆が寝静まった深夜に、俺は部屋から抜け出して頭を抱えてそう呟いた。エフィーには食べ物をたくさん渡しておいたので、食べ終わるまでは夢中で俺の言葉なんて気にしないだろう。
俺は再発現である事(本当はエフィーとの契約だが)をバラした。そのお陰で、これ以降俺の力を怪しむ人はいないだろう。
これで……これで、何になったんだ? 俺が怪しまれるのが嫌だったから話しただけじゃないか? 逃げただけじゃないのか?
ただ重要な秘密をバラすかバラさないかのプレッシャーに押しつぶされそうになって、その結果がこれだ……。
くそ……何もかも全部を投げ出したくなる。全部話して楽になりたいなぁ……。いやいや、何考えてんだよ俺は。
少し疲れただけだ。このままじゃ色々と変なこと考えてしまう。落ち着いてまとめよう。今回の一件で力を隠す必要は無くなった。
つまり精神的な負担は減った……。でも、そうじゃない。バラした事で楽になった……なってしまった。いつものうっかりではなく、自分から……逃げて……。
この感覚をもし覚えたら、俺はさらにバラして楽になろうとするだろう。もっと楽になりたい。隠し事なんて嫌だ、面倒くさい……そう思ってしまう。……忘れるんだ、この感覚は、危険だ……。
じゃないと……いずれ俺は、エフィーや琴香さんについてもバラしてしまう可能性があーー。
「主人、ごちそうさまなのじゃ!」
「っ! おう、そうか。お腹は膨れたかエフィー?」
いつの間にか沢山……とまだは行かないまでも、量はあったはずの食べ物が嫌いすっかり消えていた。食べるの早くないかエフィー……いや、俺がそれだけ考え込んでただけか……。
「うむ! 我は満足じゃ!」
「それは良かった。ごめんねエフィー、多分明日以降も窮屈な思いをさせると思うけど……」
「別に……構わんのじゃ。ただし、一つだけお願いがあるがの!」
ドヤっと言いたげな顔でエフィーはそう言ってくる。今の俺には断る権利がなく、自分の意見を確実に押し通せると確信した顔つきだな。
「俺に出来る事ならな?」
あらかじめ保険を掛けておくか。
「うむ……ちょっと抱きしめて欲しいのじゃが」
「……今なんて?」
「ちょっと抱きしめて欲しいのじゃが、じゃ! 2度も言わせるでない! 主人、早くしてほしいのじゃ!」
「お、おう……?」
唐突にそんな事を言われて戸惑う俺を置いてけぼりにし、両手を広げて待つエフィーの言うがままに俺は抱きしめた。
……うん、温かいな。ちゃんと温もりを感じ取れる。生きてる……。一番最初に思った事はそんな感じだ。何故? と言う疑問は残るが、今は別に良い。
ただこうしてエフィーを抱きしめていたい。……こいつ、やっぱり見た目通り、いやそれ以上に軽くて華奢だな。
ふぅ……何というか落ち着く。心が浄化される感じかな? さっきまでの不安や焦りとかを、一時的にとは言え忘れさせてくれる。
最初はそんな自分の感想で一杯一杯だったが、次第にエフィーの方に意識を持っていかれる。俺は彼女の脇の下に手を回していたが、エフィーの方は俺の首元に手を回していた。
「どうじゃ? 我の肉体を存分に感じとって、少しは落ち着いたか主人よ?」
俺の耳元で優しいトーンでエフィーの声が入る。
「誤解を生む発言はやめてくれエフィー……でも、うん、落ち着いたかな……」
でもエフィーの言葉通り、心が晴れやかになった気分……とまではいかないまでも、落ち着いたことは確かだ。
こいつ、俺の様子がおかしいことに気づきつつも、さもポンコツのフリをして様子を伺っていたのか。いや、ずっと俺のポケットに居たんだ。気づかない方がどうかしてるのかもな。
「でも、もう少しだけ……こうしてて良いかな?」
ギュッと、再びエフィーを抱きしめて尋ねる。
「もちろん構わんのじゃ! ……ふっ、堕ちたのじゃ」
「こちょこちょ〜!」
「ひゃうっ!? あはっ! あはははっ! や、やめ、やめろ〜!」
「ふっ、堕ちたな……プッ、あはははははっ!」
何というか、いつものノリに戻った事で笑う余裕もできたようだ。……なんか、凄く懐かしい感情だ。本気で笑った事なんて、いつぶりだろうか……? いや、エフィーが来てからはしょっちゅうだな。
「む、主人よ、誰か来たようじゃ」
そう考えていると、エフィーが真剣な眼差しで告げてきた。そちらの方向を見ると、次第に一人のエルフが現れる。サリオンさんだった。
『ソラよ、少しだけ話が…………ふむ、2人は本当に仲が良いのう』
「「っ!?」」
俺は慌てて端から見たら犯罪スレスレだった、膝の上に跨ったエフィーを横に降ろした。……見られたのがサリオンさんで、本当に良かった……!
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テスト終わったから唐突にゲリラ更新です! え、点数? 俺って過去は振り返らない男だから!
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