第113話~告白~
その後、湧き上がる歓声を俺とサリオンさんは浴びつつ、笑顔でブチギレた琴香さんに《回復》してもらった。
「あの、まだちょっと傷が残っててーー」
「お仕置きです。空君、私もいい加減怒りますよ? 次やったら治しませんからね……?」
「はい、すみません……」
仕方がない。後でこっそり自分の《回復》で治しておくか。そう考えたら琴香さんがジロリと視線を向けてきた。ひぇっ!? 嘘です嘘です!
そうそう、探索者の全員が俺を異質な者でも見るような目を向けてくる。具体的には『あいつ絶対F級とか嘘だろ……』って感じの視線だった。
『惜しかったわね、ソラ』
ヘレスが労いの言葉を掛けてくる。この子は俺がF級って区切りにあってること知らないからな。一方、アムラスの方は俺を化け物でも見るような目で見てきた。探索者さん達よりも酷いっ!
「いや……俺は全力だった。けどサリオンさんは最後の最後に精霊の本来の力を使っただけだった。完敗だよ、あれは……」
サリオンさんの本気……精霊の力は風を自分に纏わせ、自身の速度を上げるような物だろう。そこから派生したものが氷花さんを吹き飛ばしたような貫通攻撃? だ。
そして俺に取っての【縮地】が、サリオンさんにとっての【
……遠いなぁ。どれだけ力をつけたと思っても、いつも自分より強い人がいる。どれだけ戦っても負けっぱなし。エフィーと契約してもこうなのか。……お、落ち着け俺。今、結構ナイーブな気持ちになってたぞ。
『ソラよ、酷い怪我をさせてすまんかったの。まさかあそこまでやりおるとは思いもしなかった故……』
「いえ、むしろサリオンさんの力を引き出せたと言うなら光栄です」
俺は笑顔でそう言う。
『ふむ……どうじゃソラ、エルフの里に住まんか? 待遇は良く出来るぞ?』
「いえ、残念ですが故郷が待ってますので、ご遠慮しておきます」
『年頃の若い女性エルフを付けても構わんぞ?』
「マジですか!? 俺やっぱりここに住みまーー痛たたっ!?!?」
琴香さんに思いっきり右耳を引っ張られた。ほんの冗談なのに……。
「……と、言うわけで残念ですが」
『ふ〜む、では3人ほど付けよう。ハーレムじゃがどうじゃ?』
『ほほう、詳しくお聞かせ願いーー痛い痛い痛いっっっ!?!?』
「……空の、馬鹿……」
今度はいつの間にか現れた氷花さんに左耳を引っ張られた。言葉は分からないはずのに……と言うかこれも冗談なのに……。
「すみません、やっぱりこの話は無しって事で」
『くっ……ならばヘレスも付けよう!』
「喜んでお引き受けしまーー」
『させるわけないでしょ!?』
ヘレスにボカンと頭を殴られた。だ、だから冗談だって……本当に冗談だよ? サリオンさんのノリに付き合っただけで、本気になんてしてないよ? ……ちょっとしか……。
***
その後、訓練は俺とサリオンさんの闘いの熱でそれどころでは無くなり急遽中止となった。そして……。
「ご飯です〜!」
再び夜となり、琴香さんが出てきた美味しい料理に舌鼓する。だが……他の探索者達は明らかに様子が違った。原因は分かってる……俺だ。
もう、隠し通せるものでも無いな。どっちみち氷花さんとの約束で俺が再発現者と言うことはいずれバレる。俺以外の人も、多分そうなんだろうと思いつつも、俺が黙っているから言い出せない感じだ。
「あの、実は黙っていた事があります」
だったらこっちからバラす。主導権を握ってやるよ。そうして実際に俺が口を開くと、みんなの視線が俺に向かう。
「俺は再発現者です。等級はまだ測ってませんが、確実に……。ですが、これは探索者組合近畿支部支部長の大本さんからの命で、しばらくはF級であるように言われています」
一番最初に事実を認める。次に無駄に肩書きの長そうな、庶民からすればとにかく偉いんだろうな〜、と考え且つ事情を知っている人を巻き込んだ。すまん、大本さん……!
「大本、さんが……。篠崎さん、分かりました。それ以上は無理に話さなくても結構です」
一番最初に反応したのは大地さんだった。やはり知り合いだったか。試験の内容を一緒に見て、知り合いっぽく話していたと翔馬からは聞いていたからな。
「ありがとうございます」
よし、ひとまず他の人たちの不安はある程度和らいだ。そして……再び深夜が訪れた。
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