第84話~A級回復系探索者誕生~

「それでは次の方どうぞ〜」



 扉の前にいた職員の人が、私の前にいた人を誘導して部屋に招き入れる。それと同時に赤札……探索者鑑定を受けた人が気落ちした様子で出てきました。


 あぁ、多分ですけど予想がつきます。おそらくE級もしくは空君の元の等級のF級だった人でしょう。自分が選ばれた分、その等級の低さに絶望する人は多いですからね!


 って、そういえばいよいよ次ですね! 精霊として蘇った私ですが、正直どの程度強くなっているのか想像もつかないです! 空君みたいなアタッカーなら実感しやすいんでしょうね。


 でも、綾辻さんは私も強いと言ってくれましたし、B級くらいはあるんじゃないでしょうか? まぁどんな等級にしろ、空君と一緒に行動することは変わらないのですが!


 あ、話は変わります……綾辻さんについてです。彼女、なんだか空君に気がある気がするんです。理由は女の感です! 勘違いだったら恥ずかしいですが……。


 でも、しょうがないじゃないですか……。私は空君が好きです。日に日に想いは強くなっていきます。でも……空君はちゃんとした返事をくれません。


 空君の言い分もわかります。突然のことで混乱もしてるんでしょう。でもこんなに一緒にいて、嫌いって訳はないでしょう。なら……お試しでも良いので、早く付き合いたいです。


 ……結局は、私が綾辻さんに嫉妬しているだけなんですよね。私と違って、綾辻さんはすぐに名前呼びするぐらいにまで親しくなってますし……。


 はぁ、こんな事を考える自分が嫌になってしまいます。それに……なんだか、空君はあまり人と積極的に関わろうとしない気がします。勘違いかもしれませんが……。


 それは私を含めた全員に対してです。いえ、正確にはエフィーちゃんと翔馬さんには無いですね。年月の差……? もしそうなら、時間が解決してくれるかもしれないですね! ……うん、そう考えましょう!



「次の方どうぞ〜」


「あ、はい〜!」



 そんなことを考えていると順番が回って来たので、返事と共に私は扉を潜り、約2年ぶりに魔力を鑑定する魔道具のある部屋へと足を運びます。あぁ、この光景……すご〜く鮮明に覚えています!


 部屋に入ると、目の前に巨大な蒼色っぽく半透明な水晶があります。その水晶は台座に乗せられていて、台座に記録が書かれるそうなんです。



「え? あの見た目で既に探索者? 嘘でしょう?」



 職員の人が私と私の資料を交互に見て変な反応をしていた。こらこら、私お酒だって飲めるんですよ? 成人してるんですよっ? 空君もみんなも酷くないですか? 誰です今私のことを合法ロリとか言った人! このないすぼでぃ〜が見えないのかぁ!



「あ、お手をどうぞ〜」



 取り繕うような態度の職員さんに促されて、私はゆっくりと水晶に手を触れます。職員の人が少し離れた場所にある機械のボタンを押し、鑑定が始まりました。


 あ、なんかこの感じ久しぶりですね〜。こう、体全身を赤外線センサーでスキャンされているような感覚です。いえ、例えの方も実際には受けたことありませんが……。



「……えぇっ!?」


「ふぇっ!?」



 途中で職員の人が大声をあげたので、私も釣られて変な声を出してしまいました。一体どうしたんでしょうか?



「す、すみません! 失敗したのでもう一度お願いできますか?」


「あ、は〜い」



 はぇぇ、失敗なんてあるんですねっ! 見た感じまだ二十代ですし、仕事に勤めてまだ一年も経ってないんでしょう。おっちょこちょいですねぇ。次は気をつけてくださいよっ?



「それではすみませんが、もう一度お手をお願いします」


「は〜い!」



 職員の人に促されて、私は再び手を水晶に当てます。……やっぱりこの感覚、少しだけ嫌な感じがします。早く終わってくれないかな〜? そうすれば空君とデートも再開できるのに……。



「えぇぇえっ!?」


「っ!?」



 そう考えていると、再び職員さんが驚きの声をあげます。一体全体どうしたというんでしょうか? 魔道具でも壊れた? それなら仕方がないかもしれないですね!



「あの……A級です」


「はい?」



 職員さんがボソボソと小さく呟く。いや、驚いで唇が震えていますね。私は今聞こえた言葉が理解できず、尋ね返しました。



「は、初芝さん。あなたはA級探索者になりました……A級の中でもトップクラスです」


「……はい?」



 エーキュウ? 永久? AQ? ……A級。…………A級っ!?!?!?



「A級、ですか?」



 え、A級ってあれですよね? S級の一個下のやつですよね? 綾辻さんと同じやつですよね? …………D級だった私が、A級……?



「はい! 一度は失敗かと思ってやり直したんですが、2度目も同じ計測結果で……ともかく、あなたはA級探索者になりました! おめでとうございます! ちょうど今、上司の人が視察に来ているのでそちらの方を呼んできます! 少々お待ちください!」



 早口でそう言い慌ただしく出て行った職員を眺めながら、私は驚きでポカンと口を開けたまま、少しの間夢見心地にいた。


 その後、職員さんが連れてきたのは大本さんでした。なんでも大本さんは探索者組合の中でも7人しか存在しない地方支部長の1人だったらしいです。ふぇ〜、そんなに凄かったんですね〜。


 さまざまな手続きを急いでこなしつつ、全ての作業が終わり空君の元に戻ってきたのは、午後3時を過ぎたあたりでした。


 ちなみに空君はしれっと付いて来ていたエフィーちゃんと楽しくおしゃべりをしていたらしいです。ずるいですっ!


 その後、空君は埋め合わせをするべく最初に決めていたお店よりも少しだけ高級そうな場所に変更して、楽しい食事を楽しんだりしました!


 あまり一緒に居られなかった不満ですが、十分満足のいくデートになりました! そんなこんながありつつも今日、私は名実と共に、A級探索者として活動することが決定しました!



「琴香さん、おめでとうございます!」



 空君からのお祝いの言葉をいただいた時はそのまま死んでも構わないと思いました!

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