第76話~S級シスコン兄貴~

 その後、俺たち3人は細かい話まで詰めていき、琴香さんは3日後に等級の再鑑定を入れることになった。一応それまではD級と登録されたままらしい。



「篠崎さんに初芝さん、本日は遅くまで残らせてしまい申し訳ございませんでした」


「いえ、気にしないでください。むしろ俺たちとしては信頼できる誰かに打ち明けられてスッキリしてるんです」


「そう言ってくださると幸いです。……それでは初芝さん、三日後に会いましょう」


「はい! 寝坊したり道に迷わなければ大丈夫です!」



 こ、琴香さん……?



「……そ、それでは失礼しますね?」



 まさかの大本さんもそんなことを言われるとか予想外すぎたのか、目を大きく開き頭に? を浮かべていた。大丈夫、すぐに慣れるさ!



「それじゃあ最後に綾辻さんですね。入り口で待ってましょうか」


「そうですね。ちゃんと2人のこと、しっかり監視……ではなく見守っておかないとです!」



 今、監視って言ったよね? 綾辻さんの剣技がすごい理由尋ねるだけだし、別にやましいことも何もないはずだよ?


 俺はそう考えながら、翔馬にメールで話し合いなどがもう少しで終わることを告げる。5秒ほどで『り』とだけ返信が来た。了解を略した返信だな。それにしても早すぎる……!?!?!?


 外に出ると空には夕焼けも見えず、ほんの僅かにオレンジ色の明かりが見えただけだった。青白い街灯の灯りもついており、帰る方には真っ暗闇だろう。



「空、待ってた……」


「綾辻さん、お待たせ。待たせてごめんね」


「良い……大事な話、だったんでしょ? しょうがない……」


「そう言ってくれて助かるよ、ありがとう。あとそれよりも……」



 そんな声で話しかけてきた綾辻さんに詫びを入れるが、彼女は特に気にした様子もなかった。俺はそんな綾辻さんに再度お礼を言いつつも、一番興味を引かれる光景に目を向けた。



「はじめまして、で良いよな? 綾辻烈火だ! 氷花の兄貴してま〜す!」



 S級探索者、綾辻烈火さんが綾辻さんの隣に立って自己紹介を始める。彼は元々人を引き寄せるだけのポテンシャルがある。だがその存在感をより際立たせる物。


 それは……綾辻さんに殴られたと思われる赤く腫れた頬だ。確か俺と別れる前に1発ぶん殴ると聞いていたが、マジで殴られたんだこの人……。



「はじめまして、綾辻烈火さん。篠崎空です」


「はは、はじめまして! 初芝琴香でしゅ……」



 琴香さんが噛んだ。まぁ予想はしていたから特に突っ込むことは無い。



「おけおけ、空君と琴香ちゃんだね。覚えたぜ。それと、俺のことは烈火と読んでくれて構わないから!」


「おお、恐れ多いですよ! 空君もそうですよねっ? ねっ?」


「分かりました。では烈火さんと」


「あれぇっ!?」



 琴香さんが裏切られましたぁ!? と言いそうな表情でこちらを見てくる。いや、俺は別にS級探索者だろうと緊張はしたりしないから……。



「それよりも空君。うちの氷花とはどういう関係だぶへっ!?」


「へ、変なこと、聞かない、で……!」



 烈火さんが笑顔で豹変して俺の肩を掴みながら問いかけてきたが、綾辻さんに脇腹を肘打ちされて崩れ落ちた。



「空、ごめん。うちの兄貴、頭おかしい……」


「いや、気にしてないよ。それよりも烈火さん大丈夫ですか?」


「もちろんだとも。さっきのはむしろご褒ぶほっ!?」



 綾辻さんにまたやられて烈火さんが崩れ落ちる。この人学習しないのかな? いや、わざとだな。これが烈火さんなりの妹とのコミュニケーションの取り方なのか。


 あと、ご褒美って言いかけたよな? 絶対に言いかけたよな!? この人ドMかよ。琴香さんが緊張するほど憧れていた、せっかくのS級探索者のイメージが崩れていくよ。



「…………これが、S級。あぁ、やっぱりすごい人は、頭が私のような一般人とは違うんだ…………」



 琴香さんはなんか悟ったようなことを呟いていた。辛いかもしれないけど、ちゃんと現実を見てくださ〜い!



「それよりも空君。真剣に答えてくれると助かるんだが、うちの氷花をどうやってここまで懐かせたんだ? ぜひ教えてくれると助かるんだが!」


「空、答えなくても、良い……むしろ、答えないで……お願い、だから……!」



 烈火さんに両手を握られて子犬のような眼差しで訴えられるが、後ろから汚物を見るような目で烈火さんを見つめる綾辻さんの視線が怖いので、当然俺は黙りこくる。


 て言うか別に懐かれたって自覚はないな。あ、距離感が少し近い気がしたけど烈火さんを見てると懐かれたのカテゴリーに入るのか? それに理由とか言われても俺が知りたいわ。



「綾辻さんがあぁ言ってるので……」


「ぐっ、確かに氷花の意思、それをねじ曲げようとは思わないな! すまなかった!」



 烈火さんはそう言って後も簡単に引き下がる。お? 綾辻さんには甘いな。さすがは兄弟。なお綾辻さんからの扱いは……。



「だがしか〜し! いくら空君のような優しいやつでも、うちの氷花を任せるには実力が足りんと思うぞ!」



 は? 綾辻さんを任せる? 一体なんの話をしているんだ?



「ちょっ、兄貴。それは誤解……」


「分かってるさ氷花! だが俺はお前の兄貴として、空君を見定めなければいけないんだ!」



 話が全然読めないんだけどっ!? 綾辻さんが誤解って言った気がするから、烈火さんが1人で熱くなってることは確定。だがまだよく状況がわかってない時点で下手な発言はやめた方がいい気がする!



「空君! 烈火さんの言うことは本当なんですか!? 私と言うものがありながら!?」



 えぇぇっ!? なんか琴香さんが参戦してきたんだけど!? この中で会話成立してないの俺だけ!? 俺がおかしいのかっ? しかもさらっと烈火さん呼びしてるじゃん! 恐れ多さどこに置いてきたのっ?



「空君! 俺と勝負しよう!」


「はへっ……?」



 なんか、よくわからんうちにS級探索者に勝負を挑ませた。誰か詳しい説明してくれぇぇぇっっっ!!!



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どーも!途中経過ですが、読者の皆さんの投票は現在エルフ派が優勢です。がんばれ獣人派!

16日の終わりまで受け付けてますので、まだしていない方もよければどうぞ!

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