第62話~VS最上元気~

 2人を無事倒した俺は、タンク系探索者の相手を任せた北垣さんと琴香さんの元に戻った。見ると、もうすぐ決着がつきそうだ。



「はぁぁっ!」



 北垣さんの溜め込んだ力いっぱいの一撃が炸裂し、タンク系探索者の盾ごと吹き飛ばす。それでも起きあがろうとするが、その前に北垣さんが剣を構えた。



「ま、負けた……」



 北垣さんの勝利だ。おそらくタンク系探索者の彼はE級だったのだろう。



「お疲れ様です、北垣さん」


「篠崎君こそ」



 俺と北垣さんはお互いの無事を確認して、ニッと笑みを見せた。



「2人とも怪我は無いですか?」


「無いです」

「無事だよ」



 琴香さんが少し緊張で張り詰めた表情のまま問いかけてくるが、2人の返答を聞きホッとした様子を見せる。



「とりあえずC級1人、おそらくE級が2人ですね」



 と俺が軽く呟く。



「「C級!?」」



 2人がすごい勢いで食いついてきた。



「はい、弓使いはC級と名乗ってくれました」



 わざわざ自分の等級を教えてくれるなんて良い人だよな! これでどのくらい撃破ptが溜まっているかも計算しやすい。ちなみに現在は120撃破pt(推測)だ。



「やはり篠崎君はC級以上の力を持っているのか。今回のチーム分けは一般的に見れば不利だが、実はとても有利に働いてるようだね」



 北垣さんが嬉しそうに話す。



「さぁ、どんどん行きましょう!」


「はい!」

「あぁ」



 そんな掛け声をして、俺たちは再び敵と遭遇するために山の中を散策しだした。



「……ん、罠ですね」



 しばらく歩くと、道の真ん中に不自然に落ち葉が集まった場所を発見する。マンパワーで集めたか、風属性の魔法系探索者で集めたんだろう。


 用途としては落とし穴、隠れみのと色々考えられるが、それは対モンスター用。今回は人間相手だ。ならあれはわざと注意を引く用。


 ……もう少し近づけば即座に何かが起こるな。いや、もう既に手遅れか。



「2人とも、来ます!」



 直後、落ち葉とは逆方向から大柄の男が飛び出してくる。北垣さんの使っている剣の倍ほどの重さはありそうな大剣を構え、地面へと叩きつける。



「ひゃっ!?」



 俺は琴香さんを抱えて後ろへと離脱。驚いて変な声を出していたが気にしないぜ! 北垣さんも間一髪で避けることに成功する。…………違うな、わざとギリギリ当たらないようにしていた。


 強さに差がありすぎて、殺してしまうのを防ぐためだろう。今ので大抵の相手は戦意を失うだろうし。



「避けやがった!? ……ってお前かよ!?」


「え……?」



 俺の動きを見て驚いた顔を見せる男。そして意味の分からない言葉を口ずさんで……いや、思い出した。こいつ、試験前に俺に絡んできた奴だ。



「ここで会ったが100年目! まずはお前から片付けてやるぜ!」


「言いたいことはわかるけど、あったのこれで2度目だよねぇ!?」



 ってツッコんでる場合じゃねぇ!? 男が俺に向かって突っ込んできた。おいおい、北垣さんフル無視かよ。さすがに傷つくぞ?


 男が接近してきて大剣を振るう。琴香さんを降ろして後ろに下がらせる。そしてすぐに短剣を構えた。こっちの短剣じゃまともに受けただけで、短剣ごとやられる。なら受け流す!



「ふっ!」


「くっ!」



 ギィンッと滑らせるように受けたにも関わらず、大きく派手な音が鳴る。こりゃ他のチームも漁夫の利狙いで来るんじゃないか?



「おいおい、他のチームメンバーどうした? 置いてきたの?」


「教えねぇよっ!」



 ちっ、脳筋そうに見えて情報は割らないか。北垣さんと琴香さんは合流してる。こっちに来ないのは俺の邪魔をしないためと、もしもの奇襲に備えてるからだな。


 うん。目の前の男の他のメンバー、近づいてきてるかもしれない他チームの相手の奇襲は2人に対応してもらおう。だから俺は、目の前のこの人に集中するだけで良いか!



「ふはははっ!」



 大剣を凄まじい速度で振るわれる。俺が避けて空振りになったその一撃は、地面に軽いヒビをいれた。


 北垣さんも力を溜めて同じぐらいの一撃を放っていたけど、それを溜め無しで何度も放ってくるのだ。一度でもまともに食らえばおしまいだと、嫌でも再認識させられる。



「避けてばっかだなっ!」


「そりゃ、俺はスピード系だからな!」



 ちっ、いまいち踏み込めないな。雑で派手なだけの大振りに見えて、隙が見当たらない。今まで戦った人の中で2番目に強い……。C級って当たりをつけてたけど、実はB級じゃないのか?


 って、さっさと終わらせないと他チームが近づいてくるってに! 



「そういや忘れてわ! お前、名前は?」



 男の連撃が一旦なりを潜めて尋ねてくる。



「顔は覚えておいて名前は覚えてねぇのかよっ!? まぁ良い。篠崎空しのざきそらだ。そっちは?」


「俺は最上元気もがみげんき。篠崎、お前を倒して俺がスコア一位になる!」

 


 そう宣言をして男……最上のおっさんがこちらに向かって真っ直ぐ跳躍してくる。ブワッと自転車に乗っている時のような、風を斬る音が聞こえるほどの速度だ。



「それは、私の標的……《氷柱ひょうちゅう》」



 突如、そんな言葉が聞こえた。俺と最上のおっさんの間に氷柱が出来上がる。あ、この圧倒的なデジャブ感は……。



「それに、一位を取るのは……この、私だから……!」



 おいおい、よりにもよって一番強い人来ちゃったよっ!? 氷魔法系A級探索者の綾辻氷花あやつじひょうかが現れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る