第60話~知らぬ間の再会~
1人はまだ大学生だろうか? それも成人しきってはいないぐらいの男の子。もう1人は少女だ。銀髪とは珍しい。外国の子供か? それに見目麗しいな。将来はきっとモデルや女優でもいけるだろう。
「翔馬君じゃないか」
「あ、大地さん! すみません騒がしくて……」
「いや、構わないよ」
へぇ、翔馬という名前なのか。それよりもここに来れるということは、企業側の関係者なのだろう。
「大地さん、彼は?」
「おっと、お互いに初対面だったね。彼は
私が少年の素性を大地さんに尋ねると、彼はお互いに私たちの紹介を済ませる。
「所で翔馬君、そちらのお嬢ちゃんはどちら様だい?」
大地さんも知らないのか。……海外の出資者の娘さんとかか? それか諸星社長の個人的なツテの可能性もある……。
「あ、この子はエフィタルシュタインちゃんです。僕はエフィーちゃんって呼んでますけど、初めてだとあんまり気安く呼ばないでくれって怒られます」
「……そうか。それにしても長いね」
うん、長いな。エフィタルシュタインちゃん……だったかな?
「翔馬よ! あれを食べて良いのじゃな?」
「うん良いよ。好きなだけどうぞ」
「食べてくるのじゃ〜!」
指を唇に当てて今にも涎を垂らしそうに、物欲しげな表情をするエフィタルシュタインちゃん……長いのでエフィーちゃんと呼ぼう。
エフィーちゃんが翔馬君の許可を得たことで、全速力で目をキラキラとさせながらおかしの方へと走っていってしまった。
「この子は今回参加してる探索者が預かってる子供なんですよ。その人が僕の知り合いなんで、今は一時的に預かってるんです。ご迷惑をお掛けしますが、温かい目で見てくださると助かります」
翔馬君は礼儀正しく頭を下げてそんなお願いをする。
「分かりました」
「了解、翔馬く〜ん。あ、所でその知り合いの探索者ってどの人?」
私と大地さんの了承を得た翔馬君は笑顔になり、大地さんの質問のために用意された書類から知り合いのものを探し始める。
「あ、お主どこかで見たことがあると思ったらあの時か!」
その動作を眺めているとさきほどの少女、エフィーちゃんが私を指差し変な事を口走る。
「? ……君と会ったことは無いと思うんだけど?」
「その通りじゃ! 我が一方的に見ただけじゃからな! 確か……主人と一緒になって初めて喋りかけた人間じゃ!」
……この子の言いたいことが理解できない。おそらく海外の子だろう。日本語は難しいので、話せはしてもあまり意味を理解していない……のかもしれないな。
その子もそれだけを言いたかったのか、すぐにお菓子の方へと戻って行ってしまった。一体なんだったんだ……?
「あ、これです。あとこの人も……」
「へぇ……って、F級? こっちはD級。結構可愛いな」
翔馬君の友達というのはF級らしい。それなら残念だが、今回の試験に受かるのは絶望的だろう。どれ、誰だ……?
好奇心から覗き込んだその書類に描かれた人物名を見て、私は体を軽く振るわれる。
「しの、ざきさん……?」
「え? 空を知ってるんですか?」
「え、えぇ……」
篠崎さんがここにいる……。それに
「大地さん、少し今回のルールを教えて頂けますか?」
「え? ……まぁ、良いけど。急にどうした?」
大地さんは眉間に少し皺を寄せつつ、こちらの行動を不思議に思うような視線を向けつつルールの書かれた紙を渡してくる。
「このチーム戦ですが、この3人をチームにできますか?」
私は篠崎さん、初芝さん、北垣さんの3人をチームとして推薦した。
「は? 大本さん何言ってるんですか? この3人の等級はF級1人、D級2人ですよ? バランスを考えるなら、F級の彼はA級の
さすがの大地さんも、今回の件に関しては私の意見は信じられないと言った味方だ。
「あの、大本さん。空が一体なにか?」
翔馬君は本当に友達想いなのだろうな。心配そうな目でこちらを見てくる。
「……彼は、とある事情で私が目を掛けている探索者です。理由はまだ確証もなく言えませんが、それが真実ならニュースになるぐらいには驚くような理由です」
彼は不思議だ。絶対にただのF級であるはずがない。しかしその確証はない。ただ、普通のF級よりも強く、それがS級迷宮から帰還した後だったから……それだけだ。
S級迷宮から取れた魔道具のおかげかもしれないし、再発現かもしれない。普通に私が間違っている可能性もある。
しかし……それを差し引いても、彼の力をここで見極めねばならないのだ。
「……分かった、俺の権限でチームはこの3人にしましょう。……それに、俺もその秘密がなんなのか楽しみだしな!」
大地さんの許可も得た。テンションも明らかに上がって、口調も敬語ではなく素が出ている。
「あ、あの……その秘密って、悪いことではないんですよね?」
翔馬君が先程同様、不安な眼差しでこちらを見てくる。
「えぇ、上手くいけば、彼の等級が上がるかもしれません」
「ほ、本当ですか? ……それなら、僕からは何も言いません」
こうして空の知らない所で、一つのチームが意図的に組まれたのだが、本人たちはその事を知らずに試験へと挑むこととなった。
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