第49話~琴香さん視点~
思い返してみても、やっぱり空君はお人好しだと思います。だって、普通会って1分も経ってない相手に傘を貸すなんて出来ないでしょうから。
あの出来事以降、私は何回か用もないのに探索者組合に赴いて、空君を探していたりもしましたね。でも、その努力も虚しく空君を発見することはできなかったんですよ?
だから、同じ依頼で出会った時は本当に嬉しかったんですよ? それなのに……それなのに〜っ! 空君は、私のことをす〜っかり忘れていたんです!
酷いと思いませんか? 私はあんなに探したのに、向こうは全然私のことを覚えていないどころか、歳上なのに思いっきり子供扱いなんですよ!?
つい意地を張って、お姉ちゃんですから! と言ったらどんな反応したと思います? 笑ったんですよ!? 酷いですっ!
その後入った迷宮でも、空君はF級探索者なのにすご〜く無茶をするんですよ!? ヘタしたら死んじゃうんですよ!? 私よりも能力も低いのに……あんなに一生懸命に……。
それでちゃっかり勝っちゃいますし……。ま、まぁ怪我をしていたので私の役割もしっかり果たせましたが……! だから全く問題はありません!
そして迷宮主の大牙狼にも勇敢に立ち向かって、肩に大怪我も負いましたし……。全く、心配させ過ぎなんですよ空君は……!
でも、優しさの中にも隠れた勇気を見て、ふとときめいちゃったことは内緒です……。あぁ、なんて私はチョロいんでしょうか……。
迷宮攻略を終えた後、私は意を決して空君と連絡先を交換したり、デートにも誘いました。前の日に何時間もかけて服を選んだりも。
遅れないように早めに寝ようとしたんですが、緊張であまり寝れませんでした。それでも早めに起きて、メイクとかあまりしませんでしたが頑張ったんですよ。
そして遅れないように早めに家を出発して……無事に道を間違えました! やばいですね! と色々ありましたが、なんとか10分遅れて辿り着くことに成功です! ……成功?
いつもとは気合いの入れようが違う空君を見て、格好いいと思ってしまいました……。空君も普段は言わない言葉も言ってくれますし、とっても嬉しかったです。
変な人に絡まれても空君は私を助けてくれました。そんなデートを一日中楽しみ、別れの時間もやってきました。
ここで一つ、私はわざと意地悪をしました。……返すはずだった傘を、わざと空君に渡さなかったんです。そうすれば、また口実として会うことができるから……。
本当に私の勝手なわがままでした。でも、やっぱりバチが当たったんでしょうか? 成功したと思った次の瞬間、空君は思い出したかのように取りに来てしまいました。残念です……。
ですが! その1週間後にまた同じ依頼を受けていることが現場で判明したんです! あと北垣さんも一緒にいました。
迷宮では空君を見てましたけど、前のように酷い怪我をしないようになっていて良かったです。ちゃんと引き際とかを覚えたんでしょうね。……動きが良くなったから……とかじゃないですよね?
そんな疑念を抱いたりもしました。
D級迷宮の迷宮主だった大刺毒蜘蛛との戦闘が始まりました。そこではスピード系探索者の方が頑張っていましたが、空君もその次ぐらいにはすごかったですよ。
でも、危険な動きをしたりもしていたのですっごくハラハラして見ていましたが……。そしてなんとかみんなの力を合わせて倒したんですが、なんと! 藤森? と言う人が裏切ったんですよ!
そこからは訳も分からないままいきなり戦闘が始まりますし、もう頭がごちゃごちゃです。慌てて空君を探すと、空君は藤森? と言う人と戦ってたんです。
F級が、C級探索者にですよ? 信じられますか? 私は空君を死なせたくない。そう考えて一目散に駆けました。
藤森? の《炎波》と言う魔法を受けたのを見た時は、声にならない悲鳴も上げてしまいましたね。ですが、生きていた空君を見てホッとしました。
私は空君の怪我を治そうとして……確か、空君が危なかったからでしょうか? 夢中で飛び出して……そのまま死んじゃったんですよね。
あんまり覚えてないですけど、結構満足げに死んだ気がします! 生き返りましたが!
いや〜、あの時は体感極まってしまい、空君にキスまでしちゃいましたよ! ……キス、しちゃいました……。
そのあと色々あって、空君の家に泊まれることになりました! なんか節約とか言われてエフィーちゃんと一緒に入ったんですけど、私の方を見て膝から崩れ落ちてましたね。なんででしょうか?
話して見たら、エフィーちゃんも空君のことが大好きだと分かりましたよ。まぁ、私と違って恋愛というよりは、こう……兄弟と言うか親友というか、そんな感覚でしたけど。
なんにしても、私は今日、最大のチャンスを得たのです! 寝る場所は空君の強い希望で一緒ではありませんが、私のないすぼでぃでゆうわくすればイチコロです!
さぁ、夜はまだ始まったばかりでーー。
「すぅ……すぅ……」
と、寝落ちしてしまったことは一生後悔しました。
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これにて『9人の王』一章は完結です。
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