第43話~うわぁぁぁっ!?~

 初芝さんを生き返らせたあと、俺と彼女は迷宮の外へと向かう。襲ってくるモンスターも少なかった。北垣さんが時間短縮のために置いていった、倒したモンスターの魔法石はきちんと回収していく。



「しゅっ!」



 それでも新たに現れたモンスターの一匹を秒で屠り、俺たちはついに迷宮の入り口、ゲートにたどり着いた。


 そこには北垣さんが待っていてくれた。重傷者と遺体は既に運び出したのだろう。



「おぉ、篠崎君やっと来たのかい? 初芝君との別れも済んで…………うわぁぁぁっ!?」



 北垣さんが優しげな笑みを浮かべて俺の方へと歩いてきたが、隣にしれっと立っている初芝さんを見て腰を抜かした。



「あぁ〜! 北垣さんその反応はないですよっ! まるで私が幽霊みたいじゃないですかっ!」


「しししししし、篠崎君!?!? なっ、ななななぁっ!?」



 初芝さんにはまだ生き返ったこととか伝えてないしな。精霊についてとか、あとでじっくり話をしたかったんだよね。とりあえず今は北垣さんの動揺を解くか。


 俺は早速行動に移した。初芝さんが生き返ったぁっ! やったぁっ! みたいなテンションで流した。北垣さんも初芝さんが生き返ったことで一杯一杯だったのか、涙を流して感動していた。


 よし、上手くいった! まぁ、人が生き返ったことに対して何故? みたいな疑念も湧いてない! 一安心だな! ……いや待て! 一つだけ問題がある! しまったぁぁぁ!!!



「き、北垣さん。事情聴取とかってどうなってます?」



 探索者がたくさん傷を負い、死んでるんだ。しかも、俺は3人を殺してる! 正当防衛とはいえ、実力を疑われるだろう。


 もしこれでB級、C級探索者になったとしよう。そこまでは良い。だがその後も契約を更新していったら? その度に探索者としての等級が上がる。


 ……思いっきり不自然だ! 特に探索者組合のA級スピード系と思われる大本さんに! 頼む、話してないと言ってくれ!


 

「……あぁ、もちろんだとも。篠崎君を人殺しにさせるわけにはいけないからね」



 良かったぁぁぁぁぁっ! 事情聴取とかが始まる前にここであった出来事を捏造しよう!



「だが、初芝君については死亡から重傷者に……あれ、怪我はないのかい?」


「えぇ!? 勝手に殺さないでくださいよっ!?」



 あぁぁぁぁっ!? 初芝さんが生きてたは良いけど傷についてはどうしよぉぉぉぉ!? ……よし!



「北垣さん、高等級の迷宮から取れる回復系魔道具って知ってますよね?」


「ん? もちろんだとも。……篠崎君、まさかっ!」


「はい。俺は過去にS級迷宮に行ったことがあります。そこで使い捨てですが、回復系魔道具を得ました。あとは分かりますよね?」



 よし、これで良いだろう! 北垣さんも驚いているな。これで俺のあの実力も、何かしら魔道具のおかげと勝手に勘違いしてくれる可能性も高い。



「あの〜、なんのことですか?」


「君の命の恩人は篠崎君だということだ。……いや、私も……生きている全員が篠崎君のおかげだがな。ありがとう、篠崎君」



 初芝さんは事情が飲み込めていなかったが、北垣さんはそう言って頭を下げてお礼を告げる。


 でもその称賛、本当はエフィーに送るべきなんだよなぁ。エフィー、聞いてる? お前のおかげで彼らの命が助かったんだよ? ありがとうなエフィー。



「あ、それでですね。提案があるんですよ?」


「「なんですか(なんだね)?」」



 俺は2人にこう提案をした。俺の実力を隠したい。そのためにこの場所での出来事を捏造したいと。2人とも最初は難色を示していたが、命の恩人(と思ってる)の願いを無碍には出来ないようで、最終的には通った。


 まず、藤森たち3人が裏切る。それを俺ら7人で倒すも、残念ながら亡くなってしまった人も多数。藤森はスピード系探索者の人と相打ち。他2人も全員で倒すことに成功した。


 こんな感じの話を作り、探索者組合の人にはこのことを話すように伝える。完璧だなっ!


 俺たちはそう考えて迷宮をあとにした。

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