第27話~最悪の再会~

「ところで、今の僕なら契約の更新ってできるの?」



 僕はエフィーにD級迷宮に行くことを伝えたあとにそう尋ねた。理由は簡単で、もしもの時の保険の意味合いが強い。


 もし危険な目にあった場合、契約の更新をすれば生き延びる可能性は上がるだろう。これはD級迷宮に行く上で外せない要素だ。



「そうじゃのう…………うむ、五分五分じゃな! まぁその時の心理状態やコンディションにもよるから、はっきりと具体的なことは言えんがな!」



 ぐっ、微妙! 危険なことは極力避けて、もしもの時も使い所は気をつけないとな……。



「なんなら今やっておこうかの?」


「あ、なるほどその手が! 失敗した際のデメリットってある?」



 エフィーの提案は僕の盲点だった。何故マスターボ◯ルみたいに無意味に貯めておくような考えをしたのだろうか? 普通にやってみれば良いじゃないか!



「あるぞ」



あったよ、ちくしょう!



「どんな?」


「うむ、これはどの段階の契約にも共通する事じゃが、失敗した場合は契約の段階が一つ下がるのじゃ! それと1度目の契約上書きを失敗し、その原因が肉体の力不足だったなら最悪死ぬのじゃ!」


「やめておきます!」



 僕はクワッと顔を強張らせながら大声で叫んだ。そりゃそうでしょ! にしてもまじで奥の手になっちゃったよ……。


 その後、僕は水道会社に連絡して蛇口を直してもらった。


***



 次の日、僕はD級迷宮に繋がるゲートが現れた場所に到着する。エフィーは妖精形態となって、僕の胸ポケットに入り込んでいる。


 あれ、あの人は……。


 そこで僕は、いきなり見知った顔を発見した。



「北垣さん!」


「篠崎君!? なんでF級探索者の君がここに?」



 北垣さんは僕がこの場にいることに大層驚く。まぁ、僕も逆の立場だったら驚くけどさ。



「く、組合から、強制的に……」


「組合が? ……君、何か組合に喧嘩を売るような事でもやらかしたのかね? なんだってそんな嫌がらせのようなことに……?」


「じ、自分でも良く分かってません。この前のE級迷宮もそうでしたけど、何かしら僕に圧力がかけられたのかもしれませんね」


「はっはっは、面白いことを言うなぁ、君は」



 北垣さんにそう言うと、冗談だと思ったらしい。……結構ガチで言ったんだけどなぁ。


 ……大本さん(多分)、いい加減にしてくださいよ! 僕じゃなかったら死んでますよ!?



「しーのざっきさ〜んっ!」



 なんて事を考えていると、後ろから聞き覚えのある声がした。うん、この前聞いたな。て言うかテンション高くない? どうしたの?



「篠崎さん、こんにちわ!」


「こんにちわ初芝さん、今日も元気だね」



 僕はあの日から毎日ライ◯が送られてくる人物に挨拶をする。本当、まじでこの人用件もないのに何かしら理由をつけて話しかけてくるんだよ。


 いや、連絡くれるのは嬉しいけどさ。なんで僕なんだ? 僕と連絡してて楽しいの?



「初芝君、一応私もいるんだけど」


「おぉ! すみません北垣さん! 篠崎さんしか眼中にありませんでしたっ」



 地味に傷つく一言だなぁ! 北垣さんファイト!



「所で、もしかして君たちは付き合っているのかい?」


「ふぇぇっ!?」


「いいえ、付き合ってませんが」



 北垣さん、なんで失礼な事を言うんですか。初芝さんのような人と僕が釣り合っているわけないでしょう?


 初芝さんも驚きと怒りで顔も耳まで真っ赤。思わず変な声も漏らしちゃっていたじゃないですか。


 安心してください初芝さん、北垣さんの誤解はちゃんと解いておきましたから!



「そ、そうか。……それは、大変申し訳なかった」



 北垣さんが何故か膝と手のひらを地面に着く初芝さんを、本当に気の毒そうに見ながら謝る。


 北垣さん! 貴方の発言のせいで初芝さんが傷ついちゃったじゃないですか! 全く……!


 なんで考えているせいで、僕は後ろから近づく1人の男に気づかなかった。



「へぇ、なんでF級探索者である君がこの場にいるのかな? 篠崎さん?」


「え?」



 慌てて振り返ると、そこには僕をS級迷宮(仮)で囮にした藤森ふじもりが立っていた。

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