第22話~魔法石は食べ物~
迷宮を出ると、外は真っ赤な夕焼けが最初に視界に入り込んだ。手続きや魔法石などを支払いを済ませる。
「篠崎さん篠崎さんっ! 約束通り連絡先を交換しましょう!」
「あ、はい」
初芝さんがスマホを取り出してそう言ってくる。そう言えば迷宮内で連絡先を交換すると約束してたんだっけ?
ちなみにスマホなどだが、ゲートを潜ればその時点で一切使えなくなる。これは兵器も同じで、銃や戦車、爆弾も何故か使えなくなるらしい。
だから10年前も、兵器は役に立たなかったらしい。しかし、迷宮崩壊をして溢れ出てくるモンスターには通用するんだそうだ。
まぁ、銃なんかじゃ倒せるようなモンスターなんかはいないけど。それなら探索者たちがとっくに倒してるし……本当、迷宮には不思議がいっぱいだ。
「えへへ〜、ありがとうございます〜!」
初芝さんは口元を緩めて笑いながら去っていった。あの無垢でだらしのない笑顔を浮かべる女性が年上とは……。
それに迷宮で僕を治した時の真剣な表情とのギャップもすごいぞ。……本当、同一人物とか信じられねぇ。
「……帰るか」
僕はそう呟き、自宅へと帰宅することにした。途中スーパーに寄り、買い物をしたりもした。
「疲れたあぁ〜。風呂は入らねぇと」
「主人よ、疲れたのは我の方じゃ! ず〜っとポケットの中に入れて放置されるとはあんまりじゃ!」
そう言って妖精のように小さな姿をしたエフィーが、幼女の姿に変化する。
「それに主人! あのような危険な行動はーー」
と北垣さんなどと同じような事を聞かされ、最後には満足そうな顔をしたエフィーに指きりをさせられた。……お前、指きりなんて知ってたんだな。
「それよりも主人! 魔法石をくれんか?」
「おっと、忘れるところだった。……はい」
エフィーからの催促で、僕は牙狼から取れた魔法石を手渡す。
「ところで魔法石をどうするの?」
「ん? 食べるのじゃ!」
「え?」
食べる? ……何を? え、魔法石を……?
エフィーは大きく口を開け、パクリと魔法石を飲み込んでいく。うそ〜〜ん!!!
ちなみに後でエフィーに尋ねたのだが、僕らの食べるような普通の食事は娯楽だそうで、栄養はほぼ無いらしい。……まぁ、人間で言うゲームみたいなものか。
「それで、何かパワーアップでもしたのか?」
「ん、いや全然じゃ! じゃが我の維持費としては1ヶ月は持つはずじゃ!」
お、エフィーの燃費が思ってたよりも良い!
「まぁ、我の力をより強くすれば、それだけ維持費の魔法石も嵩むがの! 具体的には2割で2倍。3割で3倍じゃ!」
うん、さっきの言葉は少しだけ訂正しとこう。でも強くなれば、その分手に入る魔法石も多く、純度も高くなるし、まぁ大丈夫だろう。
***
それから1週間が経った。あの後一度F級迷宮にも潜ったが、やはり相手にはならなかった。エフィーと出会う前ならトントンもしくは負けていた相手だったが……。
まぁ、色々な日常が繰り広げられていた。そうそう、初芝さんとはあの日以降会ってないな。もうそろそろ傘のことも忘れてしまいそうだ……。
その次の日、僕は目が覚めると、もうなんと言うか定位置のようにエフィーが腕枕で寝ていた。そうそうヨダレは……はい、アウト。
ていっ! 僕はエフィーにデコピンを食らわせて目覚めさせる。
「あ、主人よ、その起こし方はやめて欲しいのじゃ……」
「ヨダレを付けないなら考えてやる」
「主人の意地悪!」
「いや普通だよ!?」
全く……。
「それより朝ごはんにするぞ」
「おおぅ、待ってたのじゃ! ハンバーグ! ハンバーグ!」
「それ昨日の夕飯だよっ!? しかも朝からいきなりは重たいし! ……まぁ、ベーコンエッグとかにしよっと」
僕はそう言って朝食を作り、エフィーと一緒に食べる。あ、こいつ醤油かけてやがる!? 普通ソースだろっ!!!
あぁもう食べカスが口の周りについてるじゃねぇか! しかもちょっと机の上に落としてるし! お前は幼稚園児かっつうの!
なんてこともありつつ皿を洗っていると、スマホに一件のメッセージが届く。初芝さんからだった。
『篠崎さんへ。
この前お話しました、あの時借りた傘を直接返したいので、今からお会いできませんか? 用事があれば空いてる日付を教えていただけると幸いです
初芝より』
…………彼女にこんな丁寧なメールを書けることに僕は一番驚いた。だが、ついに痺れを切らしたらしい……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます