第123話

「アリスさま、誠に申し訳ございませんが、私たちのことは誰にも秘密にしてください」


「な、何故ですか?」


 まさか拒絶されると思ってなかったのか、アリスは戸惑ったようにサトコに問いかけた。


「ケータくんと私たちの未来が描けなくなってしまうからです」


 サトコの言葉を聞いて私はドキリとした。その表情から、一緒に暮らせないからとか、そういう軽い意味じゃないことだけは伝わってくる。だけど一体どういう意味なのよ?


「どういう意味でしょうか?」


「だってケータお兄ちゃんのコトを女王さまが知ったら、王宮に閉じ込めるに決まってます!」


「仮に監禁までいかなくても、自由に行動することは出来なくなってしまうハズです。それでは困るんです」


 サトコとルーの言葉を聞いて、アリスは言葉に詰まった。私もやっと意味が分かった。


「ケータのスキル…か」


 ショウがボソッと呟いた。当のケータだけが「なんでボクが捕まるんだ?」と意味が分からずオロオロしている。


「勿論、私たちの力が必要なときは、いつでもお貸しします。だけどそれは、私たちのことを秘密にすることが条件です」


「じゃなきゃ私たちは、ケータお兄ちゃんのためにお姫さまとだって戦うよ!」


 サトコとルーの決意は本気だ。モチロン私だって、ケータのためなら誰とだって戦ってやる!


「言っとくけど私たち、そんじょそこらの軍隊より圧倒的に強いんだから!」


 私もサトコの横に立って、グイッと胸を張った。


「アリス、オマエの負けだ」


 ショウが「ハハッ」と笑った。


「力は貸してくれるのだから、それで充分だろ?」


「そのようですね。下手に手を出せば、逆に王都を危険に晒すことになりそうです」


 アリスが諦めたかのように「はぁー」と深い溜め息をついた。


   ~~~


 それから私は、しゃーなしにウォレット共有の通知にOKをした。するとショウ持つのスマホから「ピコン」と音が鳴った。


「え、なんだ?」


 ショウがスマホを確認する。


「アプリの共有よ。絶対無駄遣いしないでよね!私たちの全財産なんだから!」


 腰に手を当て、厳しく釘を刺す。さっき確認したところ「2,123,547リング」となっていた。


「え!?俺たちがここファーラスに来てどのくらい経つ?なんでこんなに持ってんだ?」


 ショウが目を丸くして驚いた。


「魔核を売って貯めたに決まってるでしょ!私たち、お給料なんて無いんだから」


「この間の演習のときにたくさん拾えたのが大きいよね」


 サトコが話に加わってニッコリ笑う。


「あの…軍事行動中の魔核は、軍隊の一括管理になる筈ですが…?」


 アリスが申し訳なさそうに言った。


「あ、そうなの?でも私たち、衛兵でもないし、お給料も貰ってないし、バレなきゃ問題ない!」


「だから、どうやって見つからずに集めた?」


 ショウが不思議そうな顔をした。


「そこは『自動回収』てヤツですよ、先生」


 私は自分のスマホをフリフリと揺らした。そのときスマホが「ピロリン」と鳴った。


「え?」


 突然のことにビックリして、私は画面を確認する。


「ケ、ケータ!」


「もしかして、新しいアプリか?」


 ケータが興味津々で覗きこんでくる。


 画面にはインフォメーションが表示されていた。


『仮登録されていたスマホが全て登録されました。グループチャットを開放します』

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