第115話

「このお兄ちゃんのいる陣営が、戦争に勝つって事だよ」


「な…何を言ってるの?」


 なんでケータのいる方が戦争に勝つとか、そんな話になるのよ?訳が分からない。


「お兄ちゃんのスキルのこと、ホントにちゃんと分かってるー?」


 ベルが目を細めて「クスクス」と笑っている。私はカチンときて、一瞬で頭に血がのぼった。


「知ってるわよ!写真に写ったモノの大きさを変える能力チカラよ!」


「ブブー!それじゃ50点」


 ベルがバカにしたような表情になる。私のイライラがマックスに達した。


「どこがよ!合ってるでしょーが!」


「うーん…」


 ベルがワザとらしく何か考える素ぶりをする。コイツ本当に煽りの天才だな!


「じゃーさ、あと一回でちゃんと答えれたら、このお兄ちゃん返してあげる」


「え?」


 いきなりの提案に毒気を抜かれた私を眺めながら、ベルがニヤニヤしている。


「ホ、ホントに?」


「モチロン!でも後10びょー


 え?え?私はオロオロした。思わずサトコとルーに助けを求める。しかし二人も、困った顔して首を横に振る。


 何が違うってのよ。訳が分からない。


「はい、ザンネーン!時間切れでーす」


 ベルの態度に、私の頭が再び沸騰する。


「ドコが違うのよ!絶対合ってるわよ!ただの嫌がらせで、どーせ答えなんて無いんでしょ!」


「頭悪いなー、あーヤダヤダ」


 喚く私を見ながら、ベルが肩を竦めた。


「正解は、写ってる対象に付随する全てでーす」


「はぁ?何言ってるの?」


「答え聞いても分かんないの?」


 ベルが「プフー」と吹いた。何で私、コイツの話に付き合ってんだろ?心底腹が立つ…


「じゃあ聞くけど、お姉ちゃんの内臓は?写真に写ってる?」


「そ、そんなの屁理屈よ!人間の一部でしょ!」


「だったら、そーだなー。例えば服、下着は?それにもしもポケットに何か物を入れてたら、どーなると思う?」


「……」


 私は口をつぐんだ。そんな私の横にサトコとルーが並んで立った。


「一緒に拡大縮小されるでしょうね」

「それが何で、ケータお兄ちゃんがいると戦争に勝つってコトになるんですか?」


「本気で言ってるのー?おめでたいなー」


 ベルが心底蔑んだ表情になった。


「だったら今度は、危険予知の訓練!」


 ベルが突然、舌舐めずりしながら恍惚な笑顔を見せた。幼女のくせに、なんて妖艶な表情をするんだ…


「お兄ちゃんが、例えばそーだなー、この国の王都の外観を写真に撮ったらどーなるでしょーか?」


「ひぃっ」


 ベルの言葉にアリスが悲鳴をあげた。


「はい、正解!」


 ベルがアリスを指差しながら、愉しそうに笑った。


「小さくしちゃってファイヤーボールで一発!何も伝説の魔法使いの極大魔法なんて必要ないんだよ」


 ベルが高らかに「アハハハーー!」と嗤う。


「恵太はそのこと、自分で分かってるのか?」


 今まで傍観を決め込んでいた春日翔が、初めて口を開いた。


「さあ?このお兄ちゃんも頭がおめでたいから、自分の能力の検証なんてしてないんじゃない?」


「なら今の話、恵太にも聞こえているのか?」


「操作されてる間のことは忘れちゃうから、覚えてないよー」


「そうか、だったらその点だけは感謝してやるよ」


 春日翔が聖騎士のスキルを発動させる。


「あー誰かと思ったら、こないだの聖騎士さんか」


「…なるほどな、オマエも演習場にいたのか。そこで恵太のこと知ったんだな」


 喋りながら、私たちの前まで歩み出る。


「なんでワザワザ、俺たちに色々教えるような真似をした?」


「んー、なんでだろ?ただの気まぐれ…かな?」


「分かった。じゃあ、やろうか」


「いーねー、やろー!」


 ベルが「ジュルリ」と舌舐めずりをした。

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