第85話 番外編 5
「ま、待ってくれ。冗談だよ、冗談!」
突然声がしたかと思うと、身長80センチメートル程の緑色の皮膚の男が姿を現した。
「冗談で死ぬことになるとは、つまらない事をしたな」
ショウの殺気は全く鎮まる気配がない。
「お、おい、まさか、冗談…だろ?」
バラス(緑男の名)はガシャガシャと足枷を鳴らしながら、牢屋の奥へと避難した。
「聖騎士殿、落ち着け!」
レイナードが羽交い締めでショウの動きを止める。
「姫さま、アンタも今すぐ手を洗ってこい!この奥に洗面台がある」
「は、はい!」
ショウの変貌ぶりに我を取り戻していたアリスは、レイナードの助言どおりに奥へ走って行った。
「離せ!コイツ今すぐコロス!」
暴れるショウを抑えるのは、体格に勝るレイナードの力を持ってしても至難の業であった。
「ひ、姫さま、早く戻ってきてくれ!」
~~~
「取り乱してすまなかった」
「私も軽率な行動でした。すみません」
ショウとアリスがレイナードに揃って頭を下げた。
「あ、ああ、もういいわい」
勇者と姫君に頭を下げられ、レイナードはどう対応して良いのか分からなかった。
「ショウ」
アリスは横に立つショウの小指をチョンと摘む。
「私のために怒ってくれたこと、とても嬉しく思います」
アリスが真っ赤な顔をショウに向けた。
「ついカッとなって…さすがにやり過ぎた。反省している」
ショウは恥ずかしそうに顔を伏せた。
「ふたりの仲が良いのは分かったから、話を進めても構わないか?」
レイナードが呆れたように声を出した。
「ああ、頼む」
ショウが表情を改める。
「まあ、今見たとおり、隠密スキル持ちの敵性勇者だ。感知のスキル持ちでも、朧げにしか把握出来ない。まあ、聖騎士殿の感知スキルは、我が衛兵より優秀なようだがな」
「何故、スマホを取り上げない?」
ショウがレイナードに厳しい視線を向ける。
「俺のは、お前らのような旧時代の端末とは訳が違うからだよ」
バラスが牢の奥で、ふん反り返るように座りながら声を出した。
「どういう意味だ?」
ショウがバラスを睨みつける。男は返答の代わりに何もない空中を、下から上に左手でスワイプした。すると、まるで引き出されたかのように、シュッと画面が出現する。
ショウは目を見張った。まるで漫画の世界の技術のようだ。
「なるほど、理解した」
「ところで、こんな見えない相手をどうやって捕らえたのですか?感知スキルでも、ハッキリとは追えないのですよね?」
アリスは自身が目の当たりにした疑問を口にした。
「それなんだがな…」
「銀色の仔犬を連れた、黒帽子被った眼鏡の女にやられたんだよ!」
バラスが怨みがましく吐き捨てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます