第81話
「次は本気でやる。頼む、もう一度やらせてくれ」
ローゼリッタが頭を下げた。ま、この状況でいきなり全力出せる方が、逆に普通じゃないよね。
「いいよ、どうせアンタを納得させないと勝ったことにならないんだし」
「恩に着る…が、後悔するぜ!」
ローゼリッタは再び大剣を中段に構えると魔法を唱えた。その気合いに呼応するように彼女の大剣が灼熱に輝き、陽炎がゆらゆらと立ち昇る。
「今度は全力全開だ!死にたくなければ、オマエが逃げろ!」
「悪いけど、結果は同じよ!もう言い訳なしだからね!」
「いくぜ!」
ローゼリッタが大剣を振りかぶり、凄まじい勢いで振り下ろした。私は右手で受け止める。あまりの熱量に、私の髪がバサバサッと大暴れした。さっきの比じゃない!
咄嗟に左手も添えて、両手で支える。それでも耐えられない。私はとうとう片膝をついた。その瞬間、爆発的な砂塵が舞い上がり、周囲に衝撃波が発生した。
「きゃあ!」
衝撃波に煽られたサトコの短い悲鳴が私に届く。さらにその衝撃波は周りの観戦者にも襲いかかり、大騒ぎになる。
「ハルカ、負けるな!」
その混乱のなかで、私は確かに聞いた。ケータの声だ!私は目を見開いた。
「絶対勝ぁーーつ!」
私は渾身の力で立ち上がった。再び円環状に突風が巻き起こる。
風がおさまった後、辺りが沈黙に包まれた。私は両手でローゼリッタの大剣を押し返していた。
ローゼリッタは静かに大剣を下ろす。
「アタシの負けだ」
彼女の宣言とともに、周囲から大歓声が上がった。
「この勝負、ここまで」
教官から終了の合図がかかる。同時に私はその場にへたり込んだ。
プハー、しんどー!
~~~
「クミン、サフラン、ディル隊、ハルカ、サトコ隊は前へ」
私たちの2戦目が始まるみたい。次は3人組か、私は相手の姿を探す。すると立ち上がったのは、緑のワンピに白のスラックス…あの陰険ストーカーだ。
ちなみに教官の点呼により、茶髪セミロングが「クミン」で金髪おさげが「サフラン」、そして黒髪ポニテが「ディル」と分かった。それから「オウマ」領の衛兵と紹介があった。
「あ、あの人、昨日ハルカに手を貸してくれた人」
サトコがクミンに気付いたように反応する。しかしそうか、サトコにはそういう印象か…
「違うよ、サトコ」
「え?多分あの人だよ」
サトコが不思議そうな顔をする。あーもう、話が進まない!
「そういう意味じゃなくて、アインザーム絡みの悪質な陰険の黒幕が多分あの人たち!」
「ええ?なんで分かるのよ?」
「昨日の夜、アイツらに囲まれて因縁つけられた」
「ハルカ昨日、そんな事になってたの?」
サトコが驚きの声を上げる。抜け駆けしたことをネチネチ文句を言われたが、私だって大変だったんだぞ。少しは労われ!
「そーだよ、大変だったんだからね!」
私はここぞとばかりに反撃した。
「…元はと言えば、アンタが勝手に一人で行動したのが悪い」
はい、ごもっとも、仰るとおりです。
「ハルカ、サトコ隊、何をしているの?早く前へ」
女性教官に催促をされてしまった。ちょっとウダウダし過ぎたかな。私たちは急いで前に出る。
「あの、私たち…」
「認めないわよ!」
私が女性教官に、さっきと同じような提案をしようとしたら、クミンに言葉を遮られた。
「その為に隊を組んでいるんでしょう?」
「もう一人がちゃんと戦えよ!」
ディルとサフランが畳み掛けてくる。
「あちらの方が正当な言い分ですが、どうしますか?棄権しますか?」
女性教官が再度コチラに確認をとってきた。ま、こーなるとは思ったよ。アンタたちはローゼリッタみたいに熱いヤツとは違うからね。
「アンタたち、ちゃんと防御魔法使えるんでしょーね?」
「はあ?」
クミンの機嫌が明らかに悪くなる。
「サトコの攻撃は、ちょー痛いよ」
私は煽りに煽った。溜まった鬱憤、全部吐き出してやる!
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